死神佐平 14
死神という己自身に追われるように、男は自らの力を使っていたのだ。
男にあったのは、怒りだった。
悲しみだった。
持って行き場のない憤りだった。
それが人界に来て、薄れてしまった訳ではない。
ただ、自分の中にあった気持ちに気付いてしまっただけだった。
男はただ、人と一緒にいたかったのだ。
死神だと怖がられたくなかったのだ。
他者の来ない庵で、永遠に一夭ぼっちでいたくなかったのだ。
それが分かったからと言って、何になるのか男には分からない。
男は死臭の中で浅い眠りに溺れ、夢を見てはその度に目を覚ました。
夕方になり暗くなると、男は起きて活動を始める。
シャワーを浴びヒゲを当たり、まだ袖を通していない服を身につけ、身支度を終えると財布とカギだけ持ってアパートを出る。
別に何もすることはないが、その日は遅くまで開いているジーンズショップで、自分の身体にあった服を買った。
服を買うと金が乏しくなったが、男は気にしていなかった。
食事をする必要も、本来は男は何も必要としない。
ただ店があるから、買える金があったから、それで買っただけのことだ。
その後は、ただ街をウロつくだけだった。
無意味だ。
何の意味もない。
しかし男は、ただ路地を徘徊するのをやめなかった。
まるでそうすることで、男が求める答えが見つかるとでも言うように。
二日目も何もないまま朝が来て、男はねぐらと決めたアパートに戻って眠った。
クローゼットの中の死体は、腐敗が進み、腐敗臭をさせ始めていた。
やはり男はクローゼットにもたれて、浅い夢ばかり見る眠りを貪った。
男の一日は、夜になると出掛けて、昼に戻って眠るというものだった。
男が人界に来て、三日目のことだ。
人界に来て初めて男が、永久凶悪犯罪者に相応しいことをしたのは。
男は、もう何もかも考えるのが面倒臭くなった。
夜でも繁華街は、人が絶えることを知らない。
若い男女が、多く目に付いた。
彼等もまた闇を好むのだろうと、夜遅くまで出歩いていることを、咎めるような気質は男にはない。
ただ、知るべきだとは思う。
自分達が、いつでも危険に身を晒していることを。
それを、男は教えてやっただけだ。
その場に十人ぐらいいただろうか。
バイクを止めてたむろしていた少年少女達。
男の方から声を掛けた。
いい気分になりたくないかと持ちかけると、彼等は男を薬の売人だと思ったようだ。
大麻か覚醒剤かと聞くので、ポイズン(毒)だと答えた。
男は、その場にいた者達の生気を指に絡めて、強く引き抜いてやったのだ。
引き抜いたあと路上に捨てて、男は死体をその場に残して歩き出した。




