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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第八章 「歪み」を正す力
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第79話 佐伯又三郎、暗殺

【桜庭瑞希】


佐々木さんたちが駆け落ちをしてから2日が過ぎた頃。


駆け落ちは無事成功したらしく、感謝の文が彼らから届いた。



「いやぁ、人助けって、なんか気持ちいいですね!」

「なんなの、急に人の部屋へ押しかけてきて……」


佐々木さんたちの文を持って沖田さんの部屋へ行くと、うっとおしそうな顔でそう言われてしまった。


「だって、小さな事件ですけど、歴史が帰られたことが嬉しいんですもん」

「じゃあその調子で今後もよろしく頼むよ、瑞希ちゃん?」

「わかってますよ、それくらい」


一応、それが私たちと沖田さんの「取引」の内容なんだし。



今思うと、あの取引をしてからもう5ヶ月もたっているという事実に驚きである。

つまり、こっちの時代に来てもう半年近くたっていることになる。


「……ところで瑞希ちゃん、巡察に行かなくていいの?」

「へ?ああっ!!」


わ、忘れてたっ!!


「確か今日の巡察、土方さんとだったよね?」

「っ!?い、行ってきますっ!!」

「行ってらっしゃい、瑞希ちゃん。頑張ってね。色々と(・・・)♪」


人の不幸を楽しむような笑顔の沖田さんに見送られ、私は急いで屯所の門へと走り出した。



********************



「……てな感じで、もう土方さんの顔と言ったらっ!!本物の鬼も真っ青なほどの形相でっ……!!」

「そりゃあ災難だったなぁ瑞希!ププッ!」

「ちょっと!笑わないでくれる、新八君!?」


集合に遅刻した私を文字通り大魔神な形相で出迎えた不機嫌MAXの土方さんとの恐怖の巡察を終えた私はその時の心情と溜まったストレスを吐き出すべく、新八君の部屋へとやってきた。


ちなみに、そこは新八君の部屋、と言っても、原田さん、平助君らの共同の部屋らしく、そもそも、普通の隊士は大部屋でまとめて寝起きしているらしく、1人部屋なのは私や沖田さん、晴明君や土方さんなど、限られた人間のみなのだそう。


一応、私は女なのでその辺は土方さんが気を周りしてくれたのだろうし、晴明君は大勢がいる場所は苦手と言っていたからなのだろう。

沖田さんについては……謎なのだが。


「それは大変だったね、瑞希。土方さんは怒ると怖いから」

「っていうかあの人が起こってなき時ってあるんですか、原田さん」

「……確かに。ないかもなぁ」


だって土方さん、四六時中眉間にしわよってるし。

あれ、もう絶対取れないだろーな。


「あれ?そういえば平助君は?」


巡察担当じゃないはずなのにいないぞ?


「さぁ……。そういえば最近、平助、様子がおかしいんだよね。ふらっとどこかいなくなるし、女でもできたのかねぇ?」

「ええっ、平助君が!?」


なんか、想像できないわぁ。


「ま、あいつも男だからね」


クスリと意味深に笑う原田さん。


ーーーまぁ、そりゃそうでしょうけども。


あの真面目な平助君に恋人とか、ちょっと想像つかない。


「まぁでも、平助君カッコいいから、出来たかもしれない恋人さんは幸せ者だね」

「……ほぅ?」


原田さんがわずかに目を見張り、そしてすぐに口元にほのかな笑みを浮かべた。


「……かわいそうな平助」

「え、何か言いましたか、原田さん?」


新八君も原田さんの小さなつぶやきが聞こえなかったのか、不思議そうに首を傾げていた。


「いーや、なんでもない」


問いかけるものの、原田さんはただただ意味深な笑みを浮かべているだけだった。


と、その時。


「失礼いたします。瑞希さんはいらっしゃいますか?」


……襖がゆっくりと開き、藍と白を合わせた袴を身につけた晴明君が顔をのぞかせた。


「私はここにいるけど……どうかした?」

「……少し、よろしいですか?」


いつもなら優しい笑みを浮かべているというのに、今日の晴明君の表情はその笑みが少し強張っていた。


ーーー何かあったのだろうか?


「うん、いいけど……」

「それでは……少々場所を変えてもよろしいですか?」


最後の問いは私と、そばにいた新八君たちにかけられたものだったのだろう。

二人は顔を見合わせたが、晴明君のいつもとは違う様子に気づいたのか、納得したように頷いた。



********************



「……昨晩。佐伯又三郎が島原にて何者かに殺害されました」


晴明君の部屋へと連れてこられた私に、晴明君はそう、切り出した。


「え……佐伯って……!」


彼が、殺された?


私は直接佐伯又三郎という人物に関わることはこの間の佐々木さんたちの一件以外なかったが、少なからずあったことのある人物が殺されたというのはなんとも寝覚めが悪い。


ーーーけれど、何か、違和感があるのは気のせいだろうか?


「犯人は?わかってるの?」

「……いいえ。おそらく、判明していないでしょう。僕も、つい先ほど近藤さんから聞かされたばかりですから。他の隊士には明日、発表するそうです。……それで、この事件、未来では知られていないのですか?」

「そういえば……佐伯又三郎が、日にちはわからないけど、誰かに殺されるって事件、あった気がする。その事件、確か未来でもきちんとした犯人はわかっていなかったはずだよ」


佐々木さんの件を先に思い出したばかりに、その後のそれほど有名ではない事件にまで気が回らなかったのが悔やまれる。


ーーーけれど、ここで後悔していても仕方ない。


「……ただね、佐伯又三郎を殺した犯人にはいくつか説があって、結構有力なのが、その……」

「……芹沢さん、ですか?」

「……うん。よくわかったね」

「なんとなく、想像はしていましたから」


晴明君はそう言ってわずかに顔を伏せた。


「芹沢さんは、この頃、お酒を昼間から飲み歩き、色々と問題を起こしているようで、色々と反感をかってるようですし」


だろうなぁ。

芹沢さん、結構敵多そうだし。


……ん?


あれ、そういえば……。


「あああっ!!!そうだ、そうだよ!!芹沢さんは来月に内部粛清され……むぐっ!」

「……シッ、静かに。誰か来ます」

「!!」


ハッとして耳をすませると、こちらにかけてくる複数の足音が聞こえてくるのがわかった。


その足音は、一直線にこちらへと向かってくる。


そして。


ーーースパンッ!!


「大変だっ!!」

「!?」


勢い用襖を開けたのは顔を青ざめさせ、焦った様子の新八君、原田さんの2人だった。


「どうしたの、そんなに慌てて」

「せ、芹沢さんがっ!!」

「え?」



「芹沢さんが、大和屋を焼き討ちにしてるんだ!!」

「はい!?」


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