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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第十章 始まりの「分岐点」
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第115話 金の少女は知っている

「来たわね」

「っ!?」


ーーー気配もなく、背後からかけられた幼い声に、腰にあった刀を振り向きざまに抜き、構える。


「……随分と物騒なこと」

「!!」


ーーーそう言ってクスリと微笑んだのは、声同様、12、3ほどの幼い風体の少女だった。


「……君、何者」


ーーー胸の高さほどの黄金の髪。


ーーー髪と同じ、金色の瞳。


顔の作りは、まるで人形のように整っていてーーーーーーー。


そして、それはーーーーーーーーーーーーーーーーー。


この世のものとは思えないほどに美しく。


あの白髪の少年を見ているかのようでーーーーーーーーーーーーーー。


ーーーいや。


それ以上に。


ーーー僕は、この少女を知っている……?


「君は一体何者?」

「……答えない、といえば?」

「そんなの、決まってるじゃないか」


刀をまっすぐに向け、少女を見据える。


「君を、斬る」


ーーー僕の言葉に、少女は楽しむような笑みを浮かべた。


「斬る、ね。あなたに私が斬れるかしら?」

「……」


タンッ


ヒュン


「っ!?」

「無駄よ」


ーーー少女は僕の刀を軽々と避けて言った。


「っ……」


ーーー僕の剣が、完全に見切られている。


もちろん、僕の剣についてこられるのは今まででも何人かはいた。


一君や、少し拙いけど、瑞希ちゃんも。


でも。


「くっ……」


でもこの少女は違う。


強い、というのではない。


「なんで……」


なぜ、君は……。


「どうして君は僕の剣を知っているの(・・・・・・)っ!!??」


少女は口元に弧を描いて笑った。


ーーーこれは、「経験」。


この子は、僕の剣を全て知っている。


癖も、技も、その一瞬一瞬を、熟知している。


その経験は、何度も僕と撃ちあわなければ身につかないもの。


僕はもちろん、この少女とは手合わせをしたことはおろか、会ったことすらないというのに。


「君は、一体誰なんだっ!?」

「……そう、ね」


ーーー全てを見透かしたような金の瞳がほんの少しだけ寂しげに揺れる。


あなた(・・・)は、私を知らない。でも、私は知っている」

「私の名前は」



「私の名前は、道満。芦屋道満」



********************



【???】


ーーー沖田総司。


私は、あなたを知っている。


あなたも、私を知っている、はずだった。


私があなたの剣を知っているのは当然のこと。


私は何度も繰り返した。


あなたと、あなたの新撰組で。


「あの人」の未来を変えるために。


「君は、一体誰なんだっ!?」

「……そう、ね」


ーーーあなたは(・・・・)私を知ることができなかった。


桜庭瑞希と、晴明が、あなたのそばへ来てしまったから。


ーーーこの「時象」のあなたは、私を知らない。


あなた(・・・)は、私を知らない。でも、私は知っている」


ーーー何度も、出会いと別れを繰り返したから。


「私の名前は」


でも、この名を告げるのは、初めてだわ。


晴明にもらった、この名を。


「私の名前は、道満。芦屋道満」


ーーーさぁ、進みましょう?


「始まりの分岐点」から、先へ。


突然ですが。


活動報告を更新しました^ ^


おまけ小話メインキャラのアンケートやってます。


よろしければ見ていってください。

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