表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/312

冥府 脱書 10

「藤吉郎の居場所が、分かりましてございます」

 火宮は、飲み終えた器を、タンと音高く盆の上に乗せた。

 宮は立ち上がって、水神刀すいじんとうを腰に下げる。


 水鏡が現れ、現場で指揮をとっているらしい衛士(次官)が、自ら報告を行った。

帆山はんざん樹石洞じゅせきどうの方に。悪党連あくとうれんの烏天狗連と共に、こもっております」

 火と水の両宮が、俄かに慌ただしさを増す。

 頭達は、それぞれの部下と連絡をとりあい、様子を確かめ合う。

 

 殿上てんじょうの間の外で控えていた侍従達が、宮の着衣に乱れがないか確かめる。

「目をつけていた通りだな。烏天狗連をとり込んだか」

 緩めてあった首括りの紐を侍従が止めやすいよう首を上げながら、宮が衛士に声を掛けた。

 衛士次官えじのすけは、ハッと短く応え、

「頭目は、烏天狗のかつにございます」

 

 火宮も同じように、着衣を侍従達に整えさせていた。

 火ノ宮の侍従は、侍従頭以外は全て女性だ。


 火宮は侍従に身を任せながら、

「規模は、中規模。勝はまだ若い。功を逸ったな」と、呟いた。

 宮もそれを受けて、

深峰ふかみねの親玉は、静観を決め込むだろう。更なる十妖じゅうようが揉め事を起こせば、連中もここぞと出張ってくるだろうが、あとの五体は人界だ」

 

 火宮は、赤熊せきゆうの手綱を握りながら、最後にこれだけ言った。

「悪党連の雑魚どもは、我ら火ノ宮に任せてもらおう。藤吉郎の捕縛は、そち自らがせよ。水狐すいこは、人界行きの支度にかかれ」

 宮も、その意見に賛成した。

 


 宮は白魔の手綱を引いて、殿上の間から出るまでに言わなければならぬことが沢山あって、警吏頭と侍従頭から、銀丸しろがねまるのことを聞く余裕はなかった。


 その時であれば、まだ二夭ふたりも真実を話したかもしれない。

 真実というには、あまりにもお粗末な内情を。

 だが宮は聞かなかった。

 

 代わりに宮は、己が戻ってくるまでに整えておくべき事柄を、それぞれの頭達に細かく指示を与え続け、結局それは、白魔の背に乗って外に飛び出す寸前まで続いたのだった。

 宮は、ようやく言うべきことを言うと、白魔を駆って天狗の藤吉郎の捕縛に向かったのである。



 縁起堂 一階 台所と続き間になった居間

 

 縁起堂は、創業から四十五年を数える、古い駄菓子屋である。

 店自体は四代も続いており、今の主人は五代目に当たるのだった。

 

 縁起堂が駄菓子屋となったのは、今の店主の父親の時代からである。

 現、主人の祖父が店を切り盛りしていた頃は、縁起堂は駄菓子屋ではなく饅頭屋であった。

 それが戦争で物資がなくなったために一度は店を畳んだものの、日本が復興するのに合わせて、縁起堂は駄菓子屋として新たな人生を、歩み始めたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ