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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第二章 壬生浪士組
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第19話 手合わせ、願います!

日の傾きかけたその日の夕方。


私は近藤さんと土方さん両名が見守る中、剣豪、沖田総司と手合わせをすることになった。



ってか、今日やるんかいっ!!

早急だね!!


よしもうこうなったらヤケクソだよっ!?



「竹刀と木刀どっちがいい?」

「えーっと、じゃあ軽い方で」

「ん、じゃあ竹刀だね」


私は笑顔の沖田さんから受け取った竹刀を右手に持つ。


土方さんの合図で沖田さんが構えを取る。


私は剣道をやったことなんてないので彼の構えはなんとなく奇妙に思えた。

フェンシングでは、両手で剣を持たないからね。


沖田さんに習い、私もフェンシングの構えを取る。


それを見た沖田さんが興味深そうに目を見張った。


「面白い構えだねぇ」

「まぁ、剣道とフェンシングじゃあ根本から違いますから」


事実、フェンシングは駆け引きというか、剣の先でつつきあうタイプの試合をする。

が、多分、今日の手合わせはそうはいかない。


もともと、我流な部分が強い私個人の剣術を使うのが先決だろう。


「両者、始め!!」


試合開始の合図がかかる。


私は右手の竹刀をジッと沖田さんの方に向け、隙を伺う。



……クッ、さすがは剣豪沖田総司。

全く隙がない。


「そっちから来ないなら……僕から行くよ♪」


黒い笑顔を浮かべた沖田さんの言葉と同時に彼の鋭い剣先が私に迫る。


私はそれを素早く避け、瞬時に突きを入れる。


「おっ、と!」


沖田さんはその突きをバックステップでかわし、私から距離を取る。

その顔には珍しく驚きがあった。


「ふ〜ん。結構やるじゃん」

「そりゃどーも」


フェンシングのもっともな特徴はその速さだ。

剣が軽い分、剣道とかよりも速く剣技を繰り出せる。

そして、私は自分の速さには自信があった。



それからしばらく打ち合いが続く。

沖田さんの剣を素早く避け、たまに弾きながら合間を縫うように攻撃を仕掛ける。

沖田さんの剣は一つ一つが重いため、なるべく避けるようにしているものの、徐々に追い詰められているのがわかった。


「そろそろ終わりにしようかな」


そう言って沖田さんは微笑み、さっきとは異なる構えをとった。



ーーーこれは!!


ーーーもしかして、かの有名な三段突きの構えか……!?


「これで終わりだよ♪」


その言葉と同時に鋭い突きが私を襲う。



ーーー速いっ!!


ーーーだけど速さならっ!!



私は上体を反らし、沖田さんの三段突きを躱す。


「っ!?」


沖田さんの目が見開かれる。


その隙をつき、私はトンっと地面を蹴り、空中で一回転し、体を捻る。



「はぁっ!!」


捻りを元に戻す反動を利用し、背後から素早く突きを入れる。



ーーーが。



「っ!!」



スパンッ


右手の竹刀に衝撃がやってくる。

その衝撃で私はバランスを崩し地面に落下して尻餅をつく。


「僕の勝ちだよ、瑞希ちゃん」


沖田さんはそんな私に竹刀を突きつけ、にっこりと笑った。


「両者、そこまで!!」


土方さんの合図で沖田さんが私から竹刀を退け、片手を差し出した。


「どうぞ?」

「……ありがとうございます」


その手を頼りに立ち上がり、礼を言う。



ーーーああ、やっぱり負けちゃったか。


いい線まで行ったと思ったんだけどなぁ。


さすがに沖田さん、めちゃくちゃ強かったです。



「素晴らしいね、桜庭君」


近づいてきた近藤さんが感じたようにそう言った。


「これは認めてもいいんじゃないか、歳。総司の三段突きを躱すとは、なかなか見所がある」

「僕も賛成です。瑞希ちゃん、結構強いですよ。最後のあれはさすがの僕も焦りました」


沖田さんがにこやかに同調する。

土方さんは苦虫を噛み潰したような表情で私を見下ろした。


「……とりあえずは認めてやる。くれぐれも他の隊士に女だとバレるなよ?」

「はい!!」



こうして私は壬生浪士組の隊士になった。


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