表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

図書委員と図書室警備員3

作者: 朝吹小雨

これの続編です。

図書委員と図書警備員2

http://ncode.syosetu.com/n6169dj/

■ 1.図書室で悪いことをしよう


「先輩…私と悪いことしませんか?」


「えっ」


いつもの、誰もいない静かな図書室。

図書委員である真西理晴は、同じ図書委員である東川能々から悪い誘惑(?)を受けていた。


悪いことってなんだろう。一瞬すごいことを考えてしまい、理晴はドキっとする。


「わ、悪いこと? 何なの?」


「この図書室は誰もいませんし、誰も来ません。

 だから、どんな悪いことをしても大丈夫ですよ」


「で、でも…その、心の準備が…」


変なことを想像した理晴は、どきどきして、胸をおさえる。


「心配いりません。私がリードしますから」


「ええっ!?」


リードって、何を!? 理晴は、不安と期待でだんだん興奮が高まり、頬を赤くさせる。


「先輩、目を閉じてください」


「そ、そのっ……えっと……はい」


理晴はぎこちなさそうに、ゆっくりと目を閉じる。


「先輩、口を開けてください」


えっ!? 口を開ける? 口に何か入れるの!?

変なもの入れられたらどうしよう。

理晴の頭はたいへん混乱していた。

理晴は、口を小さく開ける。唇が少しだけ震えていた。


「先輩、いきますよ。……えいっ」


「むぐっ!?」


ぽこっ。理晴の口の中に、小さな棒状のものが入った。

びっくりして、理晴が目を開けると、細長いスナック菓子の先っちょの部分が

お口の中に入っていた。


「お菓子です。図書室でお菓子食べるのはいけないことだけど、

 余ってるから、先輩にあげます」


「ほ、ほう…」(そ、そう…)


なーんだ。悪いことって、図書室でお菓子を食べることだったんだ。

なんだか、がっかりするような、ほっとするような。

理晴は複雑な気持ちだ。


ぽりぽり。

理晴は、スナック菓子を、指で口の中に押し込み、ほお張る。

…あれ? なんか変な味だぞ? 理晴は、そのスナック菓子の味がおかしいことに気づく。

炭酸レモン系の飲み物を飲んでるときのシュワシュワ感。フルーティーな味。


はっきり言って、おいしくなかった。


「の…能々ちゃん…このスナック菓子の味って…」


青ざめた顔をぷるぷる震わせながら、理晴は質問する。


「炭酸レモン味です。大安売りしていて、たくさん買ってみたら、

 そのぅ、ちょっと余ってしまって…。先輩にもおすそわけしてみようと」


気まずそうな顔で、頭をぽりぽりとかく能々。

これがあんまりおいしくないスナック菓子だということは、能々も知っているようだ。


「あ、あはは…。でも、1本で十分かな、私は…」


理晴は苦笑するしかなかった。これ以上は食べられそうにない。あんまりおいしくないからだ。

どうしてお菓子会社は、これ(炭酸レモンスナック)を売ろうと思ったのだろう。

理晴は不思議でしょうがなかった。


「先輩…。その炭酸レモンスナック、あんまりおいしくなかったんですね…?

 お詫びに、口直ししましょう。このお菓子で」


そう言って、能々が差し出したお菓子袋には、「スナック菓子 モンブラン味」と書いてあった。

だめだこりゃ。理晴はずっこけるのだった。

おわり。


■2.図書室で触る


(どうしよう…。図書室でオナラしちゃった…。絶対聞かれてるよう…)


図書室で本を読んでて、気を抜いてしまったのか、理晴は大きなオナラをしてしまった。

赤くなった顔を、本で隠す。


どうしよう。能々が隣に座っているのに。確実に聞かれてしまったかもしれない。

お願いだから、さっきの変な音は無視してください!

天に祈るような気持ちで、理晴は、恐る恐る、本から顔を出し、能々を見る。


「……」


能々は無表情で淡々と本を読み続けている。

理晴の出した変な音など、まったく気にしていないようだ。

よかった。何も聞かないでいてくれた。理晴は、ほっとして胸をなでおろす。


「……」


ところが、理晴の気まずい気分は消えなかった。

能々がよっぽど難聴でなければ、聞こえていてもおかしくない。それほど大きな音だった。

でも、能々は無反応だ。何も言わない。笑わない。これは能々の優しさと受け取っていいのだろうか。


「……」


「……」


「……」


いつまでも続く沈黙、沈黙、沈黙…。気まずすぎる…。

理晴は、今読んでる本の内容が、頭に入ってこなかった。

この気まずい空間から逃げてしまいたい。理晴は、イスから立つ。


「あっ、あの…私、お腹がおかしいみたいだから、トイレ行ってくる!」


お腹をおさえながら、図書室の出入り口へ向かおうとする。


「先輩、待ってください」


能々に呼び止められた。理晴は立ち止まる。

どうして呼び止めてしまったの? そのまま私をトイレに送り出しても良かったのよ?

理晴は、能々がなぜ自分を呼び止めたのかわからず、混乱していた。


「先輩、お腹が痛いんですか? さすりますよ」


そう言って、能々は理晴に近づき、理晴のお腹を優しくなで始める。


「あっ…。う、うん」


まさかお腹をなでられるとは思ってなかった理晴は、動揺を隠せない。


「お腹が痛いのは、さすると治るって言いますよ」


ほ、本当なのかな? 理晴はそう疑いつつも、能々のやわらかな手を気持ちよく感じていた。

不思議な気持ちだった。能々になでられると、本当に痛みがなくなりそうだ。

少しだけ、くすぐったいけども。


理晴は、あまり他人の身体に触ったことも、触られたこともない。

親に頭をなでられたことくらいはあるかもしれないが、それ以外はさっぱりない。

クラスの女の子同士で「触ったり触られたり」な光景を見たこともあるけれど、

どうしてそんなことが人前でできるのかわからないし、ちょっぴりうらやましいとも思っていた。

だからこそ、今の状況は、とても貴重な瞬間だった。


能々の手、とてもやわらかくて好き。もっと、お腹をなでてほしいな。

理晴の気持ちよさはだんだんと頂上へ駆け上がり、身体中の力がほぐれていき、そして――


ぷぅーう!

理晴のお尻が、素敵な第二楽章を奏でるのだった。


おわり。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ