第13話 私はあなたが嫌いです
【桜庭瑞希】
別に、誰からか教わったわけではない。
だけど、「未来を変える」ということが、絶対にあってはいけないと、私はなんとなくわかっていた。
それでも、私は同時に思ってしまったのだ。
彼らの未来を変えたい、と。
そう、まるで、誰かに仕組まれたように。
「……沖田さんは、私がそれを知っていたら、どうするのですか?」
彼も同じなのだろうか、と、私は嫌に冷めた頭でそう思った。
そして、それと同時に、沖田さんがどう答えるのかもなんとなくわかってしまった。
たぶん。
この人なら、きっと。
「そんなの、決まってるよ」
沖田さんが、私を見下ろしながら冷ややかに笑う。
ああらやっぱり、と、心の中で小さなため息をつく。
ーーー沖田さんは私の予想通りの表情で、予想通りの言葉を言った。
「僕は、君を利用するよ。僕たちの、壬生浪士組のために」
「……たとえ、土方さんたちを騙しても、ですか?」
「そうだよ、瑞希ちゃん」
ああ、この人は。
「……私、あなたが嫌いです」
「うん、だろうねぇ」
沖田さんは笑う。
彼の笑顔は全部、「嘘」だ。
「一応言っておきますよ、沖田さん。私が知っているのは、あくまで大きな事件で、私は確かに歴史は好きでしたけど、それほどこの時代が好きだったわけじゃないんで、詳しいことは知りませんし、実のところ、歴史の中でも私は年号を覚えるのだけは苦手だったので、それがいつ起こるのかもわからないですからね」
「それで十分だよ、瑞希ちゃん。あくまで瑞希ちゃんは、僕が聞いた時だけ、未来のことを話してくれればいいから」
「それはつまり、私が今、全部を話す必要はないってことですか?」
「うん、そういうこと。だって、もし、ここで君が全部話しちゃったら、僕は君は用済みってことで斬っちゃうかもしれないでしょ?で、それを瑞希ちゃんがわかってたとしたら、絶対に本当のことは言わないよねぇ?」
「……ほんと、嫌味なほどに抜かりないですね」
「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくよ」
私は、この人のこと、嫌いだ。
改めて、そう思う。
「それにさぁ、瑞希ちゃん。ここで僕が、これから起こる未来をぜーんぶ知っちゃったら……つまらないじゃない?」
「……」
「あ、あと、君が未来から来たこと、ほかの人に言ったらダメだよ?もちろん、そこの彼が『安倍晴明』だってことも」
「そんなこと、言われなくてもわかってます」
「うんうん、よかった♪取引成立だね♪」
沖田さんはそう上機嫌に言い、くるりと背を向けた。
「それじゃあ僕は行くね。君も、その風邪さっさと治しちゃってね。盗み聞きの晴明君?」
「え……」
え、聞かれてたの!?
急いで振り向くと、薄く目を開いた晴明君が苦笑を浮かべているのが見えた。
「……くえない、人ですね……」
「僕の提案した取引になんの口も挟まない君も大概だと思うよ♪」
クスリ、と、沖田さんの端正な顔に真っ黒な笑みが広がる。
「ま、とにかく、他にも色々と聞きたいことはあるけど、今日はここまで!あとは君の体調が戻ったら聞くことにするよ。今じゃあ満足に尋問もできゃしない」
ーーー晴明君はそれに苦笑を返し、静かに目を閉じたーーーーー。




