第50話 原田さんにバレる!?
【桜庭瑞希】
「ダメですっ、夢野さんっ!!」
こ、この声は……。
「今の声……晴明君ですよねっ!?」
「そうだね……。何かあったみたいだ行こう」
「はい!」
一体何があったの、晴明君っーーーーー!?
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「何があったの、桔梗く……っ!?夢野さん!?」
部屋の中には、血まみれの男の人と、そして晴明君に抱かれて事切れている夢野さんがいた。
「うそ……。そんな……」
なんで、夢野さんが。
「……ごめんなさい、瑞希さん……。夢野さんを、助けられませんでした……」
わずかに涙の溜まった紫の瞳が夢野さんが右手に持った小刀を向く。
「自分で首を……?」
「はい。……犯人は夢野さんでした。それを悔やんで……。僕が追い詰めてしまったのかもしれません……」
「そ、そんなこと……っ!!」
ない、と続けようとしたのを制し、晴明君はゆっくりと首を振った。
「……とにかく、瑞希ちゃん、土方さんたちを呼んできて」
「!!はいっ、わかりました!」
そうだった。
はやく土方さんたちに知らせないと。
私は部屋を飛び出し、土方さんたちがいる部屋へと走り出した。
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【沖田総司】
「……瑞希さんを遠ざけたということは、僕に、聞きたいことがあるのでしょう?」
「……知っているくせに」
瑞希ちゃんは動転していて気づかなかったみたいだけど、傷口から見て、どう考えても……。
「どうして殺したの?彼女が望んだから?」
「……ええ、そうですよ」
「それで、その娘を救ったつもり?」
「いいえ。そんなわけ、ないじゃないですか」
晴明君の顔に自嘲の笑みが浮かぶ。
ーーーその瞳の端には、涙すら浮かんでいた。
「救えなかった結果がこれですよ」
「それで、君はその罪を背負うと?」
「はい」
迷いなく頷く過去から来た少年。
その笑みはひどく歪だった。
「……僕が言うことじゃないとは思うけど……そういう君の歪んだ『優しさ』は、いつか必ず君自身を壊すよ?」
「そんなことは自分でもわかっていますからご心配なく。それよりも、僕はあなたの方が心配です」
紫色の瞳を細め、晴明君は全てを見透かすように言った。
「あなたの方こそ、その『闇』、早めに取り除かなければ、確実にあなたは呑み込まれる」
「……なんのこと?」
わけがわからない。
「闇」?
そんなもの、あるわけないじゃないか。
「自覚がないのはより重症ですね」
「……わけのわからないことばっかり言ってると斬るよ?」
何故だかわからないのに無性にイラつく。
彼の言葉ひどく不快だった。
「どうぞ?ご自由に」
「……ああ、そっか」
君はそういう人だったっけね。
「まぁいいよ。どうせその犯人ちゃんは僕が斬る予定だったわけだし。土方さんに報告する必要もないでしょ。君も、瑞希ちゃんには知られたかないはずだし」
「……それはそれで構いませんけれどね」
「はぁ?そんなことしたら、彼女に嫌われるよ?僕が口出すことじゃないけどさ」
「……別に、それでも構わないと申し上げているんですよ」
自嘲の笑み。
相変わらず、わけのわからない奴。
タッタッタッタ
「総司、小鳥遊」
「あ、土方さん。早かったですね。瑞希ちゃんは?」
「あ?知らん。俺はここの店主に言われてきただけだ」
「それじゃあ入れ違いになったみたいですねぇ」
「……来るときすれ違わなかったが……」
「あちゃー道に迷ったんでしょうねぇ。さすが生粋のお馬鹿さん」
本当に、君は馬鹿だね、瑞希ちゃん。
はやく帰っておいで。
僕の機嫌が悪くなる前にさ★
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【桜庭瑞希】
「んーんーーー?」
こ、れ、は。
「道に迷った?」
いや、室内で?
マジデスカ。
「ど、どうしよう……」
早く土方さんに知らせないといけないのに。
……夢野さん……。
助けられなかった……。
視界が歪みそうになるのを必死でこらえ、ぎゅっと手のひらを握りしめた。
「……瑞希?」
「ほえっ?」
……い、いやな予感。
後ろを振り向くと。
そこには。
「は、原田さん……?」
「ああ、やっぱり瑞希だ。そんな格好で、いったい何してるんだい?」
や、ヤバイ人に出会っちゃった……。
「ひ、ヒトチガイデハナイデスカ」
「何で片言なの?それに、ここの芸妓だったら京言葉だし、そもそも今さっき俺の名前呼んだじゃない?」
「ぐっ……」
嘘つくの下手だなぁっ、私っ!!
もっと上手くやれなかったんかいっ!!
「……そっちこそ、なんでいるんですか」
「そりゃあもちろん、ここは島原だから❤︎」
「……」
「うんうん、その汚物を見る眼差し……。ゾクゾクするよ❤︎」
「……死んでください」
なんなんだよこのマゾ野郎。
「それにしても驚いたなぁ。瑞希が、やっぱり女の子だったなんて」
「え」
やっぱり?
女の子?
「ち、違いますよ!!これは、土方さんから命令されて!潜入捜査ですっ!!女装ですっ!!」
まずい……!!
この人に女だとバレるなんて……!!
「嘘だね。だって……」
「っ!?」
原田さんの手が伸び、私は避ける間も無く壁を背にして追い詰められてしまった。
か、壁ドン……!?
だよねぇ!?
か、顔がっ!!
原田さんの顔が近いっ!!
こうしてみると、本当によう整ってる顔だ。
赤みがかった茶の瞳にじっと見つめられると、体から力が抜けるような感じがする。
ぬ、ぬぉ……。
何ピンチだっていうのにトキめいてるんだっ!?
アホかーいっ!!
「……顔が赤いよ、瑞希?」
「っ……、な、何を」
「ちなみにね、俺は初めて会った時から、瑞希が女の子だって、気づいてたよ?」
「なっ!?」
なんですと!?
「男女じゃあ、体つきが違うから。俺なら、女の子を男だなんて、絶対に間違えたりしない」
「……ず、随分と知ったようなことを言うんですね」
「もちろん。俺は大人だから」
「っ!!」
直感的に意味を理解し、ほおに集まる熱。
「ふふっ。この格好だと、ますます可愛いね、瑞希?」
「か、可愛い……」
「ねぇ、このまま……」
ーーー刹那。
「……そこで何をしている」
「!?」




