縁起堂 4
これ以上潰し合いが進めば、宮達も決断をしなければならなくなる。
今はまだ、日本が狂い始めたのは最近のことなので、暫く静観の構えをとることで、意見は一致していた。
火宮は、日本の現況を、宮自身に感じてこいというのかもしれない。
現状を知るには、古き良き時代の残る土地ではなく、たった今現在進行形で何かが起きている土地でなければならない。
それが、人々が暮らす街だ。
人の住む街に、なせが妖かしが出没しているのである。
普通、妖かしは山や川、海に暮らすものである。
昔の人はそう思っていたし、事実その通りであった。
中には、人と混じることを好み、人と共に暮らす妖かしもいる。
それが最近の妖かしは、街に出ると相場が決まっていた。
自然が、妖かし達の住む場所が、なくなっていることもある。
穴抜けをして逃れる先が、人の住まぬ土地が減った故に街になっている面もあるが、街中に逃れれば、探し出すのに苦労することが分かっているのも、理由の一つであった。
あと、一つ。
街が磁石のように、妖かしを呼ぶのだとも言える。
街が吹き溜まりと化しているのが、その原因だ。
人界では、冥府のようにいかないことが色々とあって、不便を強いられる。何よりも、捕縛に向かった者であっても、人界にいる間は人界のルールを守らねばならぬ。
あまり大っぴらには動けなかった。
街中で潜伏されると困るが、ただし相手も妖かしであるから、いつまでもその本性を隠してはいられない。
隠すつもりすらない者もいる。
何と言っても彼らは、己の欲にとりつかれた、冥府の犯罪者なのである。
中でも、最も怖ろしい永久凶悪犯罪者が、揃いも揃って五夭も、人界は日本に下りてしまったのだ。
五夭が五夭とも、東京にいることは間違いなかった。
そのため彼らは、人型をとっているものと思われる。
妖かしの姿のままであれば、身動きがとりにくい。
人目につけば、宮達の耳にもすぐに伝わってくる。
とは言っても、人の少ない山に入れば別だ。
本来、間道は、富士山の裾野に広がる樹海に通じている。
樹海に出ずに、間道の途中で穴を開いて、そこから街に下りたことが分かっていた。
樹海であれば、探すのも随分楽であったろう。
人が入らぬから、大っぴらに動くことができる。
相手も動きやすいように、こちらも動きやすい。
街中は、こちらが動き辛いように、向こうも動き辛い。
されど相手が相手なので、何も考えずに行動をとるかもしれない。
何が起こるか分からない状態だが、人界であっては万全を期することはできなかった。
それでもできる範囲のことは、全て手を打ってある。
宮のやることに、手落ちはなかった。




