表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第七章 咲き乱れし恋と波乱の予感
77/177

第75話 交差する「想い」

【沖田総司】


屯所に帰ってきた後は瑞希と別れ、部屋に戻る。


すると、そこには予想外の先客がいた。


「ああ。おかえりなさい、沖田さん」

「……晴明君」


彼ーーー晴明君は淡い笑みを浮かべて振り返った。


「どうして君がここにいるわけ?」

「……今日、街でお二人を見かけました」

「!!」


再度予想外な発言に息を呑む。


「見ていたってわけ?」

「ええ」

「じゃあ、どうして止めなかったの?」

「……あなたは、『闇』に呑まれる一歩手前でした」

「……『闇』……?」

「心の闇。……妄執、情念、と言ったらお分かりになりますか?」

「っ……」


ーーーさすがは陰陽師。

なるほど、そういうことか。


「あの真っ黒な霧みたいなのは、そういうことだったんだ?」

「はい。……もちろん、払うつもりではありましたが、僕が行動を起こす前に、瑞希さん自身がそれを払ってしまわれた。正直、驚きましたよ」


彼はクスリと微笑み、流れるような所作で立ち上がる。


ーーーこの動作から、剣術をやっていないなんて、嘘つきもいい所だよね。


「今日は、それを一応報告に。本人がわかっていらっしゃるのならば僕から申し上げることは何もありません。……失礼しますね」

「……ねぇ、晴明君」


呼び止められた彼は無言でこちらを見つめ返し、僕の言葉を待った。


「……僕は、瑞希ちゃんが好きだよ」

「……」


口からすべり出たその言葉は、ストンと自分の中に確固たる意思として下りてきた。


ーーーモヤモヤの理由。


前から気付けたはずなのに、あの黒いものが邪魔をして見えなかった自分の本心。


それが「恋心」だと、今ならばわかる。


ーーー僕は嫉妬していたのだ、と。


「……その様子だと、前から気づいていたみたいだね、君は」

「……気づかれたようで、何よりです」


ーーー何をいけしゃあしゃあと。


だったらこちらも聞かせてもらうよ。


「そう?じゃあさ、君はどうなの?」

「は……?」


僕の問いに、晴明君は虚をつかれたように瞬きを繰り返し、が、すぐにその意味を理解した彼は淡い微笑を浮かべた。


「……僕は、彼女を好きになることはありませんよ」

「どうしてそう言えるの?」


ーーー断言はできなきはずだよね?


「……僕が人を愛することは、もう二度とないからですよ、沖田さん」

「!!」


ーーー特徴的な紫の瞳が自嘲気味に揺れた。


「ーーー僕は、もう二度と恋をしない。誰か1人を特別に想ったりはしない。僕はあの日(・・・)、決めたんです」

「……それは……」

「……僕のことは別によろしいでしょう?それよりも、頑張ってくださいね。あなたの敵は多そうですから。彼女自身、未だ特別に思っている人はいないようですから、誰にでも好機があるということです。……それでは、僕はこれで」


白銀の髪が翻る。


それを僕は無言で見送った。


「……まったく、鈍いのは君もか」


ーーー人が人へ向ける想いには小さくても本人が気付いていなくても察するくせに、自分に向けられる想いには気づかないんだね、君は。


ーーーもっとも、それはまだ芽吹いたばかりみたいだけど。


だから、必ず僕が摘み取ってあげる。


もう二度と(・・・・・)恋をしない、ね」


ということは、君は一度は(・・・)誰かを想ったんだ?


ーーーいったい、君をそこまで頑なにした、君の「闇」は、どんなものなんだろうね?



********************



【安倍晴明】


自分の部屋に戻り、開けっ放しの戸からぼんやりと庭を眺める。


「これから、彼女はいったい誰を選ぶのでしょうね?」


誰にともなく呟いた言葉は空気に溶けて消えていった。


ーーー安心してください、沖田さん。

僕が、あなたの想いを邪魔することは万に一つもありません。


僕は、二度と恋はしないと、「あの日」、僕が自分の「想い」を失った日、そう己に誓ったのですから。


もう、あんな悲劇を起こしてはならない。


そのためには、僕は誰も愛してはいけないんです。


ーーーそれは、僕自身の罪の代償。


「……僕は、一体いつになったら、あなた(・・・)の元に逝けるのでしょう?」


僕は、自らあなたの元へ行くことは許されない。


ならばせめて。


せめて、今宵だけでも、あなたの夢を見させてくださいーーーーーーーーーーーーーー。



********************



【桜庭瑞希】


「……」


ーーーあなた(・・・)


偶然、晴明君の部屋の近くで聞いてしまった、切なげな彼の言葉。


『……僕は、一体いつになったら、あなた(・・・)の元に行けるのでしょう?』


ーーー「あなた」って誰……?


ーーー「あなたの元へ行ける」って、どういうことなの……?


あんな、悲しそうな顔で。


ーーーズキリ。


心臓に、針で刺されたようなチクリとした痛みがはしる。


ーーーこれは、なに?


どうして、私は悲しいの?


私、自分の気持ちがわかんないよ……。


どうも。

お久しぶり?な日ノ宮九条です。


今話で一応、沖田さんはヤンデレ(?)脱却ーーーだと思います、ハイ。


さて、ここで一旦第7章本編は完結です。

次の話は「おまけ小話」になります。


今章は登場人物たちの恋愛模様を主に書いてきましたが、伏線がちらほら見られたことにはお気づきになられていると思います。


【???】と表記された人物が一体誰なのか、晴明君の言う「あなた」とは誰なのか、瑞希ちゃんは一体誰を選ぶのかーーー?


これらの主だった事柄およびその他は作中で次第にわかっていく予定です。


まぁ、【???】についてはほとんどの方が気付いているかとは思いますが(笑)

ただ、「少々」予想とは違うかもしれませんね。

ほーんの少しだけ。

…………多分。

これ以上は後のお楽しみです^ ^


それでは、次章では「歴史的」な事件が起こってくる予定ですので、引き続き「時廻奇譚」を楽しんでいただければ幸いです(^∇^)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ