表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第六章 歴史における試練
58/177

おまけ小話① お怒りの晴明君

かの大阪力士乱闘事件の翌々日。


あの事件の報告も兼ね、私と沖田さんは晴明君の部屋へと集まっていた。


「……という感じで、瑞希ちゃんの怒号でことなきを得た、というわけだよ」

「ふふっ。それは面白いですね」

「全然面白くないよ、晴明君!!」


あの時はめちゃくちゃ大変だったんだから!!


「……ところでさ、少し気になったんだけど、晴明君って、怒ったことあるの?」

「あ、それ、私も聞きたい!」


いつも温厚な晴明君が起こった姿なんて、どんな感じなのだろうか?


「そうですねぇ……。平安にいた頃の話でよければお話しできますよ」

「え、なにそれ聞きたい!」

「それでは……」


晴明君は私たちの興味津々な様子に、苦笑を浮かべ、彼が平安にいた頃の話をしてくれた。




……さて、どこからお話ししましょうか?


あれは確か、平安の遍照寺での出来事です。


「これはこれは安倍晴明殿ではありませんか!」

「……御機嫌よう、皆様」


寺の廊下にて、何かは忘れてしまいましたが、なんらかの用事でいらっしゃっていた公卿の方々や若い僧たちと廊下でお会いしました。


……僕がなんの用事でそこにいたのか、ですか?


ああ、それは広沢の……寛朝僧正様と会うためです。


話を戻しますね。


……実は、彼らはあまり僕を快く思っていない方々だったんですが……。


「それはそうと……貴殿は『式神』、というものを使うそうですねぇ?その式神をもって、簡単に人を殺すことができるのではないですか?」


式神は、元来、人を殺めるためのものではありません。それに、そのような質問はあまりにも品のないものです。ゆえに、僕はこう答えました。


「『陰陽道』という道に対し、随分と不躾な質問をなさいますね。……簡単に殺すということはできませんが、少し力を入れさえすれば必ず殺せるでしょう。虫などであればすぐにでも。しかし、それを生き返らせることはできないのです。それでは罪になってしまうでしょう?立派な殺生ですから。つまり、それはとても無益なことなのでございます」


ちょうどその時、庭で何匹かの蛙が飛び跳ねているのが見えました。

すると、彼らは僕に、笑いながらこう言ってこられたのです。


「おお、ならばあそこにいる蛙を一匹、殺して見せてくだされ」


『そんな軽々しく蛙を殺そうなんてひどい』?

……そうですね。

瑞希さんの仰る通りです。


そもそも、陰陽道はそのようなためにあるわけではないことは、前に申し上げた通りですし、あんな軽い気持ちで生き物の命を殺めようだなどと。


沖田さんたちも、確かに人を斬る、ということはなさっているでしょうが、それは、そのような遊びの気持ちではないでしょう?


……そうですね。それなりの覚悟のもとに、行っているのです。


「……それは罪なことと申し上げたではありませんか。そのような無体な真似、軽々しくするものではありません」

「ほう?できぬと申すのか?……はっはっは!やはり陰陽道など、まやかしに過ぎぬということか!」


……僕を馬鹿にするだけならばいざ知らず、他の陰陽師たちもが大切にしている術そのものを侮辱されるというのは、つまり、剣士が剣術そのものを侮辱されるのと同じです。

沖田さんも、そうなれば腹が立つのは道理でしょう?


き、斬る、ですか。

それはさすがにできませんよ沖田さん。

相手は身分ある方なんですから。


……とはいえ、かく言う僕もその時ばかりはさすがに腹が立ちました。


ですので、


「……なんとも罪深い方々ですね。罪とわかっていながら、それでも僕を試そうとなさるとは」


僕は葉を摘み取り、それに呪をかけて蛙の方に投げました。


その葉は一直線に蛙のうちの一匹に近づき、その蛙を押しつぶし、殺してしまいました。


「なっ……」


その場にいた公卿や僧たちは腰を抜かし、唖然とした表情で蛙を見ていましたので、少々悪戯心が湧きました。


そこで、


「可哀想に。あの蛙も、術を見るために殺されたとなってはうかばれないでしょう。祟られてしまっても、文句は言えません。僕は己の身を守る術を心得ていますが……」


ちらりと彼らを見やると、泣きそうな顔でこちらにしがみついてきました。


「ひっ……た、たすけてくだされっ!!」

「……殺せ、と、仰ったのはあなた方です。ならば……」



「蛙の命も、人間の命も、尊さには変わりありません。さて、それではどなたかを生贄として、供養に捧げましょうか♪」




「……と、申し上げますと、皆さん、悲鳴をあげて逃げていかれましたよ♪」

「「………………………………」」


ブルブルッ。


こ、怖っ!!


今の晴明君の顔、マジだったよ!?


あれだけ背筋が凍る笑顔は見たことないよ!!


「普段温厚な人ほど、怒らせたらまずいとは、よく言うよね」

「……ですね」


晴明君は絶対に怒らせないようにしよう。


そう、私たちは心に決めたのだった……。


どうも、すでに暑さでへばってきた日ノ宮九条です。

さて、今回でこの章は完結です。

当初の予定では、もう少しシリアスな展開にするつもりが、完全にコメディと化した「大阪力士乱闘事件」…………。

瑞希ちゃん、怒ったときの言葉遣い、めちゃくちゃ悪いですね…………。


「おまけ小話」では、晴明君の平安でのエピソード話となっております。

①、などと題名につけていますが、②以降があるかは現在検討中です。

ちなみにこれ、「今昔物語」に書かれているもののアレンジバージョンです。

つまりはパク……いえいえ、オマージュです(笑)


さて。


そろそろ歴史の方面も、もちろん登場人物たちの恋も忙しくなってきます。


だんだん瑞希が女の子だと周りにバレていく

展開になります。

まぁ、ここは王道を突っ走りましょう!


次話更新につきましては、このままできるだけ毎日22時にしていきたいと思っていますので引き続き本作を楽しんでいただければ幸いです♪





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ