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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第六章 歴史における試練
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第56話 小さな歴史の改変

「うぐっ……頭痛ぇ……」

「俺もだよ……」


かの有名な大阪力士乱闘事件翌日。


昨日、しこたま酒を飲んだ、その大半が二日酔いに悩まされながらの帰り道となった。


……自業自得である。


あの後、荒れに荒れた室内の掃除諸々を行い、宿に着く頃には皆ボロボロになっていた。


昨晩お酒を一滴も飲んでいない私と、宿に残った源さん、近藤さん、そして二日酔いにはならないという沖田さんと斎藤さんのみ、まともな健康状態、という有様である。


もちろんそれも自業自得だが。


「あ、そうだ……あの、近藤さん」


一つ、気になっていたことを尋ねるべく、私は先頭を歩く近藤さんの側へ小走りに近づいた。


「なにかね、桜庭君?」

「あの、一つ聞きたいことがあるんですけど」

「聞きたいこと?言ってみなさい」

「はい。……その、昨日の件で……向こうの、力士たちの方に、死人なんかは……」

「ああ、そのことかい?安心しなさい。少々怪我をした者はいるが、誰も死んではいないよ」

「えっ!?……あ、そ、そう、ですか……」

「それもこれも、君のおかげだ、桜庭君。向こう側も感謝しているそうだよ」

「そんな。私は、何も……」

「いやいや。女子の前で乱闘し始めた彼らを止めてくれたそうじゃないか」

「は、ははは……」


ものすごーく失礼極まりないことを口走ったけどね!


それにしても……。


「歴史が、かわったね、瑞希ちゃん」

「う、うわ、沖田さん!いつの間に!」

「瑞希ちゃんが近藤さんと話している時からいたけど?それよりも。……歴史、変わったみたいだね?」

「はい……。なんか、よかったんでしょうか?」

「まぁ、いいんじゃない?僕としても、君の怒った顔が見られたわけだし」

「……何が面白いんですか、それ」

「んー?秘密」


クスリと意味深に笑う沖田さんはどこか楽しげだった。


「ん……?」

「?どうしましたか、沖田さん?」


突然、あたりを訝しげに見回した沖田さんは、一瞬鋭い視線を私の後方に飛ばしたが、すぐにいつものくえない笑顔に戻って首を振った。


「いーや。なんでもないよ」


ん???


なんだったんだろうか?


「ほら、さっさと歩くよ、瑞希ちゃん」

「え?ちょっ、待ってくださいよ沖田さん!そもそも後ろあんまり付いてきてないですよ!?」

「自動自得じゃない?」


うわぁ、鬼畜だこの人。

まぁその通りだけどさ。


ああ、そうだ。

早く帰って晴明君に色々と報告しないと。


死人みたいな顔でゆっくりと後をついてくる新八君たちを尻目に、私は帰路を急いだーーーーーーーーーーーーーーー。



********************



【安倍晴明】


ーーー歴史が、変わった。


……歴史の改変は最大の禁忌のはず。


けれど。


瑞希さんはそれをいともたやすく変えてしまった。


………………………………。


………………………………。


……いや、ちがう。


必ず、歴史はねじれた部分を修正しようとするはず。


そうなれば、瑞希さんが助けた人物も……きっと……。


ーーー歴史は、変えられない。


たとえ変えても、なんらかの形で、結末を合わせようとする。


歴史の帳尻合わせ。


ーーーけれど。


もしかしたら。


もしかしたらーーーーーー?


ーーーその改変は、認められるのかもしれない。


ならば。


できるだけ、あなたの思い描く改変ができるように。


……あなたの心が晴れる限りは。


あなたの思うようにお手伝いすることにしましょう。



********************



【???】


……歴史が……変わった……!?


そんな簡単に歴史が変わるなんて……。


「大阪力士乱闘事件」は、「あのこと」に直接関係があるものじゃないのに……!!


いったい、どうやって……!?


それとも。


それこそが「正しい運命」だと言うの……!?


わからない。


わからないわ……。


けれど。


これで証明はできた。


桜庭瑞希ならば(・・・・・・・)、歴史を変えることができる。


変えられた歴史こそ(・・・・・・・・・)が正しい歴史(・・・・・・)なのだから……。


歴史は、「未来」を優先するもの。


その「未来」が、確かな「存在」として確定されている以上、その「未来」こそが歴史を作る……。


そう。


あなたという存在そのものが、歴史の改変を「正当」なことに変えているのだと思うわ桜庭瑞希ーーーーーーーーーーー。


ひょっとしたら。


あなたをこの時代に飛ばしたのはーーーーーーーーーーーー。


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