第三話 魔法の仕組み
魔物は逃げ、少女はこちらに向かってきた。
「大丈夫?」少女は微笑む。
「ありがとうございます」精一杯の感謝を述べる。
「私は、ラクス、君の名前は?」
少女は自己紹介をし、僕の名前を聞く。
苗字という概念があるのか分からなかったので名前だけ答えた。
「ナオヤです」
「ナオヤ、変わった名前ね。」ラクスの方が変わった名前だと思うけど
「さっき魔法を使ってたみたいだけど、あなた魔法使いなの?」
それは僕が聞きたいくらい、だが。それを離すと混乱するだろう。
「たぶん、そうみたいです」
「いま、飛ばされてきたところなので、よくわからないんですが」
と僕が言うと驚いた顔をラクスさんがした。
「飛ばされてきた?最近ウワサのやつかしらね」
考えるような仕草をしながら、ラクスさんはつぶやく。
「最近ウワサ?ほかにもそういう人がいるんですか?」
気になったので、ぼくも尋ねる。
「そうみたい、今日はもう遅いから私の宿に来るといいわ、疲れたでしょう」
「え、いいんですか?」
いきなり、野宿するよりはずっといいが、申し訳ない
何かお礼ができるといいのだが
「気にしなくていいわ、いろいろ聞きたいこともあるし」
そういうわけで、ラクスさんの宿に泊めてもらった。
異世界ものにありがちな、ラッキースケベを期待したのだが
疲れてねてしまっていたらしい。
朝起きたら、部屋にラクスさんはいなかった。
窓から下を見ると、ラクスさんが稽古をしている。
「毎日やっているんですか?」
「毎日やらないと、弱くなる」
なるほど、僕も魔法の訓練を毎日やらないといけないな
昨日から魔法の仕組みを考えていた。
いきなり「ファイアー」が出せたが
これはAPIつまり、アプリケーションプログラミングインタフェース
みたいなものだと思う。
ファイアーというプログラムを呼ぶと、
すでに生成されているひとかたまりのプログラムを呼び出す
という形だ。
昨日、出したファイヤーは引数を与えずに
出してしまったのだろう。なので、デフォルト値。
なにも設定しないと、自動で生成される大きさの火が放たれた。
MPを変動させて、スピードと強さを与えた上で
ファイヤーというAPIを呼ぶと
もっと細かく炎をコントロールできるのではないか
宿においてあった、いらなそうな、材木を立てかける
そして、MPと速度をイメージして
手をかざして「ファイヤー」と言う
昨日出たのとは違う、小さく早い炎の球が木材に向かって飛んでいった。
そして、木材が燃える。
やはりそうか。
さらに試してみる
「ファイヤー(MP小、スピード速)」
「ファイヤー(MP小、スピード速)」
「ファイヤー(MP小、スピード速)」
「ファイヤー(MP小、スピード速)」
「ファイヤー(MP小、スピード速)」
そう連呼し、木材に当てる。
「ああ、やっぱりそうだ。魔法とプログラムは似ている」
それを見ていたラクスさんは、目を輝かせてこちらに近づいてきた。
「すごい!あなたすごいわね!」