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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十一章 大捜索!?新選組VS“ 金毛九尾 ”!!
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第143話 原田さんの羽織

もう一週間近く経ってますが。


あけましておめでとうございまーす(^o^)/

「ん……」


ーーー意識が浮上していく。


瞼を開いた途端、刺すような明るい光が目に飛び込んでくる。


「……朝……? 」


障子の隙間から覗く光が、私の部屋全体を明るく照らしていて、眠ってから一晩たっていたことが分かった。


「ん? 」


座ったまま眠っていたせいか、痛む身体に鞭打って立ち上がりかけ、自分の体を覆うようにして、赤ワイン色の羽織がかけられているのに気がついた。


「これは……」


ーーー自分でかけた覚えはないし、そもそもこんな派手な羽織、私は持っていない。


「派手……あ」


この羽織の持ち主なら、一つ、心当たりがある。


「彼」はこういう派手な、特に赤を好んでいた。


「……原田さん」


私が眠っている間に来ていたのだろう。


「…お礼言いに行くついでに返しに行かなきゃ」


ーーーそして、伝えないといけない。


夢の中で見た、「芙蓉」と名乗る少女と約束したように。



********************



それから原田さんを見つけるまではさほど時間はかからなかった。


「原田さん」


私の声に、井戸の側に立っていた原田さんがゆっくりとこちらを振り返った。


「ああ、起きたんだね」

「はい。……これ、ありがとうございました」


羽織をさしだしながら頭を下げると、原田さんはクスリと笑って頷いた。


「どういたしまして。……それで?これを返すためだけに朝から俺を探していたのかな? 」

「……ほんと、原田さんって、なかなか鋭いこと言いますよね」

「俺は女の子のことには敏感なんだ」

「あーそうですか」


あいも変わらない色男っぷりで。


「私が今朝原田さんを探していたのは、あることを伝えるためです」

「……あること? 」


原田さんの顔が、その一言でほんの僅かに強張る。


それを内心不思議に思いながら、私はにっこりと笑いながら言った。


「私は、大丈夫ですよ」

「!! 」

「私、もう後悔するのはやめたんです。だから、昨日の失敗を後悔し続けるのはやめました」

「……」

「過去に起きたことはもう変わらない。だったら、これからどうすればいいかを考えたほうが、お得だと思ったんです」


「成長出来る機会をみすみす逃すのはもったいない」。


夢の中で出会った少女、芙蓉はそう言っていた。


「だから、私はもう大丈夫ですよ、原田さん」


ーーー後ろを向いてたって何も変わらない。


私はそれを、この時代で何度も学んできたことだ。


「……瑞希」

「はい……ってふぇ!? 」


ーーー今まで触れていた外気の冷たさが消える。


代わりに、私は暖かいものにぎゅっと抱きしめられていた。


「……かと思った」

「ちょっ、原田さ……え? 」

「……いなくなってしまうかと思った」

「!! 」

「もう、瑞希が新選組からいなくなってしまうかと思ったんだ」

「……っ、それは……。私が、新選組を辞めちゃうってことですか? 」


私の問いに、原田さんが小さく頷く。


ーーー心なしか、抱きしめる力が強まった気がした。


「俺は君を信用していないわけじゃない。むしろその逆だよ。君が強い子だってことは分かっている。だけど……瑞希はたとえ男装していたとしても女の子だ。だから、昨日のような思いをしたら、もう、さすがにここにはいたくないと、そう思うんじゃないかって、ね。だから俺は、さっき君が言いたいことがあると言った時……怖かった。君がいなくなるような気がしたから……」

「……」

「でも、よかった」


原田さんが、ゆっくりと手を離して私の顔を見下ろした。


「君が、いなくならないで、よかった」

「っ……」


ーーーこ、こんな顔っ……!!


反則だっ……!!


いつもと違って、弱々しい、まるで親と離れるのを嫌がる幼い子供みたいな微笑に、私は思わず息を呑むのだったーーーーーーーーーーーーー。


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