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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第六章 歴史における試練
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第51話 斎藤さん、ギャップ萌え?

「……そこで何をしている」

「!?」


声がした方に視線を滑らせるとそこには無表情をほんのわずかに顰めた斎藤さんがいた。


「何って、女の子を口説いてるに決まってるじゃないか」

「俺には嫌がっているように見えるが?」

「あーあ。興ざめなこと言うなよ、(はじめ)


私から体を離し、肩をすくめる原田さん。


「まぁいいや。話はまた今度かな、瑞希?」

「なっ……」


さ、斎藤さんの前で……!!


慌てて斎藤さんの方を見たが、いつもと変わらない無表情で拍子抜けしてしまう。


なぜに?


「……ふーん、そういうことか」


ポツリと顔を伏せた原田さんが何やら呟いた気がしたが、すぐにこちらを向くと硬直している私へウィンクを飛ばしてきた。


「……お前……桜庭は彼女(・・)ではないぞ」


ーーー彼女?


斎藤さんの、私には意味のわからないその言葉に、原田さんは一瞬顔を強張らせたが、すぐにいつもの艶っぽい笑みに戻すと、


「じゃあバイバイ、瑞希。また今度❤︎」


と気障っぽく言うと手をひらひらと振って去っていった。


な、なんなんだあの人は…!!


人をからかってるにしても、趣味が悪すぎるっ!!


いや、それよりも今は……。


「……桜庭」

「はいぃ!?」


しまった!!

返事しちゃったよってかバレてるし!


「……何かの任務か?」

「へっ?」

「その格好。さっき、土方さんたちが慌てたようにどこかへ行ったから、そういうことかと」

「あっ……そ、そうなんです!!潜入調査なんですよ!」


そうか、土方さんたちはもう気づいてたんだ。


というか、女だとばれてなかった!!ヨカッタヨカッタ。


……うん、良かったヨ。


「なるほど。それで女装か」

「あ、はい、そうなんですよー。やっぱり、似合わないですよねぇ。沖田さんにがっつりと色気ない宣言されましたし」

「……そんなことはない」

「へ?」


今、なんと?


「……その山吹の着物、似合っている。綺麗だ」

「っ!?!?!?」


なっ……!?!?!?


いつも通りの無表情な斎藤さんの心情までわからない。


というよりも、その心情を図るよりも前に、斎藤さんはクルリと私から背を向けると、


「……ああ、()にこんなこと言っても嫌か。すまん」

「えっ!?そ、そんなことないです!ありがとうございます、斎藤さん!!」


斎藤さんの感想は素直に嬉しかったですよ!


「……そうか」


こちらをチラの見てわずかに微笑む斎藤さん。


おお!!

斎藤さんが表情を出した!!

レアだよこれ!!

ちょっと萌えるかも!!

これぞギャップ萌え!!


ちょっぴりアイドルオタクな私はミーハー心のままにそんなことを思った。


「そろそろ戻れ。また変な輩に絡まれないとも限らないからな」

「あ、はい、ありがとうございました、斎藤さん!」


ぺこりと頭を下げて礼を言い、私はさっきの部屋まで戻った。



********************



【斎藤一】


……原田の奴……。

桜庭が女だと気づいたか……。


ーーーもう見えなくなった山吹色。


いつもの袴姿だと少年のように見える桜庭も、女の着物を着て見違えるようだった。


褒めてやると本当に嬉しそうに笑った。


まったく、そんなんじゃあ、女だって他の奴にもバレるぞ?


ーーークルクルとよく表情が変わる、他の女とはどこか変わった少女。


何か嬉しいことや楽しいことがあるとパッと輝くようにその顔に浮かぶ笑顔は目が離せなくなるような魅力がある。


大丈夫だ、桜庭。


俺は、どんな時でもお前の味方でいる。


なぜなら俺は。


お前を……。



……好いているのだから。



********************



【原田左之助】


まさかあの場に彼が現れるとは思わなかったなぁ。


あの様子だと、彼、どうやら瑞希が女の子だって、気付いてるみたいだったし。

その上でさも気づいていないように装ってるってことか。



ところで瑞希が女の子だってこと、いったい一の他に誰が知ってるんだろうか?


あの子を連れてきたっていう土方さんと総司が知らないはずはないよね。



『……お前……桜庭は彼女ではないぞ』



……わかってるさ、そんなこと。


別に、俺は瑞希をあの娘の代わりにしようなんておもってないから。


そもそも、瑞希とあの娘じゃあ、全然違うんだよ。


ーーー瑞希はあの娘と違って素直だ。


あの娘は、もういない。


だって。


ーーーあの娘は俺から逃げちゃったんだから。



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