第23話 お買い物with沖田さん
「それじゃあまず、君の日用品と刀を買いに行こうか、瑞希ちゃん? 」
……それにしても、教官この人なんだよねー。
「そうあからさまに嫌そうな顔、しないでくれるかな、瑞希君? 」
沖田さんはそう言ってにっこりと笑みを浮かべるが、目が全く笑っていない。
私が女であることは他の隊士には秘密なので沖田さんも私の呼び名を変えてくれている。
……それはいい。それはいいのだが。
「どうして日用品? 刀はわかりますけど」
「いや、だって君、何にも持ってないじゃん」
「……それもそうですね。それならせ……桔梗君も誘いましょう」
私と同じ境遇の晴明君も私と同じように何も持っていないはずだ。
「彼は大丈夫だよ。だから早く行こ? 」
「へ? いや、大丈夫じゃな……」
「大丈夫だよ」
私の言葉を遮るようにして断言し、沖田さんは有無を言わせない口調と笑顔で言った。
「君は、自分のことを心配したほうがいいよ? 桔梗君は、君と違って自分のことは自分でできる。君みたいなお子様とは違うんだよ」
「なっ……」
意地悪な笑顔の沖田さんを下から睨みつけるも本人はどこ吹く風、効果なし。
「ほら、日が暮れる前にさっさと行くよ、瑞希君! 」
結局、私は沖田さんと街へ買い物に行くことになった。
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「うわぁ……すごい人ですねぇ……」
私がちゃんと街に出たのは今日が初めてである。
京都の街は予想以上の賑わいで、見たこともない店が並んでいる。
「あまり離れないで。逸れるよ? 」
「あ、はい」
急ぎ足で沖田さんの後を追いかける。
「着いたよ」
「ここって……? 」
「呉服屋。入るよ」
沖田さんに促されるままに 入ってみると、店内には色とりどりの衣服が売られていた。
「好きなの、5、6着選んで」
「え、どれでもいいです」
ぶっちゃけ、それが本心である。別に、サイズがあって、着られるならなんでも良い、というのが私のセオリーである。
「君、本当に女? ……まぁいいや。そっちの方が好都合だし」
失礼極まりないことをいう沖田さん。
女に見えなくて悪かったですね。
それにしても、言葉の後になんかつぶやいてたけどなんて言ってたんだろう?
ま、いいか。
「ああ、お客様、本日はどのよ……」
「これとあれと、そこの二つと、その向かいのやつ、包んで」
店の人の言葉をあっさりとスルーしてスパスパと決めていく沖田さん。
店の人、かわいそう。
「しょ、承知いたしました……」
店の人が引きつった笑顔で沖田さんが指差した商品を包んでいく。
「沖田さん、試着はしなくていいんですか?サイズ……じゃなかった、寸法? が合わないんじゃ……」
「大丈夫。君の着物の大きさなんて、こないだ袴の着付け教えた時に大体わかったから」
「えっ」
いやいや、沖田さんあなた変態ですか。
それって、私のスリーサイズを知っちゃったってこと?
「大丈夫。手を出す気も起きないほど貧相な体つきだったってことが見た目以上にわかったから」
「ひ、貧相で悪かったですねぇっ!! 」
どーせ私は貧乳の幼児体型ですよっ!!
なまじ美形なおかげで無駄にいい笑顔なのが余計に腹立つわっ!!
「いつまでふてくされた顔してるの?残念な顔がさらに残念だよ」
「誰が残念な顔ですか! 余計なお世話っ!! 」
この人は人の心えぐることしかできないのか!?
「さて、次は刀だね」
刀かぁ。
ちょっと楽しみなんだよね。
ほら、平成じゃあ、銃刀法違反になっちゃうけど、こっちの時代ならノープロブレム!!
着物より刀買う方が楽しみなんて、沖田さんの言う通り女として終わってる感否めないけど、楽しみなものは仕方ない。
「ここだよ」
「おー、ここですか」
「……着物より楽しそうだね」
ほっとけ。どーせ私は女らしくないですよ。
呆れ顔の沖田さんを無視して店内に入る。
「うわぁーーー!! 」
店中、刀、刀、刀。
これは圧巻だなぁ。
「ほら、好きなの選びなよ」
「あ、はい!! 」
おお、どれにしようかなぁ。
目に付いた刀を一つ一つとって軽く振ってみる。
……うーん。なんか違うんだよなぁ。
そもそも、私が得意なフェンシングは、日本の剣術じゃない。
当たり前ながら、ここに売られているのは日本刀で、「峰打」って言葉があるぐらいなので刃は片側にしか付いていない。
そういうのは、あまりフェンシングの使い方的にも適しているわけじゃないんだよなぁ。
「気にいる刀、ないの? 」
「え、えっと……はい。でもやっぱり、ここで選ばないとダメなんですよね? 」
「うーん、そういうわけじゃないけど、ここがこの辺りでは一番いい刀を売ってるから、他のところへ行っても無駄だと思うんだよね」
「じゃあここで選ぶしかないですか……」
「ここの刀は嫌? 」
「嫌、というか、私の剣術には合わないんです」
「ふぇんしんぐってやつ? 」
「そうです」
「……合わないと思うような刀を使うのはあまりお勧めしない。そう思ってしまった時点で、その刀は君にとって鈍になるから」
「そうなんですか? 」
イヤイヤ使っちゃダメってことか。
「ねぇ君。確か、ふぇんしんぐは異国の剣術って言ってたよね? 」
「あ、はい、そうです」
「使う刀が違うの? 」
「違います。フェンシングは基本、『突き』が重要なので、そのためには刀みたいに刃が片面しかついてないやつじゃなくて、両側に付いてるものがいいんです」
「なるほどね。それじゃあ……大阪に行ってみる? 」
「大阪?」
「今日はもう無理だけどね。あそこなら、異国の刀も売ってるかも」
「いきたいです!! 」
「じゃあ明日行こう」
「わーい!! 」
おお、沖田さんがいい人に見える!!
大阪かぁ。
いいのがあるといいな☆




