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縁起堂 9

 この菅公かんこうは火宮のよき理解者で、火宮がお宮を抜け出す手助けもしていたのだった。火宮の留守中、身代わりの者の代わりに実質、菅公殿が裁量を務めていたのだ。

 

 それもあって、長らく火宮の留守は知れなかったのである。

 火と水の宮を除いては、菅公殿ほどの智者はいないのであった。

 

 

 宮が、火宮の偵察を知ったあと、寛大な処置をとったことで、菅公は恩義を感じており、いつかその恩を返したいと思っていたらしい。

 恩義を返せる場面が意外に早く巡ってきて、菅公は再び仕官を望んだのである。

 

 もちろんこれは、認められた。

 

 そして、たかむらこと小野篁も、道真と同時代、人界で暮らしていた。

 小野篁もまた日本史上、有名な人間だ。

 この篁も元来、人ではなかった。

 

 

 小野篁の逸話として、篁が昼は朝廷に、夜は地獄の閻魔大王に仕えているというものがある。

 篁が、閻魔に口利きをして、自分の窮地を救ってくれた者の死亡をとり消させ、生き返らせてやったという話が伝わっているのだ。

 

 冥府にも似たような話があるが、それは、冥府に一時帰還を命じられた篁にくっついて、知らずに冥府に迷い込んでしまった者を、送り返したというものである。

 人界では冥府という妖かしの世界が、死後の世界とすり代わって伝わったものと見える。


 篁は、数百年ごとに火と水の宮に居を構え、普段は歴史書の編纂などをしている。

 この者も学術家で、宮の留守を任せられるとすれば、この者の力を頼むしかなかったのだ。

 

 そしてもう一夭ひとりの晴明狐ほど、冥府の者に愛された者はいないと言えた。

 その死の悲しみは、まだ夭々の記憶に新しい。

 この晴明狐も狐ではあるが、人界で人として暮らしていたことがある。

 

 晴明狐は、安倍晴明という名で知られる、平安時代の陰陽師であった。

 この安倍晴明の前半生は、殆ど謎に包まれている。それもその筈、晴明は人界の生まれではなく、冥府の生まれだからである。

 

 物の語りとして、晴明の母は狐で、たが為に素晴らしい陰陽師となれたのだと言われている。

 その説に間違いはなく、晴明の母は狐であり、晴明自身もまた狐であった。

 晴明狐は冥府から人界に移り住み、また人界から冥府へと戻り水ノ宮に仕えてきたが、二年前にその生涯を閉じたのである。


 安倍晴明という人間は千年も前に死んだが、実際の晴明狐は、ごく最近まで生きていたのだ。

 人界での逸話には、死んで棺桶に入れられた晴明が甦って、どこへともなく消えたと言う話がある。まあ、似たようなことが実際にあったのだ。

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