第84話 八月十八日の改変(3)
【桜庭瑞希】
夜は南門の警備をすることになった。
「瑞希ちゃん」
「うわぁ、って、沖田さん。気配殺して近づかないでくださよっ!!」
「別に僕は気配消してなんかないんだけどね?君の注意力が足りないんだよ。もっと精進しないとね」
「余計なお世話です。で、沖田さんは人のことをからかうためにわざわざここまで来たんですか?」
「まさか。僕は……」
「近藤さんから隊士全員を集めて欲しいって言われたんだよ、瑞希」
「あ、原田さん」
沖田さんの後ろからひょいっと顔をのぞかせた原田さんがいたずらっぽい笑みを浮かべながらそう言った。
「……左之、それ、僕が言おうと思ったんだけど」
「ああ、そうだったんだ?まぁ、細かいことはいいじゃないか」
「…………」
ヘラリと笑う原田さん。
そんな原田さんを沖田さんは珍しく目に見えて不機嫌な表情で睨んだ。
「……瑞希君。そういうことだから行くよ」
「は、はい」
ーーーうわぁ〜なんか沖田さん、怒ってるよ!?
なんで!?
「そうだねぇ。近藤さんを待たせるわけにもいかないし、行こうか、瑞希?」
対する原田さんはこちらもなぜか楽しげだった。
そんな原田さんとなおも睨みつける沖田さんらの視線がぶつかり合う。
なんか、火花が散っているような気がするのは気のせいだろうか。
「左之っ!!何そんなところで油売ってるんですか!!総司と瑞希も!」
ーーーそのにらみ合いは、来るのが遅い私たちを探しに来た平助君が眉を吊り上げて走ってくるまで続いたのだった……。
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「朝廷より、今回の我が壬生浪士組の功績をもって、『新選組』という隊名が下った」
ーーー近藤さんの言葉に、隊士のみんなが一斉に盛り上がった。
「わあっ!!すごいですよ沖田さん!!やっと、やっと『新選組』になれましたよっ!」
「その名前、後世にも残っているんだ?」
「勿論です!」
歴史の教科書に載ってるほど有名ですよ!
「ま、今回は別に何もしてないように僕は思うけどね」
「……そんな身も蓋もないこといこと言わないでくださいよ。私たちが『警備していた』という事実に価値があるんですから」
「まぁ、別にいいけどさ。朝廷も考えるよね。名前与える方が褒美を与えるより金かかんないから」
「……沖田さん……」
ーーーそれじゃあ夢も希望もないじゃないか。
ってかそこまで朝廷ケチじゃないでしょうが。
「で?今回の件はこれでおしまい?」
「はい、そうです。帰ったら晴明君のお見舞いがてらに報告に行きましょう」
「了解」
とりあえず、八月十八日の政変は無事に終わった。
ーーーところで、寝込んでる晴明君、大丈夫かなぁ?
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屯所に戻ったのはすでに日付の変わった8月19日の朝だった。
帰ってすぐに沖田さんとともに晴明君の部屋へ行くと、穏やかな笑顔の山南さんに出迎えられた。
「おかえり、二人とも。いや、お疲れ様、かな?」
「ただいまです、山南さん」
「警備は無事に終わったらしいね。土方さんに聞いたよ」
「あ、そうだったんですか。……それで、せ……桔梗君は?」
ーーー危ない危ない。
「晴明君」っていうところだった。
山南さんの傍の布団ーーー潜り込んでいるせいか、顔は見えないがーーーを見ながら言うと山南さんは笑って口元に人差し指を立てて当てた。
「ああ、そうだった。彼なら今朝やっと熱も下がってきて、今は眠っているよ。昨夜はあまりよく眠れていないようだったから、起こさないであげよう」
「……そうですね」
私も山南さんと同じように声のトーンを落とし、そう頷き返す。
「それじゃあ僕は部屋に戻るけど、瑞希君はどうする?」
「私は……山南さんはまだここにいますか?」
「私はそろそろ自室に帰ろと思うよ。彼ももう大丈夫そうだからね」
「そうですか……。じゃあ私ばここに残ります。一応、心配なので」
「そうかい?君も疲れているだろうに……体に気をつけて看病しなさい」
「了解です!」
山南さんはそんな私へ苦笑を返し、部屋を出て行った。
「……まったく。ほんと君って妬かせてくれるよね」
「え、なんか言いましたか、沖田さん?」
「いーや?別に?……君、ほどほどにしなよ?君まで風邪引かれたら面倒だからね」
「心配してくれるんですか?私は大丈夫ですよ!丈夫なことだけが取り柄なんで!」
「……あっそ。ま、そうだよね。馬鹿は風邪引かないっていうし」
「なっ……!それ、私が馬鹿だって言いたいんですか!?」
「シーッ!晴明君が起きちゃうよ?」
「っ〜〜〜!!」
意地悪いその笑み睨むが、いつも通りそれをあっさりと黙殺した沖田さんはその顔のまま右手をひらひらと振っていってしまった。
「もうっ!ほんとになんなんだあの人はぁっ!!」
晴明君を起こさないように注意を払いながら、私は精一杯の憎まれ口を叩くのだったーーーーーーーーーーーーー。
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【???】
ーーー桜庭瑞希は、本当に「あの人」の未来を変えられるかもしれない。
今回の事件であなたが変えた「改変」は大きい。
ーーーやはり、あなた達をこの時代に連れてきたのは◾️かもしれないわ。
それも、◾️◾️の◾️。
そしてその◾️◾️が事実なら。
ーーー今回こそは、あなたの「大切な人」を、救えるかもしれないわ、晴明。
ーーー私はあなたのために、それを実現してみせる。
あなたは私に「光」をくれた。
そのおかげで。
私は生きて入られた。
ねぇ、晴明。
あなたは優しい。
そしてその優しさは、あなた自身を貫く刃になりかねないのは事実。
けれど。
ーーーそれでも。
私は、あなたのその優しさに、救われた。




