おまけ小話③ 陰陽師のお仕事事情
【桜庭瑞希】
「陰陽師の仕事……ですか?」
「そうそう。どういうものなのかなぁって。あ、そうそう、あとさ、平安って、貴族……公家とかがいっぱいるたんでしょ?その辺のとことかも聞きたいなぁって」
昼も夜も非番で暇になった私は同じく今日は非番な晴明君と彼の部屋で買ってきたみたらし団子を食べながら、ふと、疑問に思ったことを聞いてみることにした。
「なるほど。そうですね……瑞希さんは陰陽師という仕事が平安では官職であることは知っていますか?」
「うん。知ってる知ってる」
陰陽師って、昔はれっきとした公務員みたいなものだったんだよね。
「僕はここに来る前は陰陽寮所属の天文博士を歴任していました」
「天文博士って、天気を当てたりとか?」
「まぁ、そんなところです」
「そういえばさ、晴明君って、貴族なんだよね?」
確か、安倍晴明はそれなりの高官だったはずだ。
「貴族……というと少々語弊がありますが、位階……平安での身分制度のようなものに当てはめますと僕の位階は従四位ですから、殿上人のくくりには入ります」
「『殿上人』……ってなんだっけ?」
「殿上人とは、清涼殿……帝が住まう御所の最深部の殿上の間へ立ち入りを許された者を指します」
「え、ってことは天皇……帝にも会えるの!?」
「ええ、もちろん」
「うわぁ、すごーい!!」
晴明君って、実は結構なお坊ちゃんなんだぁ…………。
「それでそれで?陰陽師って、いつもは何してるの?」
もののけ退治とか、悪霊退散!みたいなこと!?
「そうですねぇ……まぁ、大抵の場合、陰陽師というものは一言で言いますとお悩み相談所のようなものなんですよ」
「お、お悩み相談所……?」
「ええ。……どこどこの姫君の気を引きたいがどうしたらよいか、妻との仲をどうやって保ったらよいか、などなど」
「……」
ーーーどこの時代でも人間の悩みっていうのは変わんないなぁ!!
「もちろん、要請がありましたらもののけ退治もしますが、ほとんどは心の恐怖心が生み出した幻ですので、一度行って退治してきたと言えば皆さん満足してくださいます」
「……まぁ、陰陽師みたいな人が退治したって言ってくれれば安心するから幻も見ないんだろうね。……やっぱ、そうなのかぁ……。もののけなんてファンタジ……」
「……時たまに本物も出ますけど」
「え」
ーーーまじですか?
「そ、そうなったら、どうするの?」
「もちろん、それが人間の害になる悪鬼などであれば日頃の鬱憤晴らし……いえ、皆さんの安全のためにも討伐します」
「……今鬱憤晴らしって言ったよね」
「いえいえ、安全のためです」
にっこり、と、清々しい微笑を浮かべる晴明君。
「いやいや、そんな笑顔じゃ騙されないよ!?『安全のためにも』とも言ったし!!」
「気のせいです♪」
「断じて気のせいじゃない!!」
天使みたいな綺麗すぎる笑顔で何をしれっと言ってるんだ。
確かにその辺の美少女なんて翳むくらい、「可愛すぎてつらい」って言葉はまさにこういうのを指すんだと思えるぐらいに可憐な微笑だけど、それだけにさっきの発言は色々と突っ込みどころが満載だよ!
「まあまあ、瑞希さん。良いではありませんか。僕がどのような方法で悪鬼達を討伐しようと、皆さん幸せに暮らせるのですし」
「……」
ーーーまぁ、確かにそうだけどね?
でもやっぱり悪鬼達も色々と物申したいんじゃないかな!?
「あ、ちなみに僕が討伐するもののけの中で一番好きなのは百鬼夜行です」
「それは……楽に退治できるから?」
「いえ、量が多いからです♪」
「……」
ーーー結論から言おう。
ーーー晴明君って、普段は優しいけど、結構笑顔で容赦ないことする人である。
彼の心底嬉しそうな笑顔を遠い目で見ながら私は静かにそう思った。
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次の更新は明日、15日です^ ^




