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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十一章 大捜索!?新選組VS“ 金毛九尾 ”!!
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第141話 芙蓉

【土方歳三】


「……」


ーーーあいつ……。


「思いつめた顔、してやがったな」


最初、何かに気がついたように、小鳥遊が倒れた時の状況を聞いてきて。


その後、顔を青ざめさせた。


「……心配かい、土方君? 」

「なっ、それは山南さん、あんたもだろ」

「あんた()ということは、君()心配しているんだね? 」

「……」


山南さんは口元に笑みを浮かべながら続けて言った。


「……確かに、彼は思いつめた顔をしていたようだけれど、彼ならば大丈夫だと私は思うよ」

「それは、あいつが強いから、か? 」

「それもある。けれど、それ以上に、彼は……いや、彼女は(・・・)、仲間に恵まれているからね」

「!! あんた……気づいてたのか」

「ははっ、やはり君は知っていたか。もちろん、最初から何と無くそうかなとは思っていたよ」


ーーー最初から、か。

さすが、というべきなのか、瑞希の隠し方を責めるべきなのか。


まぁ、大概は前者だろうな。


この人は俺が思った通り……いや、思っている以上に周りをよく見ている。


「あと、彼女が女の子だと知っているのはハル君はもちろん、沖田君、斎藤君、そして原田君、って所だろうね」

「って、斎藤と左之も知ってるのか!? 」

「おや、気づいていなかったのかい? 」

「……初耳だぞ、それ」


ーーーあいつら、気づいていやがったのか。


確かに、瑞希を妙に気にかけてるようだったが。


「……だが山南さん。仲間に恵まれているっていうのがいったい何に影響するんだ?」


ーーー俺の疑問に、山南さんは意味深な笑みを浮かべた。


「それはもちろん、瑞希君を案じているのは私たちだけではない、ということだよ」



********************



【桜庭瑞希】


「……」


ーーー未だ、夜が明けていないせいで、襖を締め切り、灯を点していない私の部屋には両手すら見えないほどの暗闇が満たしている。


そんな、何もなくなってしまったような世界で、私は息を殺して泣いていた。


「うっ……っ、ひっく……」


ーーー私は、いったい何が悲しいのだろう?


ハルや総司たちに傷を負わせたこと?


それとも後悔から?


それとも……。


……………………………。


…………………………………………。



********************



「あれ……? 」


ここは、どこだろうか?

さっきまで、自分の部屋にいたはずなのに。


人の気配がしない、和風で大きな平屋のお屋敷。

私が立っていたのはそのお屋敷の縁側に接した庭で、それもまた、和風で趣のある庭園だった。


ーーー知らない場所。

けれど、何故か懐かしいような、そんな気がする場所。


それに、つい最近(・・・・)、私はここにきたような気がする。

のに、思い出せない。


ここは、いったいどこなんだろう。


「ああ、珍しい。こんなところにお客さんが来るなんて。迷い込んでしまったのかな? 」

「えっ」


無人のはずのその場所で、突然かけられた声に、私はハッとして声の方ーーー屋敷の縁側へ、視線を向けた。


「あ……」


ーーーそこには、私と同い年ほどの、おそろしく可憐な少女がいた。


一つに緩く束ねられた、立ったら地面につくのではないかと思えるほどに長い艶やかな黒髪。


小首を傾げてこちらを見つめる瞳は空よりも澄んだ瑠璃色だ。


顔立ちは精巧に作られた日本人形のように整っていて、絶世の美少女といっても過言ではない。

色白で儚げな雰囲気はあるが、不思議と頼りなさは感じず、それよりむしろ凛とした意志の強さが見え隠れしているような、そんな少女だった。


……一度もあったことなどないはずの少女。

それにもかかわらず、この屋敷以上に懐かしさを感じるのは何故だろうか。


いや、それよりも。


この子はいったい誰で、どこから現れたのだろう?

気配なんてまるでしなかったのに。


まさか、幽霊……?


「嫌だなぁ。(わたし)は幽霊なんかじゃないよ? 」

「えっ!? 」


な、なんで私が心の中で考えていることがわかったんだ!?


この人、人の心が読めるの!?


「違うよ〜」

「っ、ま、また!? 」


心の中と会話が成り立ってるよ、この人っ!!

やっぱり幽れ……。


「だーかーらー。妾は幽霊なんかじゃないってば! ほんと、酷いなぁ。あなたの顔、分かりやすいからわかっただけなのにさぁ」

「わ、分かりやすい……」

「うん♪ ぜーんぶ顔に書いてあるよ☆ 」

「う……」


まさか、初対面の人にまでそんなこと言われるなんて。


「ま、立ち話もなんだし、こっちに座りなよ」

「は、はぁ……」


初対面とは思えない気安さに、思わず言う通り近づいた私を見上げ、その幽霊さん(仮)は無邪気な笑みを浮かべた。


「うんうん、素直なのはいいことだよね! 」

「はぁ、どうも」

「うーん、つれない返事だなぁ。ま、いっか」

「……その、それで……あの」

「んー?何かなぁ? 」

「あなたは、いったい……? 」


幽霊じゃないと言うのなら、いったいなんなんだ?


「妾が誰かって? ふふっ、そうだなぁ……」


幽霊さん(仮)はクスリ、と意味深な笑みを浮かべて言った。


「妾の名前は芙蓉(ふよう)。よろしくね、瑞希」


活動報告更新しました(2015.12.26)


クリスマス小話があるのでよろしければ見ていってください^ ^

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