縁起堂 7
大きくなれば自分の跡を継がせたいと、侍従頭が玄孫を見学に火ノ宮に呼んだのである。
その子供が連れられてきたのを見て、火宮はこれなら汲みし易いとばかりに、その子を己の私的な侍従に仕立て上げてしまったのであった。
かくして供一夭を連れて火宮は、度々に渡ってお宮を抜け出して、本来の業務を疎かにするという、甚だ火狐達には頭の痛い事態に火ノ宮はなっていたのである。
ただし、長い間、火宮が抜け出していることは、火狐達に気付かれていなかった。
火宮の代わりに、身代わりの者が業務をやっていたからである。
火宮の留守中に重要な詮議が執り行われることになった時、ようやく事実が明るみになったような次第だ。
合わせ鏡によって宮と火宮の二夭で詮議に向かった時、宮が火宮の様子がおかしいことに気が付いたのである。
身代わりの者も、いくら主君火宮の命とは言え、さすがに水宮まで騙すことに空怖ろしさを覚え、宮に追求されついには本性を現すとともに、火宮のやっていたことが暴露されるに至ったのだ。
この件のことで宮は、火宮が戻ってから、きっちり話を付けねばならなくなったのである。
その時、火宮はもうしないとは言ったものの、相変わらずお宮を抜け出すことは続いていた。
たまの気晴らしぐらいと多目に見ても良いのだが、事が起きた時のことを考えれば、そうも言っていられない。
されど、どれだけ理を説いても懇願しても、火宮が聞き分けないことは宮が一番よく理解していたから、何かあった時に偵察の最中の火宮と、すぐに連絡がとれるよう宮が手配を整えさせたのである。
身代わりと、供を命じられる者には宮自らが、堪えてくれと嘆願していた。
こうして火宮は、宮と違って遊び惚けていると不名誉な噂が、立つに至っているのである。
だが、この偵察により、幾つもの不祥事が早いうちに摘まれることともなっているのだ。
犯罪を未然に防ぐことから言えば、火宮の行為も決して責められるものではない。
そうは言っても、火宮に振り回される火狐達が哀れと言えば哀れであるが。
それでも火宮は、臣下達から厚く信奉されていた。
火宮のように気概のある勇ましさで、臣下を振り回してこそ上に立つ者であり、宮のように臣下の顔色ばかり窺っているのは不甲斐ないと、火ノ宮の火狐達は、火宮こそ一番と思っている部分があった。
けれど火宮が、お宮を抜け出す度に、身代わりは神経を細らせていたのである。
そうは言っても、冥府に両宮の内の一夭がいない時にまで、火宮とてお宮を抜けようとは思うまい。




