昔話「シモネ太郎」
下ネタ企画短編に参加してみました。(=゜ω゜)ノ
ノリは下ネタというよりも、ギャグテイストです~。
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
おじいさんはテカテカと黒光りするほど、日に焼けたマッスルボディを持ち、ジョッキで生卵を一気飲みするのが日課で、お婆さんよりも筋肉を何よりも愛する主義の人でした。
おばあさんは凄腕のデイトレーダーで、一日に複数の取引を行うだけで数百万もの大金を稼いでおり、お爺さんよりも硬貨や金塊を愛する主義の人でした。
しかしある日、とある銀行の経営破綻の影響を受けて、お婆さんの保有していた会社の株価が大暴落をしてしまい、おじいさんとおばあさんは渋々真面目に働くことにしました。
おじいさんは自慢の筋肉を活かして山へ狩りに。
おばあさんは溜まった洗濯物と出所不明のお金を洗いに川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、上流から下半身が便器にはまった白い大きな犬が流れて来ました。
しかし、おばあさんは便器にはまった犬には気付かず(むしして)、犬はそのまま下流まで流れて行ってしまいました。
その後も、大きな桃や大きな亀、名状しがたい謎の触手や再び便器にはまった白い大きな犬が流れて来ましたが、おばあさんは全く(もうけに)気付く(ならない)様子が(むし)ありません(しました)でした。
すると、今度は上流から金色に光り輝く大きな球体が流れて来ました。
その球体を見つけたおばあさんは、即座に脳内で損得勘定をしました。
「おや、これは良い金になるわ」
おばあさんは、金色の球体を目にも止まらぬ速さで抱え上げ、光の速さで家に持ち帰るのでした。
そして、おばあさんは家に持ち帰った金の球を小分けにして売るために、おじいさんに頼んで鍛え込まれた上腕二頭筋による必殺・金球大切断をしてもらうのでした。
おじいさんが金球を切断すると、なんと中から元気の良い15歳位の男の子が飛び出してきました。
子供のいなかったおじいさんとおばあさんは、金球から突然出てきた子を多少疎ましく思いながらも、親しみを込めて「シモネ太郎」と名付けました。
おじいさんとおばあさんから邪険にされながらも、シモネ太郎は素直な良い子に育ちました。
それから数か月後、おじいさんとおばあさんから近くの村で鬼が村人から金品を巻き上げて鬼ヶ島に逃げていったことを聞かされたシモネ太郎は、悪い鬼を退治するために旅に出ることを決意しました。
シモネ太郎の決意に、おじいさんとおばあさんは大層(大金が手に入ると思い)喜びました。
そして、おじいさんはシモネ太郎に自家製のプロテインを与え、おばあさんは闇ルートで仕入れた怪しい薬品を渡すのでした。
おじいさんとおばあさんから怪しい品々を受け取ったシモネ太郎は、人知れず家の裏庭の畑に捨ててから、悪い鬼を退治するために鬼ヶ島へと出かけて行くのでした。
すると、旅の途中で全身ずぶ濡れで下半身が便器にはまった白い大きな犬に出会いました。しかし、その犬は横から現れた大鷲によって攫われてしまい、すぐさま大空の彼方へと消えていってしまいました。
不思議な白い便器犬に遭遇したその後、シモネ太郎のお供になりたいという動物たちが続々と現れました。
誰もがシモネ太郎の優しさと人柄に触れ、喜んでお供になって行くのでした。
その結果、猿やキジ、蟹や蜂や臼、亀や熊に狐に狸、兎など多くの生き物たちがシモネ太郎と共に鬼ヶ島を目指すのでした。
そして、数多くの仲間を連れたシモネ太郎一行は、無事に鬼ヶ島への侵入に成功しました。
そこでは屈強な肉体を持つ鬼たちが、つい先ほど打ち落とした大鷲を肴に火を囲んで宴会をしていました。
桃太郎たちは、鬼たちに気付かれないように鬼たち背後に回ろうとしました。途中、岩陰にボロ雑巾のようになった下半身が便器にはまった犬がいましたが、誰も見向きもせずに鬼たちの背後に回り終えました。
そして、シモネ太郎たちと鬼たちとの戦いがついに始まりました。
鬼たちも自らの肉体と立派な金棒を武器にシモネ太郎たちに抵抗しましたが、シモネ太郎たちも必死に戦いました。
始めに猿が鬼の顔面をひっかき、雉は鬼の全身を突っつきました。蟹と蜂と臼は、見事な連係プレーで鬼を翻弄し、亀を盾の代わりにした熊は爪で鬼たちを切り裂いて行きました。狐と狸は鬼たちを化かしつつ同士討ちを狙い、兎は火打ち石を使って鬼の背中や残り少ない毛根を執拗に燃やしておりました。
そしてシモネ太郎は、自らの持つ立派な刀で鬼たちと戦い、とうとう鬼の大将の角を折ることで降参させてしまいました。鬼たちにこれからは二度と乱暴を働かず平穏に暮らすことを約束させ、鬼たちから今まで村々から奪った宝物を元の持ち主のもとに返すように約束させるのでした。
こうして、シモネ太郎と仲間たちの旅は無事に終わりを迎えたのでした…。
………。
……。
そしてシモネ太郎が鬼退治を終えた頃、おじいさんとおばあさんは違法薬物所持と児童虐待、脱税の疑いで捕まってしまうのでした。世の中悪いことをした者には、相応の罰が下るのでした…。
………。
……。
一方その頃、シモネ太郎たちが去った後の鬼ヶ島では、1体の魔人が誕生しようとしておりました。
その怪物は、自分だけがシモネ太郎たちに仲間外れにされたことに加え、おばあさんに無視され続けたことなど世の中の全てを憎む存在となったのでした…。
以前は真っ白だった綺麗な毛並みも全て抜け落ちて人型となった今、肌の色は褐色になっておりました。
そして、大きく立派な胸を覆う胸当ての部分の装飾と頭部の耳、腰の辺りから生えている白いフサフサとした尻尾が動物であった頃の名残として残っているのみでありました。
また、下半身を覆っていた便器は肉体と融合を果たし、ビキニアーマーの様に全身を覆う鎧となり、頭部には大きくて逞しい角が一本生えており、新たな鬼の誕生のようにも見えたのでした。
この世に新たに誕生した怪物には、たった一人の人物への嫉妬の感情のみが残っておりました。何故自分だけがこのような境遇になったのか、何故自分だけが他者から貶め辱められるのかと。
その怪物は答えを見つけるためにたった一人の人物…シモネ太郎を探し求め、鬼ヶ島を後にするのでした…。
人間は自分の手の届かないものや存在に関して、嫉妬を抱くときがある。どんな人間にも嫉妬や妬みという感情は多かれ少なかれあるものです。
問題は、自分の中に沸き起こった感情は無理やり抑え込ませようとせず、受け止めた上で心の本質を見極めなければならないということなのです。
客観的に見ても、対象が不幸になることで自身が幸せになる保証など全くありはしません。
もしも、他人が不幸になればいいと思う嫉妬の感情を持っているのならば、そのときはあなたの心の中にも鬼がいるのかもしれません…。
つづく…。
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「…という昔話を作ったのですが、いかがでしたでしょうか?」
そう言って、下根辰子は週刊ドアーズ編集長である陳弘毅に自身が書いた原稿の出来具合を尋ねるのだった。
「………」
陳編集長は、一切言葉を発することなく能面のような表情のまま原稿から目を離し、下根の方に視線を移した。
「この原稿の最後にある”つづく”という言葉が見えるのだけれど…」
「はい、全19冊に及ぶ超大作を予定しておりまして、エロあり、裏切りあり、アクションあり、残酷シーンも何のその、ついでにシモネ太郎のその後が描かれたノクターンで18禁な外伝も…」
「ウチ…少年向け雑誌と児童向け文学が売りの会社なのだけど!?」
「はい、もちろん知っております!だからこその挑戦なのです!規制の先への限界突破の時なのです!!」
陳編集長からの疑問に辰子は自信満々にそう答えた。
「やめて!?規制超える前に、この出版社自体が規制されちゃうから!!!」
「そんなに奇声を上げなくても良いでしょう編集長?それとも規制と奇声を掛けたんですか?」
「そういうジョークじゃないよ!?どうしてこんな作品を作ろうと思ったの!?」
「ある日、頭に直接神様から下ネタを書けとのお告げが…」
「分かった、取りあえず君は病院に行って来なさい!!それとこの原稿は没ですよ!!」
なおも危ないことを口走ろうとする辰子を見て、陳編集長はシモネ太郎の封印を決定した。
こうして下ネタ昔話「シモネ太郎」は出版されることは無くなったのだった。
しかし、今でも第一部のプロローグのみの投稿だが、とある小説投稿サイトでは“最も下らない昔話ネタ小説”、通称”下ネタ”という愛称でコアなファンたちが続編の投稿を待ち続けているのだった…。
もしかしたら少し加筆するかもしれません~。(=゜ω゜)ノ