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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十一章 大捜索!?新選組VS“ 金毛九尾 ”!!
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第135話 暗闇の死闘

【安倍晴明】


ーーー月が雲に隠れていく。

それは、不吉の印。


「はぁ……」


未だ、体の調子は戻らない。

そのせいで、今はほとんどの術が使えない。


「……『身代わり』を念のため作っておいてよかった」


すでに、「繋がり」はできている。

今回渡したものは、まえに山南さんに渡したものよりもずっと使用者の負担を減らしている。


たとえ、「身代わり」を使っても、倒れることはない。


そして。


「身代わり」が傷を受ければ、すぐに……。


あれ(・・)が本当はどういうものなのか、瑞希さんたちに知られたら怒られてしまいそうですね」


あの人型は、文字通りの「身代わり」。


つまり、受けた傷は誰かが(・・・)身代わりになって受けなければならない。


山南さんの時は、受けた傷は彼自身に小さく細切れにして課せられるようにした。


けれど、今回急遽作ったのは……。


「それでも、僕にできるのはこれくらいしかありませんから」


ーーーせめて、僕の剣が皆のように、「正しい」ものだったならば。


「僕の剣は、もはや『人」のものですらない……」


ーーーあの、幼き日(・・・)の「業」が組み込まれた剣。

それはあまりに醜く、壮絶な刃になってしまった。


「……そろそろ部屋に戻りましょうか」


ーーー月は未だ雲によって隠されている。


不吉な予感が消えることはない。


けれども、今の僕に、できることなど何もない。


ーーーそう、自身に言い聞かせ、立ち上がりかけた、その時だった。


「っーーーーーーーーー!!?? 」


ーーー全身を襲った、今まで感じたことのない激痛に僕は声にならない悲鳴をあげた。



********************



ーーー三人が一斉に、「金毛九尾」へ向け、走り出す。



最初に「金毛九尾」の元へたどり着いたのは真っ先に飛び出した総司だった。


「はあっ!! 」


構えてすらいない「金毛九尾」へ、総司の剣撃が襲いかかる。


ーーーが。


「っ!? 」

「ふーん。まぁまぁ、ってところだね、おにーさん」


総司の、私ならば必死に踏ん張らねばすぐに吹っ飛ばされるような剣撃を、「金毛九尾」はいともたやすく、しかも片手で受け止めた。


ーーーそれどころか。


「……けど、所詮はボクの敵じゃないよねぇ♪ 」


キンッ!!


「っ!! 」


ドカンッ!!


ーーー手加減なしなはずの総司が、「金毛九尾」の片手だけの剣になすすべもなく、一瞬で押し負け、その剣撃で勢いよく壁へと叩きつけられた。


「っぐっ!! 」


叩きつけられた衝撃の大きさは、崩れかけた壁がよく表している。


「総司っ!? 」

「沖田っ!! 」


今まで見たことがないほどにあっさりと振り飛ばされた総司の元へ、2人の意識が一瞬逸れる。


ーーーその一瞬は、敵にとって十分すぎる時間だった。


「余所見なんて……随分と余裕だねぇ? 」

「っ!! 」

「あっ!! 」


2人はハッとして眼前に迫ってきた剣撃を受け止めようとするが、


「なにっ!? 」


ーーー2人で受け止めたにもかかわらず、まるで羽虫でも払うかのように飛ばされ、総司と同じように壁へと叩きつけられる。


「みんなっ!! 」

「瑞希君は下がって!! 僕らはハル君のあれ(・・)があったから問題ないっ!! 」


慌てて駆け寄ろうとした私に、総司のいつになく切迫した声が飛んでくる。


立ち上がった総司の表情からは、余裕は消えていた。


ーーーハルの、ってことは、あの「身代わり」……!!


あの人型の「身代わり」は、致命傷や、それに準ずる怪我など、本人が身の危険を感じた時、発動すると言っていた。


もし、三人がそれをすでに使ってしまったってことは、つまり、さっきの一撃は致命傷に近い傷だということだ。


ーーーそんなことって……次さっきみたいのを受けたらみんなが死ぬ……!!


あの「身代わり」の効力は一度しかないのだから!!


視界の端で、


「瑞希っ!! あなたは屯所に戻ってくださいっ!! 」

「平助君!? 」

「瑞希は瑞希の役目に徹してくださいっ!! 」

「あ……」


ーーーそうだ。

私の役目は、こんなところでぼーっとしてることじゃない。


屯所に帰って、援軍を呼ばないとっ!!


「あれぇ?なんで君たち、動けるの?さっきの力で叩きつけられたら、加減したから死にはしないけど動けないはずなのに。ま、いっか。またやればいいんだし。それよりね、瑞希おにぃさん? 」


「金毛九尾」の視線がこちらを向く。


「おにぃさんは、安心してていいよ☆ボク、おにぃさんには手を出さないから☆」

「え? 」

「そもそも、ボクの仕事はいらない屑のお掃除だもん。君たちと争うつもりなんて、なかったし♪ ま、そこの三人は僕に刀向けたし、いろいろ見られたからお仕置きしなきゃだけど♪ それも瑞希おにぃさんに免じて殺さないでおいてあげる♪ ……でもね、瑞希おにぃさん」


ーーーゾクリ、と、背筋が泡立つ。


「金毛九尾」はそんな私を見ながら歌うように言った。


「援軍なんて、呼ばれると無駄に始末する人間増えるから困るんだよね。だからさ、おにぃさん。……逃げたら、こいつら殺すよ? 」

「っ!! 」


ーーーダメだ。


こいつは、やると言ったら確実にやる。


もし、私がここから離れれば。


ーーーみんな、殺される。


「さっきから……ペラペラとうるさいよっ!!」


こちらに視線を向けたせいで生まれた「金毛九尾」の隙を見逃さず、総司が斬りかかる。


それに瞬時に対応し、「金毛九尾」の刀が総司に迫る。


が。


「同じ手を二度もくらうわけないでしょ!! 」


さっきの一撃で、「金毛九尾」の剣撃を受け止めることは自殺行為と判断したらしい総司はそれを素早くかわす。


「!! 」


その行動に、驚いた様子の「金毛九尾」へ、体勢を立て直した一と平助君らの刀が斬りかかった。



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