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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十章 始まりの「分岐点」
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第119話 岩城升屋事件(2)

「はあっ、はあっ……!!」


ーーーーーー走る。


「はっ……!!」


ーーーーーーもっとはやく。


「っ……ま、に、あえっ!!」


ーーーーーーはやくっ!!!!



ーーーーーーもっともっとはやくっ!!!!!


「見えたよ瑞希ちゃんっ!!あれが『岩城升屋』だっ!! 」

「!!」


ーーー総司が指差す先に見えたのは、一軒の呉服屋ーーーーーーーーーー。


戸は薙ぎ倒され、喧騒響き渡る店内へ、勢いよく飛び込む。


「山南さんっ!?土方さんっ!?」

「なっ、瑞希!?それにお前らも……!?」


ちょうど目の前の浪士を斬ったらしき土方さんが飛び込んできた私たちを見て目を丸くした。


「加勢に来ましたっ!!山南さんは!?」

「あの人なら奥にいる!!お前は……」

「っ、わかりました!!」

「あ、おい!?」

「瑞希っ!?」


土方さんたちの制止の声を振り切り、私は無我夢中で単身、店の奥へと突っ込んだ。


「はあっ!!」


ザシュ


「ぎゃああああっ!!」


ーーー向かってくる浪士たちを、振り抜いたレイピアで斬っていく。


「邪魔っ!!」


ザシュ


「どけっ!!」


ブシャァアアアッ


それらを全て、一撃で斬る。


着ていた袴が返り血で染まるのも厭わず、私は進む。


ーーー決めたから。


私は、大切な仲間を守るために剣を振るうと!!


「私の邪魔をするなぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


ザシュッ!!!!


何人目かわからない浪士を斬り捨て、前方に視線を向けると。


そこにはーーーーーーーーーーー。



「ーーー山南さんっ!!」


数メートル先。


ーーー目の前の浪士を斬り捨てた山南さんが私の声に、驚いたように振り返る。


「瑞希君!?」

「はいっ!!加勢に来ましたっ!!」


言いながら、山南さんの腕を確認する。


ーーーよかった!!


まだ怪我してない!!


間に合ったんだ!!


「今、そっちに行きますっ!!」


ーーーあと一歩で、山南さんに手が届く。



ーーーその時だった。



「っ!?」


ーーー山南さんの後方。


「ーーーっ!!!!」


ーーーその「影」は。


「ーーーんでっ!!」


ーーーゆっくりと刀を振りかぶって。


「っーーーーーーーあっ!!!!!」


ーーーそれに気づいた山南さんが振り返って……。


「ーーーーーーーーーーー!!!!!」


ーーーあ……。


ーーーーマニアワナイ。


ーーー無慈悲にも。



「いやぁあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」



ーーー私自身の悲鳴とともに、山南さんに向けて、刀が振り下ろされたーーーーーーーーーーーーー。


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