縁起堂 1
家は戦災で焼けたので、建物は戦後に建てられたものだ。
それでも、もう五十年からなる。
古い家や古い物は、独特の磁場を持っている。
古くなればなるほど、その傾向は強くなる。
苔生した甍の古い神社に行くと、一種厳かな気分を感じたり、古道具を薄気味悪く思ってしまうのも、年古りし物の持つ磁場に影響されるからなのである。
古い家や、悪い気の集まりやすい場所は、人間にとっては本当はあまりよくないのだ。
そういう場所に長く住めば、いろいろと支障も出てくる。
大抵の人間が、場所が悪い所為だとは思わないし、オカルトチックだと鼻もひっかけないことだろう。
吹き溜まりは、ごく自然な現象である。
ゴミが吹き寄せられる場所があるように、悪い気が集まってくる場所もあるのだ。
そういう場所は、人間にとっては悪くとも、妖かしにとっては過ごしやすいことこの上ない。
そのため、妖かしが集まることにも繋がり、余計に人間達に悪い影響を及ぼしてしまうのであった。
電磁波という言葉が使われるようになってきたので、それと同じようなものだと言えば、少しは分かりやすいかもしれない。
見えたり触れたりできるものでないからと言って、存在しないということにはならない。
電磁波なるものがあるように、場所や物の持つ磁力の影響も、人間は受けているのである。
この縁起堂も、ちょうど吹き溜り的な場所にあると言えた。
だからこそ、この家では昔から家庭内の問題が絶えないのである。
酒癖が悪く暴力的だった祖父、身体の弱い偏屈な父親。そして息子は、家を出たまま音信不通となっているという具合。
宗教者や霊媒師の言葉のようだが、やはり場所が悪いとしか言いようがない。
吹き溜りに住んでいれば、ゴミが吹き寄せられてくるのは、当然のことだからだ。
呪われているとか、全ての不幸がそこにあるとは言わないが、そんな場所にずっといれば、精神的にピリピリしたり、参ってしまっても仕方がないと言える。
この縁起堂は、東京の下町にある。
本拠地にするには適しているために、選ばれた。
吹き溜まり的な場所なら、ビルとビルの間の狭い路地やスクランブル交差点、廃ビルなど様々あるが、それらの場所に何ケ月も住む訳には到底いかないのは、誰にでも分かることだろう。
入念な調査をする暇があれば、もっと他に具合のいい場所も見つかったかも知れないが、急ぎであったので、真っ先に目に付いた縁起堂に、白羽の矢が立てられたのであった。




