僕は、満月が好きだ。
はじめまして。
はじめまして、と言ったからにはこれが初めてでなくてはならない。
そのとおりです。これか初めての作品です。
趣味程度で書かせていただいてます。
機能もよく分からずツラツラと書き綴っておりますが、何卒暖かい目で読んでやってください。
ローファンタジーということで、現実からさほど離れていない世界を描いていきたいなと思っております。
暴走したら、たぶん止まりません。気をつけます。
それでは、物語をどうぞ。
ある世界の、ある日。
月が、半分になってしまいました。
「葉喜、いい加減起きなさい!」
怒鳴り声はあまり好きではない。
うるさいからだ。
「…はい。」
けど、僕は不良ではないから言い返さない。
ただ、はい。と返事をするだけ。
「早くしてちょうだい!忙しいの!」
なら、僕のことなんて放っておけばいいのに。
そんなことを思うけど、何も言わない。
ただ、はい。と返事をするだけ。
もぐもぐとご飯を口に入れていくと、お母さんはイライラした目で僕を見る。
「ああもう!ほんとにムカつく!」
何をそんな。そんなことを言った日には、僕は追い出されるだろう。
「…はい。」
僕の相変わらずな返事を聞くと、お母さんは千円札をお財布から抜き取って机に置いた。
「これで過ごしなさい。」
いつまで?聞いたって無駄なことはわかってる。
ガチャンッと壊れんじゃないかとドアを心配せざるを得ないくらい大きな音を立てて、お母さんは仕事に出掛けた。
僕は、高校生だ。もう、大人だ。
だから、何となく分かっている。
お母さんが何故僕のことを嫌っているのか。
それは、僕が愛すべき子供ではないからだ。
僕の記憶は、突然始まる。
突然、ここに立っていて。突然、名前を呼ばれて。突然、この生活が始まった。
何不自由ないこの生活は慣れるのも早くて、楽だった。
だから、何も気にしなかった。
“続いてのニュースです。”
アナウンサーが原稿を見ながら話している。
暗記することはやはり難しいのだろう。量が多いもんな。
“月が、半分になりました。”
違和感を覚えたのは、僕だけだろうか。
抑揚のない声でアナウンサーが告げたニュースは、信じられないものだった。
月が半分。
満月は、それはそれは美しい。
人間が月を綺麗と思うのはもはや本能なのではないかと疑うくらい、綺麗なんだ。
もちろん、下弦の月、上弦の月。どちらも綺麗だ。
だけど、僕は満月が好きだ。
「…まあ、いいか。」
ポロッと零れてきた言葉はこんな言葉だった。
何がいいのか。何が良くなかったのか。
それすら分からないくせに。
意味のわからないモヤモヤが気持ち悪く広がった。
麦茶で流し込んでみるけど、流れるものでもない。
コップの中の麦茶を全て飲み干して、歯磨きをすれば大分楽になったかもしれない。
昨日のうちに用意していた教科書などをもう1度確認して、肩にかける。
ああ、そうだ。
玄関からリビングに戻って、クシャクシャな千円札をポケットに突っ込む。
履きなれたローファーを履けば、あとは外に出るだけ。
「いってきます。」
胸のモヤモヤが、苦しくなってきた。