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時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第一章 時代を超えたタイムスリップ
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第12話 沖田さんの取引

【沖田総司】



「取、引……?」


僕の言葉に、自称未来から来た女の子……瑞希ちゃんは目をまん丸に見開いた。


あはは、面白い顔だなぁ。


でもまぁ、きっと僕の提案は彼女にとって予想外だったんだろうねぇ。


ちなみに、僕も自分の考えにちょっと驚いてるんだよね。

僕がこんな提案するなんて、そうそうないことだよ、瑞希ちゃん。

それでも、僕はこうすると決めたから。


なんでかって聞かれても困るけど、原因は多分瑞希ちゃんのさっきの目だろうな。


土方さんに信じてくれって言ってた時と同じ、まっすぐな目。



あんな目ができる子なんて、そんなにいないんだよ、瑞希ちゃん?


僕は、どうやら君に興味を持ったみたいだ。



********************



【桜庭瑞希】



「取、引……?」


ごめん、沖田さん。

失礼かもしれないけどさ……。




……ひょっとしてあなた、結構馬鹿ですか?


「あ、今君、失礼なこと考えてるでしょ?」

「え、なんでわかったんですか!?」

「へぇ?適当に言っただけなんだけど、そうなんだ?」

「……」


……訂正。

やっぱりこいつはただのドS野郎だ。


「ま、いいや。取引の内容について話そうか?君も知りたいでしょ?」

「……取引って、私たちがこの時代の人間じゃないことを土方さんたちには秘密にしてくれるってことですか?」

「場合によっては、ね」

「……どうしてそんなことを?」

「どうして、って?」

「だから、そんなことをして、沖田さんに何の得があるっていうんですか?」


私だって、特別新選組が好きなわけではないから詳しいわけじゃないが、「沖田総司」という人物は攘夷とか、そういう思想に左右されない、ただ上司に従うってイメージがあったはず。


しかし沖田さんは私の内心をしってか知らずか、ヘラリと腹の読めない笑顔を向けてきた。


「もちろん、僕の得になる提案してるんだよ?当たり前でしょ。そもそも、得にもならないようなら斬ってるし」

「っ……」


冗談ともつかない口調に、背筋がゾッと泡立つのを感じた。


ーーー沖田さんの考えていることがわからない。

わからないことが、怖い。


「大丈夫、今は斬るつもりないから」


ニコニコと、まるで明日の天気でも話すようなその口ぶりに、改めて感じた。



この人は、危険だ。



「それで、取引の内容はなんなんですか?」

「ああうん、まだ説明してなかったね」


緊張感のないセリフにイラっとするのをなんとか抑えながら私は沖田さんを見上げた。

私の目を見て沖田さんがなぜか嬉しそうなのが少し気になったのだが。


「瑞希ちゃんってさ、未来から来たんだよね?」

「そう、ですけど」


おい、いつの間に私のこと名前呼びしてるんだというツッコミを飲み込み、軽く頷く。

沖田さんの顔に真っ黒な笑みが広がる。


「それじゃあさ、瑞希ちゃんは、僕たちの未来を、知ってるのかなぁ?」

「っ……!?」


その言葉に、私は心臓がドキリと跳ねるのを感じた。


それすらも見透かしたように、沖田さんは笑みを崩さず私の顔を覗き込んでくる。



「っ……」



そう、私は見透かされた気がしたのだ。



私が、幕末にタイムスリップしたと知った時。

そして、そこで遠くない未来、悲劇をたどる運命にある新選組に出会った時。



強く、その未来を変えたい(・・・・・・・・・)と、思ってしまったことを。



ーーーーーこれは定められた、いわば運命。



私の脳裏で、そう、誰かの声が聞こえた気がしたーーーーーーーー。


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