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縁起堂 2

 縁起堂のある界隈は、古い家並みがずっと続いている。

 日本の首都であり、最先端都市である街に、落としても落ちない汚れのように、古い時代の名残が張りついていた。

 

 下町は、現代の姥捨て山のようだ。

 古い物・者、役に立たない物・者が、生きていくことを許された場所と言っていい。 

 下町には、街中からとっくに締め出された年寄りが、家並みと同じように身を寄せ合うように暮らしている。

 

 下町は、都会から失われた人情が今なお残る場所として、古き良き日本の姿などと言う言われ方もされるが、そこで暮らす者達の本当の内情には、誰も目を向けない。

 

 都会の人間が関心が持つのは、物事の上辺だけで、実際に関わり合うことは嫌う。

 関心という名の無関心が、社会には蔓延しているのだ。

 

 その所為か、日本では、妖かしすらも排他的な傾向にあった。

 干渉を好まず、関わりを避けるのは人と変わらない。

 

 冥府に暮らす妖かし達も、干渉を好まず、関わり合いを避けるが、言葉は同じでもその内実は天と地ほどに違う。

 

 違うのも道理だ。

 

 人界では人も妖かしも、せせこましい土地で、自分自身に追われて暮らしている。

 人間は、妖かし達が身近に暮らしているとは思ってもいないが、妖かし達は人間の中に、当たり前の顔をして混じっている。

 

 気付かれていなくても、人間に影響を与えてもいれば、妖かし達も人間から影響を受けているのである。

 

 共に生きるとは、そういうことなのだ。

 

 それが、決していい影響になっていないのが、問題と言えよう。

 

 

 妖かし達は、その土地に暮らす人間の気質を多分に負うことになり、人間は人間で妖かし達の妖気に触れて精神がアンバラスとなる。

 アンバランスになればなるほど、妖かし達もまたその影響を受け、と悪循環となっているのだった。

 

 

 宮が、書物をとり寄せたり私的に偵察を送って、人界の調査を続けているのは、人界に暮らす妖かしと人間が、共倒れすることを心配しているからとも言えた。

 

 バリの人々や一部の先住民族達は、うまく妖かしと人間の共存を図っている。

 イギリスや中国も、伝統的に妖かし達と折り合いをつける方法が守られている。

 それらの国々が、妖かしと人間による共存の良い見本であれば、日本という国は正反対の見本にあった。

 ただし日本も昔は、それらの国々負けず劣らず、妖かし達とうまく共存していたのだ。

 

 昔に比べれば、規約がうまく守られなくなってきているのは、それはどこの国にも言えることである。

 がしかし、日本の場合は極端に過ぎた。

 日本がおかしな具合になったのは、ここ百年ばかりの最近のことだ。

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