表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時廻奇譚 〜あなたに捧ぐ、恋物語〜  作者: 日ノ宮九条
第九章 新たな出会いはバトルの幕開け!?
105/177

第99話 また会いましょう

【桜庭瑞希】


ーーー突撃後、僅か30分ほどで敵のアジトを制圧した私たちは倒した奴らを柱に縛り付けて奉行所の人たちに明け渡し、捕らえられていた女の人たちを救出した。


ちなみに、この時私のレイピアも無事見つけることができたのだった。


「あ、ありがとうございますっ!!」


ーーー無事救出できた、山崎さんの知り合いの恋人さんは感極まった様子で、涙ながらに何度もお礼を言ってくれたので、なんだかこちらの方が恥ずかしくなってしまったのはご愛嬌だ。


沖田さんも、私との約束を守ってくれたようで、誰も殺していないとのことで、これもまた込みでホッとしている。


「二人も、協力してくれてどうもありがとう。とても感謝している」


山崎さんはそう言って柔らかい微笑みを浮かべた。


「いえいえ、お役に立てて良かったです!!」


ほんと、無事にみんなを助けられて良かったよ。


「さて、と。それじゃあそろそろ帰るよ瑞希君?」

「あ、はい」

「これから帰ったら色々とお説教もしなきゃならないし?」

「え」


目だけが全く笑ってない笑顔の沖田さんは、いつまでも健在だった。


おお、今日は寝れそうにない。


誰か助けて。


「ほら、さっさと行くよ」

「ああ〜」


そんな私の願いは虚しく、ズルズルと引きずられるようにして私は屯所へと連行されていく。


そんな私を見て、山崎さんが何か言いたげな表情を見せるが、それが言葉になることはなく、代わりに私は笑顔で彼へ手を振り、叫んだ。


また会いましょう(・・・・・・・・)ねっ!!山崎さんっ!!」


ーーー遠目だからよくわからなかったが、彼が大きく目を見開いたのがわかった。


ーーーそう。


彼とはまた会える。


だって、彼はすぐに新選組のメンバーになるのだから。


だから、そのときは一緒にお仕事しましょうねっ、山崎さん!!



********************



【山崎丞】


「……」


ーーー「また会いましょうね」、か。


京の町は、広いように見えて、とても狭い。

彼らとまた出会うのは簡単だろう。


けれど、なぜだろうか?


ーーーこんな、根拠のない予感がするのは。


彼らとは、また「別の機会で会える」。


そんな風に思ってしまうのは。


ーーーその時。


「……え……」


ーーー見慣れない、金の蝶(・・・)が目の前を横切った。


ハッとして周りを見渡してみるが、それはまるでまやかしか何かのように消えていた。


「今のは……っ……」


ズキ、と、頭の奥が疼く。


何か、触れてはいけないものに触れてしまったような……。


「……気のせい、か」


ーーーどうせ、きっと夢でも見ていたのだろう。


金の蝶など、いるわけがない。


色々あったせいで疲れているのかもしれない。


私は小さく溜息をつき、一度彼らが去っていった方に視線を走らせ、その場を後にした。



********************



【沖田総司】


「……で?」


ーーー僕の目の前にいるのは、恐る恐るこちらを見上げてくる瑞希ちゃんである。


「ご、ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでしたっ!!」


ズシャッと、地面にひれ伏す勢いで土下座してくる瑞希ちゃんを、少し離れた所でそんな様子を見つめている白髪の彼……晴明君は苦笑を浮かべた。


ちなみに、瑞希ちゃんの居場所をこっそり僕に教えたのは彼だ。


「まぁまぁ。無事だったことですし、良いではありませんか」

「せ、晴明君……」


仏でも見たかのように瞳を輝かせる瑞希ちゃん。


君、本当に反省してるのかなぁ?


それに……。


なんか、気にくわない。


そういえば、あの山崎とかっていう優男、あいつも瑞希ちゃんのことが気になってみたいだし。


ほんと、君っていらない敵を増やしてくれるよねぇ無自覚に。


僕が、瑞希ちゃんが行方不明になって、どれだけ心配したか、わかってるの?


「……ちょっとこっちきて、瑞希ちゃん」

「は、はい?」


不思議そうに首をかしげたものの、恐々と近づいてくる瑞希ちゃん。


ちらり、と、晴明君に視線をやり。


僕は。



「っ!?」


ーーー瑞希ちゃんの体を抱き寄せた。


「……心配、かけさせないで」

「!!」


びくり、と肩が揺れる。

瑞希ちゃんのことだから、真っ赤になっているであろう顔を見られないのが残念だと思う。


さっきまで剣を振るっていた体は、しかし、予想以上に小さくて華奢だった。


「……心配だった。君がいなくなって。……もう二度と、何も言わずにいなくならないで」


ーーーもし、君が消えてしまったら。


ーーーもし、君が誰かに殺されでもしたら。


僕はきっと、この世の全てを憎んでしまうから。


ーーー失うのが怖い。


そう、これほど強く思ったのは初めてだった。


やっぱり僕は。


どうしようもないくらい、君に恋をしているみたいだね、瑞希ちゃん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ