第48話 とっても可憐な晴明君
ーーー京都島原、揚屋の一室にて。
「く、苦しい……。い、息ができないっ……」
私は女装……もとい、元の姿に戻っただけではあるのだが、
「我慢しいや。これでも緩くしてるんよ?」
「う、嘘っ!?」
信じられない。
着物ってこんなに息苦しいものだったなんて。
もう二度と着たくない!!
現在、私は私が女であることを島原の芸妓さんの1人……夢野さんに明かし、着物の着付けをしてもらっているのである。
もちろん、私が女であることは秘密にすると約束してもらった。
「できた〜?」
「あ、はい!沖田さん、どうぞ!」
「うわぁ、色気の『い』の字もないね」
「う、うるっさいですよ」
どーせ私は色気のないお子様ですよ。
「ま、その格好してれば少しは女に見えるんじゃない?」
「えっ……?」
沖田さんが褒めてくれてる……?
「僕がよく遊んであげてる近所の女の子と同じぐらいに♪」
「子供と同程度ってことですか!?」
「そうだね♪」
く、くそぅ。
ぐうの音も出ない……。
ああ、もう!
悪かったですね!!
私は万年幼児体型ですよ、どうせ!!
と、その時。
スパンッ
「み、瑞希っ!!」
「ちょっ、新八君!?」
慌てたように部屋の襖を開けて入ってきた新八君は血相を変えて私の名前を呼んだ。
「どうしたの?騒がしい。君は確か、桔梗君のところにいたはずだよね?」
「そ、総司もいたのか……って、それどころじゃねえっ!!そうなんだよっ!!き、桔梗がっ!!」
「えっ、桔梗君が!?」
もしや、また倒れたとかっ!?
私は着物の裾を引っ掴むと開かれた襖をぶちあけ、走り出したーーーーーーー。
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スパンッ
「桔梗君っ!?どうかし、た………」
…………………………………。
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「な、ん……」
うそ、でしょ?
「き、桔梗、君、だよ……ねぇ?」
ーーー驚くほど華奢で色白の体を包む深い紫と青の豪奢な着物。
伏せられた桔梗色の瞳を覆うまつ毛は長いせいで顔に影を落としている。
「っ……」
着物えりものから覗く白いうなじに、短さを誤魔化すために結い上げられた白銀に髪が僅かにかかっててゾクリとするほどに艶めかしい。
「瑞希君、どうなって……っ!?」
そんな晴明君を見て、流石の沖田さんも唖然としたように両目をまん丸に見開いた。
ーーーいつも飄々とした態度の沖田さんにはものすごく珍しい反応でレアものだったが、今の私にそんなことを気にしている余裕はなかった。
後からやってきた新八君も、一度見ているはずなのに目を丸くしている。
「……あの」
「はひ!?」
晴明君の困ったような声に、びくっと肩を震わせて直立する。
「……あまり、凝視しないでください」
「ご、ごめんっ!!あんまりにも綺麗だったから、ついっ!!」
「……綺麗、は、どちらかというと女性への褒め言葉ですよ、瑞希さん……」
しょんぼりと肩を落とし、ちょっと涙目になるその様は女の私の目から見ても可憐で守ってあげたくなるような儚さがあった。
ーーーこれは、もはや女として負けているとか、そんな次元ではない。
「おい、どうした?」
「何かあったの?」
と、騒ぎを聞きつけた土方さん、山南さんがその部屋にやってきて、中にいた晴明君を見て同じように硬直している。
「これは……すごいな」
一足早く冷静さを取り戻したらしい山南さんが苦笑気味につぶやく。
「……ないな」
土方さんがちらと私の方を見てもう一度晴明君に視線を戻してぽつりと言う
って、おい、ちょっと待て!!
今「ないな」って言ったよねぇ!?
いや、わかってたけどさ!!
余裕で負けてるって!
でもそれ言葉にする必要ないよねぇ!?
「瑞希君も似合っているよ」
「山南さん……」
優しい山南さんが私の女装姿を見てそう言ってくれる。
やっぱりいい人だ……。
「ふん。二人とも準備はできたな?」
「あ、大丈夫です!」
「……はい」
「口調でバレるから、極力喋んなよ?他の芸妓らには話つけてあるから安心しろ」
おー。
なんか、捜査っぽくなってきた!!
頑張って犯人見つけるぞーーー!!
「……うう。これだから女装はしたくなかったんです……」
わたしのテンションの高さに反してやはり涙目で肩を落とす晴明君。
ーーーまぁ、事実女な私はともかく、男の晴明君にとって、女装姿を褒められるのは嬉しくなかろう。
ドンマイ、晴明君。
でもやっぱり可愛いよ。
私より全然。
……。
……男に負ける私って……。
活動報告を書いてみました。
今後そちらの方で小話を掲載するかもしないので、そちらの方もどうぞよろしくお願いします♪




