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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十一章 大捜索!?新選組VS“ 金毛九尾 ”!!
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第145話 仲間

【桜庭瑞希】


「もう……左之のバカ。女たらし」


どーせ他の女の子にも手当たり次第にああいうの、やってるんでしょうが。


ほんと、あの人がもし美形じゃなかったらただの変態だっての。


神様もほんっとに不公平っ!!


「……ハル、どうなったかな」


総司たちのことももちろん心配だけど、あの3人に関しては命に別状はないらしい。

けど、ハルは……。


「ううん。後悔してたって仕方ない。そうわかったハズでしょ」


今、私がハルにできることなんて何一つない。


それでも、祈ることくらいはできるはずだ。


ーーーと、その時。


ダダダダダッ


「瑞希!! 」


ーーー慌しい足音とともに、私の名前を大声で呼ぶ声が廊下中に響き渡った。


「新八君……! 」

「よぅ、瑞希。おはようさん」

「うん、おはよう。起きてたんだね」


ーーーいつも朝遅い彼が起きているなんて、随分と珍しいことがあるものだ。


「まぁな。っつーか、寝てらんねぇだろ、普通。……総司たちはしばらく巡察できねぇだろーし、ハルだってあんなことになっちまったし、無事な身の俺らが頑張んなきゃダメだろ」

「そう、だね」


ーーー新八君らしい理由だ。


ある意味で、この新選組で一番「強い」のは彼なのかもしれない。


「ああ、それよりも。……瑞希、お前、怪我は大丈夫か? 」

「え? 」


怪我?


「おいおい、お前、昨日左腕怪我してただろ!? 忘れたのかよ!? 」

「あ」

「いや、あって……」

「わ、忘れてたわけじゃないよ! ……ただちょっと、考えてなかっただけ」

「本当かよ……」

「ほ、本当だもん」


ツッと視線をそらす私を新八君は呆れたように見下ろした。


「……まぁとにかくだ。昨日はいろいろあったし、お前は無理するなよ、瑞希。いつでも頼っていいんだからな? 」

「……うん。ありがと。でも、私はもう大丈夫だよ、新八君」


そう言って新八君の顔をまっすぐに見上げると、彼は少し驚いたように目を見張ったが、すぐにいつもの爽やかスマイルを浮かべて頷いた。


「そっか。そりゃあよかった。……ところでさ、瑞希」

「ん? なに? 」

「……一つ、聞きたいことがあるんだけどな……」


新八君の顔が、困ったような、何かを言い出しづらいような、そんな奇妙なものに変わる。


ーーーう〜ん、なんだろ?


「……あの、さ。お前って……その、土方さんと、できてるのか? 」

「は? 」


ーーー今、なんておっしゃいました?


「はぁ!? 私と土方さんができてる!? んなわけあるか!! 」


そもそも、私は今は男なんだよ!?


そんな私と土方さんができてるわけないでしょうが!!


「な・ん・で! そう思ったの!? 」

「い、いや……昨日、土方さんが泣きじゃくってるお前を、ガラにもなく抱きしめたりしてたから……」

「違うよっ!! 土方さんに男色の趣味なんてないから!! 」


あれは、なんというか、子供をあやしてる気分でのことだろうし……。


「土方さんはって……まさかお前は」

「違うっ!! 」

「で、デスヨネー」


よっぽど鬼気迫る勢いだったのだろう。

私の剣幕に、たじろいだように後ずさる新八君。


確かに私は女で、レズなわけじゃないけど、この格好で男色と思われるのは心外だ!


「私も土方さんも、そんな趣味なんてないから! そこんとこ忘れないでよね! 」

「あ、ああ」

「それじゃあ私はハルのところに行かなきゃだから! 」

「お、おう……」


そう、一方的にまくし立て、私はこの話を強制的に終わらせ、身を翻した。


「……なんか、今日の瑞希、スゲー剣幕だったな」


ーーー最後に、そんな、新八君の惚けたようなつぶやきが背後で聞こえた……気がした。



********************



「失礼します」


おそらく、山南さんか誰かがいるだろうと思い、そう一言声をかけてから襖を開ける。


「ああ、おはよう、瑞希君」

「おはようございます、山南さん」


ベコリと頭を下げて挨拶を返すと、予想通りの人物……山南さんが少し顔に疲れをにじませながらも彼らしい微笑を返してくれた。


「ハルの様子はどうですか? 」

「……残念ながら変わらずだよ」

「そうですか……」


チクリ、と胸が痛む。


それでも、これは私自身、ちゃんと受け入れなきゃならないことなんだと、私はすでに知っている。


「……何かあったのかい、瑞希君? 」

「え? 」


ーーーと、そんな山南さんの唐突な問いかけに思わず首を傾げて彼の顔を見返した。


「君がどこか、吹っ切れたような顔をしているから。何かいいことでもあったのかな?」

「……! 」


ーーーいいこと、か。


それらはみんな、確かに「いいこと」なのだろう。


原田さん……左之も、新八君も、そしてあの不思議な少女、芙蓉も、みんなさっきみたいに少なからず気にかけてくれていた。

それは、すごく幸せなことなんだと思う。


「……ここのみんなは、優しいですよね、なんだかんだ言って」

「ははっ、確かに君の言うとおりだ。彼らはとても仲間思いだよ。……もちろん、君もそうじゃないかい? 」


そう言って山南さんはいつもと同じ、穏やかで優しい笑みを浮かべた。


「……!! 」


ーーーそんな彼の表情に、私はなぜか、なんとも言えない懐かしさ(・・・・)を覚えたのだったーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



挿絵(By みてみん)

今回も火の玉狐様よりイラストをいただきました!

斎藤一(左)、桜庭瑞希(真ん中)、沖田総司(右)

です^ ^


夢見てスヤスヤしている瑞希ちゃんを2人がどちらの肩に寄せるかで睨み合っている…というイメージだそうです(^ ^)


確かに瑞希ならこんな感じの幸せそーな寝顔でしょう(笑)


あ、あと、活動報告を更新しました!


イラストに関するアンケートをしていますので、ご連絡お待ちしてます!

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