縁起堂 5
都内に、水呑童子を放ってある。
捕縛に必要な人数の三分の一であるが、それが人界で仕えるギリギリの人数であったのだ。
少ない員数であっても、聡明なる宮の指示によって機能的かつ最大限、能力が引き出せるようになっている。
宮は、拠点と決めた縁起堂で待機だ。
見つかったとの報告が入り次第、捕縛に向かわねばならない。
食事など作って呑気にしていたように見えるが、もちろんそんなことはない。
全てがうまく運ぶように、整えるあらゆる手筈の中に、人界での生活も含まれているのだ。
宮が、てきぱきと仕事を熟している間、銀丸はただただ寝ていたのである。こちらの方こそ、呑気そのものだ。
しかも一大事であるにも関わらず、銀丸は気を失ったりとり乱したりと、甚だ頼りない様子である。
宮は、銀丸と卓袱台を挟んで、物分かりの悪い彼の為に、くどくどしく説明をせねばならぬのであった。
光景だけ見ていると、家族の団欒のようにも見える。
しかし語られている内容は、その日の学校での出来事や、好きなテレビアニメの話などではない。
もちろん宮と銀丸は、家族ですらない。
宮は面倒がらずに、銀丸が理解できるまで、ゆっくりと噛み砕いて話をしてやった。
やれることは全てやったので、いま宮にできることは、人界での助手を務める銀丸が、のちのち足手まといにならないようにすることである。
ここで腰を据えるつもりは無論ないが、焦ったところで見つからぬものは見つからぬのだ。
ようやく宮の話が終わった時には、銀丸にも何が起きたかが理解できた。
唯一、銀丸が納得できないことは、宮が三月も冥府を留守にし、しかもその間の業務を、火宮が代わるということであった。
水ノ宮が、業務をしない訳ではない。
上に立つ宮がいない間、火宮が火と水、両ノ宮を束ねることになるというのである。
不始末を起こした己の処罰より、まずそれが気にかかるとは水狐の自覚ゆえか、それとも事の重大さをまだ自覚していないところがあるのか、判断が着かない。
「火宮様が宮様の分まで働くと、御自分で仰られたのですか?」
銀丸がそう聞くと、宮は少し困惑げに、
「何か問題があるのか?」と、問い返した。
宮の態度が弱かったこともあって、銀丸は黙っていられなくなったようだ。
銀丸は「このようなことを申すのは何ですが」と、いちおう臣下の分を見せてから、次の言葉を言った。
「なぜなら火宮様は、宮様と違ってよくお宮を抜け出して、遊んでおられると聞くからです」




