表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/312

冥府 12

 外では嵐が吹き荒れているが、風も雨も遮られていて部屋に雨が吹き込んでくることはなく、宮の身体が濡れるようなことはなかった。

 宮は、目を細くして、滝のような雨の中を凝視している。

 その宮の表情が、パッと驚きに変わった。

 少し遅れて男にも、瘴気の黒い雲の中心に、青銅のような鱗を閃かせ、のた打ち回っている龍の姿が見えた。

 男の顔が、愕然となる。

「あ、あれは。十妖じゅうようの一、青龍のたつでは」

 宮は、男に構っていなかった。

 鋭い声で、臣下を呼ぶ。

六水狐頭ろくすいこがしら

 水ノ宮で働く者は、みな水狐と呼ばれる。火ノ宮で働く者は、火狐かこである。

 宮が振り向くとそこには、四角い水鏡が上に二つ、下にも二つ合わせて四つ並び、それぞれの頭の上半身から上が映し出されていた。

 並び方からも分かるように、本来なら上下三つずつ並ぶのが本当である。

 かしらは全部で六夭ろくにん

 捕り方頭、警吏けいり頭、衛士えじ頭、御書ごしよ頭、外宮がいぐう頭、侍従頭となっている。

 侍従頭はここにいるが、あと一夭ひとり足りない。

 水鏡に映っていないのは、御書頭だった。

 何が起こったか自ら確かめにいっている最中で、宮に応えている暇がないのだろう。

 何と言っても、御書蔵は御書係の管轄である。

 

 頭達もみな、さっきの物音で目覚めて、宮と同じように窓の外を窺おうとしたり、夜務めの部下を呼び出して、何が起こったか探らせようとしているところだった。

 寝起きの為、着物や髪は乱れているが、宮の前とは言っても、この際構っていられない。

「なぜかは分からぬが、十妖の封印が解けた。急ぎ、捕縛に向かう。水呑童子すいてんどうじを」

 衛士・捕り方と警吏の中で、危急の際、特別任務に当たる者を選んで水呑童子と呼ぶ。

 男も、宮の支度を手伝わせる為に、侍従達を呼びつけた。

 物音に、同じく目覚めていた侍従達が、控えの間から狐の形で飛び出してきて、宮の寝所に駆け込んでいく。

 すぐに、人間の形で手に手に着物や靴などを持って、寝所から出てきた。

 急ぐ時は、狐の形をしていた方が四つ足であるぶん早い。

 水狐と狐の字が使われている通り、水ノ宮に仕えている者の多くが、狐の妖かしである。男も、当然そうだ。

「外宮、火ノ宮に十妖図であることと援を」

 外宮が、ハッと短く応えて、姿を消す。

 侍従達四夭が、よってたかって宮の側にまとわりついて、室内着の上から狩り用の、動き易い着物を着せかけていく。

 宮は侍従達にされるままになりながら、頭達に指示を鋭く飛ばしていった。

「警吏。原因を早く。十妖図の確保も。何体が抜け出たか」

 忙しくやらねばならぬことが沢山ある時、宮の言葉はとても端的になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ