いない、僕。
ぼーっと、していた。
学校へ行かなくてはならないのに。
時間を確認すると、遅刻となるまであと10分。
ここから学校までは、あと5分。
いつもよりは遅いけど、まだ間に合う。
念のために歩くスピードを上げて、さほど行きたいわけでもない学校という、子供が治める世界に向かう。
僕は確かにそこの世界の住人である。しかし、住人と言っていいのか分からないほど、存在はない。
無くしている、が正しい。
もともと無い存在をさらに無くして、誰とも接しないことを目標としている。
理由…?分からない。ただ、何となく。
僕は、誰かと接してはいけない気がしたんだ。
あの人以外の、誰とも。
…あの人?一体誰だろう。顔も名前も、何もわからない人。だけど、僕の中心にいる人。忘れてはいけない人。
ああ、まただ。
なんて、気持ち悪いんだろう。
気持ち悪さを取り払うように大きな音を立てて教室のドアを開けた。
クラスの中に居た数人が僕を一目見て、何も見なかったかのように目を逸らした。
僕は、いない。
この世界では、いないんだ。
だけど不思議と、悲しい、なんて思わない。
この世界で必要とされなくてもいい。
ただ、あの世界で。
あの人のいる世界で、必要されれば。
一体、僕は、君は、誰なんだ?