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*関係ない*〈C3/40~〉

 シーゼ視点です。

 子供の頃、わたしは他の子たちとは違うことを自覚した。

 わたし自身がというよりも、環境が違った。父がいなかったのだ。


 それがおかしなことだと気付いたのは、五歳くらいの時だ。

 それまでは、むしろ、優しくてきれいなお母さんがいて、なんの不自由もなかったから、疑問すら持たなかった。誰かに言われるまで、気付かなかったのだ。

 最初からいないなんて変だと、一緒に遊んでいた子供の一人に言われ、わたしは帰ってすぐ、何の疑問も差し挟まず、母に率直に尋ねた。


「ねえねえ、どうしてうちにはお父さんがいないの?」


 その途端、母はいつかこの質問が来るだろうと身構えていたはずなのに、やっぱりうろたえていた。


「さ、さあ、なんでかしらね」


 もう少し、マシな言い訳はなかったのかと、今になっても思う。まあ、かわいらしい母だった。

 そんな母を見てしまうと、もういいやと思って、それ以上尋ねなかった。



 けれど、そんなかわいい母は、ある日、ぱたりと倒れ、そのまま眠りについた。

 それは、わたしがようやく十六歳になった、雪の舞い散る日だった。


 わたしは、働き詰めの母に早く楽をさせてあげたくて、必死に剣を習っていた。女の子なのに、なんで剣術なんて、と母は困ったような顔をしていたけれど、わたしはただ、母を守りたい、強くなりたいと願っていた。


 そうして、母の葬儀が執り行われた後、墓地でいつまでも墓標を眺めていたわたしに、一人の中年男性が声をかけて来た。


「君、いつまでそうしているつもりだね?」


 わたしは緩慢にそちらに顔を向けた。

 仕立てのよい黒いコートを着込んで、ベルベット帽を目深に被っている。裕福そうな人だと、それだけを思った。吐き出す息がお互いに白い。


「いつまでにしようか、まだ考えていません」


 まだ受け止めきれない現実に、頭が上手く働かない。死んだ魚のような目をしていただろうと思う。


「そうか」


 男性は、短くそうつぶやくと、わたしの隣に並び、母の眠る墓標を見遣った。かと思うと、すぐにまたこちらに目を向ける。


「シュゼマリア」


 急に名を呼ばれた。何故、この男性がわたしの名前を知っているのか、そんなこと、今はどうでもよかった。


「……なんでしょうか?」


 愛想を振り撒くゆとりもなく、ただ会話が億劫で仕方がなかった。早く切り上げて去ってほしいと願ったから、返事をしただけだ。

 わたしにとって、母は生活の中心で、世界だった。だから今、わたしの世界は崩壊したのだ。

 放っておいてほしかった。


「そう名付けたのは、私だ。知っていたか?」

「え?」

「お前は、私の娘だ」


 崩壊した世界が、更に蹂躙されたような気分だった。

 わたしが娘だというのなら、この人はわたしの父だということになる。

 けれど、驚くほどに関心が持てなかった。ああ、他人だ。他人と同じだ。

 そんな風に感じただけだった。


「そう、ですか」


 言うことはそれだけだった。

 この時、父が何を思ったのか、わたしにはわからない。


 ただ、父はじっとわたしの目を見つめた。だから、わたしも父の目を見つめることとなる。

 そうして、気が付いた。わたしの瞳の色が、誰に似ているのかを。

 初めて会ったというのに、血の繋がりを感じてしまう、この感覚にぞっとした。

 それが伝わったのか、父は小さく笑った。


「あれによく似ている。――お前の母を放っておいた私を恨んでいるか?」


 わたしは、かぶりを振った。

 恨んでなんかいない。父はそんなにも、わたしの世界に色濃く存在していなかった。

 今日会わなければ、そのままだったはずだ。


「いいえ。わたしは母と一緒に暮らせて幸せでしたから」


 父はすぐに答えなかった。

 しばらくして、ぽつりと言う。


「けれど、もうお前は独りだ。私と来なさい」


 当たり前のように、独りで生きて行こうと思っていた。

 それが、今、目の前に差し出された手がある。

 けれど、彼は父という、他人のような存在だ。

 家族になど、なれるのだろうか。

 共に過ごした歳月がないから、そう感じてしまうのだろうか。

 そんな溝は、すぐに埋まるのだろうか。


 わからない。

 わからないなら、一度はこの手を取るべきなのだろうか。

 後悔などしないように。


 正直に言って、ものは試しだという軽い気持ちで、私はその手を取った。

 それが、どういうことなのか、深く考えることはしなかった。父が、わたしの父であること以外、わたしは彼のことを何も知らなかったのだ。




 父は、貴族だった。

 わたしと母の貧しい暮らしからは想像もできなかった、父の身分。

 けれど、豪華絢爛な屋敷の中は、驚くほどに居心地が悪かった。貴族の令嬢として育ったわけではないわたしは、ドレスなんて着たこともない。質素なワンピースに身を包んでいた私は、使用人の人たちにでさえ、戸惑ったような目を向けられる。


 血縁と言えるはずの存在ともなると、その目はもっと冷え冷えとわたしを見下していた。

 歳の離れた兄が二人いた。そのことを、ここに来て初めて知った。

 けれど、彼らはわたしを妹だとは思わないようだ。ただ、眉を顰める。

 わたしの母が、父にとってどういう存在であったのか、これが数年前だったなら、わからなかっただろう。けれど、この時の私はそこまで幼くなかった。わたしにとって大好きな母でも、彼らにとっては自分たちの母を苦しめた存在なのだ。

 それでもわたしは、わたしだけは母の味方でいたい。


 死んでしまっても尚、あばずれ、女狐――口汚く罵られる母。

 わたしはそれが悲しくて仕方がなかった。父は、一度も否定してくれなかった。

 父が何故、わたしを連れ帰ったのか、理由がまるでわからない。特別な関心を向けてくれているようには感じなかった。ただ、仕方がないから――そんな理由だったのではないかと思う。


 ルイレイルの町の領主である父は、やはり忙しい人だった。けれど、忙しいからわたしと向き合ってくれなかったわけではない。母と似ているわたしが、次第に疎ましくなったのではないだろうか。

 何か、馬鹿らしくなってしまった。

 わたしの家族は母だけであればよかった。それがわかっただけ、ここへ来た価値があったと思うことにする。

 わたしは制止する声を無視し、父の書斎の扉を堂々と開いた。父はわたしの行動に眉根を寄せた。


「……断りもなく、なんだ?」


 父は手にしていた封書を机の上に下ろした。わたしは、窮屈なドレスや装いにはうんざりしていた。だから、父の前で結い上げた髪をばさりと解く。


「お別れを言いに来ました」

「別れ?」


 そうつぶやいた途端、父の口の端が持ち上がった。


「独りで生きて行くと? 子供のお前が?」

「はい」


 力強くうなずいた。それを、父は一蹴する。


「馬鹿なことを。お前は、容姿に恵まれている。もう少し行儀作法を身に付ければ、良家へ嫁ぐこともできるはずだ」


 それこそ、笑ってしまうような発言だった。


「それで、誰が幸せになれますか?」

「……なんだと?」

「少なくとも、わたしじゃありません」


 その途端、父は顔を歪めた。その表情は、ぞっとするほどに冷たかった。


「お前は、本当に母親にそっくりだな。あいつも私が与えるものに満足せず、勝手に姿を消して――」


 不思議なことに、その瞬間、少しだけ父のことがわかった。

 父は、母のことが本当に好きだったのだと。執着するからこそ、憎らしかった。

 よく似たわたしに戸惑うこともあるのだと。

 わかったけれど、お互いにそばにいることもつらい。

 わたしはただ、そっと笑った。


「ごめんなさい。それから、ありがとうございました」


 もっと大人になったら、父の気持ちが理解できる日が来るのだろうか。

 そうして、わたしはこのルイレイルの屋敷を去った。

 やはり、動きやすい服がいい。大きく伸びをして、それはそれは晴れやかな気持ちだった。




 さて、そうして、わたしが人よりも自信を持って秀でていると言えることはなんだろうか。

 それで生計を立てて行くしかないのだから。

 しばらく考え、思い付くのはやはり剣術しかなかった。天国の母が嘆きそうだが。

 とりあえず、わたしは王都へ向かうことにした。

 王都なら、人がたくさんいる。私を雇ってくれるような人もいるかも知れない。

 後で考えてみるとかなり短絡的な思考だが、この時は真剣にそう思った。



 道で会うた人に、傭兵の斡旋所を尋ねてみた。二番街の道のりを丁寧に教えてくれたその人に礼を言い、わたしはそこへ向かった。多分、なるようになる。そんな風に考えていたのだから、恐ろしい。

 そこは、食堂のようだった。カラン、とドアベルを鳴らして中に入ると、ひげを蓄えたマスターは愛想よく迎え入れてくれた。


「いらっしゃい」


 食事をしに来たと思われたようだったけれど、そうじゃない。

 わたしはマスターに向かい、はっきりと言った。


「わたし、剣術で食べて行きたいの。ここへ来れば仕事をもらえるって聞いたんだけど?」


 マスターは、ぽかんと口を開けていた。そんな私たちのやり取りを聞いていた客たちが、いっせいに声を上げて笑い出す。わたしは、何故笑われてしまったのかがまるでわからなかった。


「何がおかしいの?」


 ムッとして尋ね返すと、その中の一人の、革の胸当てをした男が答えた。二十代半ばくらいだろうか。髪を短く刈り上げている。


「お嬢ちゃん、あんた、自分が何を言ったかわかってるのか?」

「当たり前でしょ」

「剣一本で生きて行く? そんな細腕で? 誰が女子供を雇ってくれるって?」


 ドッと周囲が沸く。笑われても、引けなかった。もう、決めたことだ。


「やってみなくちゃわからないでしょ。大体、見たこともないくせに、わたしが弱いって決め付けないでよ」


 すると、男はにやりと笑った。


「よし、じゃあ俺と手合わせしてみるか? 勝てたら、仕事を紹介してもらえるよう、手伝ってやる」


 その言葉に、わたしは先が明るくなった気がして嬉しかった。まだ、勝てるかどうかもわからないのに、この時は勝てるような気がしていた。


「うん、今すぐでもいいよ」


 と、わたしは腰のエストックに触れた。その細身の剣を眺めると、男は笑う。


「じゃあ、来いよ」


 その時、食堂の奥から、涼やかな声が飛んだ。


「俺が代わる」

「え?」


 声がした方に顔を向けると、そこにいたのは声と同様に涼やかな容姿をした少年だった。

 すらりとした体に、青みがかった艶のある短髪と同色の瞳。整った顔立ちには品があり、大衆食堂に不釣合いな育ちのよさがあった。

 けれど、背には剣を携えている。どうやら、剣士のようだ。

 このきれいな少年は、顔立ちに似合わない意地の悪い表情をわたしに向けた。


「俺が手合わせしてやる」

「ええ?」


 その途端、あの男は慌てていた。


「え? ユイトル自ら……? いや、俺で十分だから。な?」


 ユイトルというのが彼の名前らしい。ユイトルは男に冷ややかな目線を向ける。


「なんだ? 不満か?」


 年齢も随分下だと思われるのに、ユイトルは尊大だった。目上の者に対する礼儀がない。

 見た目はきれいだけれど、駄目な子だな、と思った。それが最初の印象だった。


「いや、そいうわけじゃ……」


 男も、何故そんなに彼を恐れているのかがわからない。


「なら、いいな?」


 そう言われると、何も言い返せないようだった。納得したユイトルは、わたしに向かって言う。


「来い」


 促されるまま、わたしは彼の後ろを歩き、空き地へと到着した。草すら生えていないまっさらなその場所で、ユイトルはわたしと距離を取る。

 わたしは剣の柄を握り締めた。すると、ユイトルは大きくため息をつく。


「お前、実際に剣を交えてみないと、相手の力量もわからないのか?」

「え?」

「まあいい。わからないなら教えてやる」


 ユイトルが抜いた剣は、柄の部分が長い、やや細身の剣だった。両手でも片手でも、状況に応じて扱いを変えられるものだ。

 長さは、わたしのものと変わりない。

 けれど、素早さでかく乱して立ち回れば大丈夫だ。

 私も剣を抜き、構えた。ただ、その次の瞬間には剣を弾き飛ばされていたけれど。

 何が起こったのかもわからない。手の痺れがかすかに残っただけだ。

 ユイトルは呆然とするわたしを嘲笑い、剣を収めた。


「ほら、話にならない。お前はあいつにだって勝てなかったはずだ。負けた後、どうするつもりだった?」


 と、わたしの顔を覗き込む。わたしが泣くと思ったのだろうか。性格は悪そうだから、泣く顔が見たかったのかも知れない。

 ただ、この時のわたしは、ひどく――。


 ぐう。


 おなかがすいていた。


「…………」


 ユイトルが一瞬にして脱力した。


「お前……」

「やっぱり、おなかがすくと駄目。力出ないし、頭働かないし」


 今後のことを考え、節約していた。でも、ひもじい。


「満腹でも、常にお前の頭は働いていない気がする」


 結構、失礼なことを言われた。

 彼は大きく嘆息し、わたしの剣を拾って手渡す。


「戻るぞ」

「え? うん」


 ひもじいながらにいい匂いのする食堂に戻ると、マスターが心配そうにわたしとユイトルを見比べた。そんなマスターにも、ユイトルはえらそうだった。


「マスター、適当に食事を出してくれ」

「へ? あ、ああ」


 わたしがぽかんと口を開けていると、ユイトルはわたしを席に座らせ、その正面に座った。わたしは警戒した眼差しを向ける。


「お金、あんまり持ってないからね」

「払えなんて言っていない」

「じゃあ、どうするの?」

「俺が持つ。行き倒れられても寝覚めが悪いからな」


 そして、目の前においしそうなサフランの香りの漂うパエリアが運ばれて来た。貝類や海老、色々な具が目にも鮮やかだったけれど、それを楽しむ余裕もないくらい、わたしは空腹だった。


「いただきます!」


 ぱくぱくと、幸せを噛み締めながら食べた。ユイトルは食べるでもなく、呆れたようにわたしを見ていたけれど、どうでもよかった。

 すべて食べ終えた頃には、わたしのユイトルに対する印象は真逆のものとなっていた。

 性格悪いなんて思ってごめんなさい。すごくいい人でした。


「ありがとう、ごちそうさま」


 多分、満面の笑みだったと思う。それくらい、感謝していた。

 なのに、ユイトルは思い切りため息をついた。


「……この世間知らず」

「は?」

「お前、めちゃくちゃ騙されやすいだろ」

「え? どういうこと?」


 まさか、奢ってやるというのは嘘だったのだろうか、とわたしが焦っていると、ユイトルは自分の髪をくしゃりと乱した。


「そんなに簡単に、初対面のやつの言うことを信用するなよ。そんなんじゃ、すぐ男に騙されていいように扱われるぞ。馬鹿じゃないのか」


 馬鹿とか言われた。やっぱり、性格が悪いのは事実だった。

 呆然としていると、ユイトルはあっさりと席を立って行ってしまった。

 奢ってもらった手前、怒るに怒れない。こんなことなら食べるんじゃなかった。


 そうして、しばらくどうしたものかと考えていると、マスターが私に近付いて来た。


「君、ユイトルがここで――食堂の方で働かせてやってほしいって頼んで帰ったんだ。やる気があるなら、こちらは構わないけど」


 ここで働く。

 そうやって生活して行けるように、と。

 考えてもみなかったけれど、そういう生き方もあったんだな、と気付かされる。


「はい。よろしくお願いします!」


 次に会えたら、やっぱりちゃんとお礼を言おう。



 ただし、わたしとユイトルの大誤算は、わたしが思った以上に、給仕に向いていなかったことだろうか。料理をひっくり返し、皿を割り、よく物を壊した。料理のように繊細な物を扱うのは、必要以上に緊張してしまう。

 そうして、店で数日後に再会したユイトルは、マスターと同様に青筋を立てていた。


「お前なぁ……」

「お前じゃない。シーゼっていうの」


 わたしは落ち込みながらもそれだけ言った。そういえば、まだ名乗ってすらなかったのだ。

 ユイトルはまた嘆息する。そんな彼に、わたしは素直に謝った。


「ごめんね。せっかく紹介してくれたのに、迷惑ばっかりかけてる」

「本当にな」


 そんなことないよ、と言ってくれる人ではなかった。


「やっぱり、剣術の方が……」


 そう言ったら、にらまれた。

 そんなわたしたちに、マスターが近付いて来る。


「ユイトル、お前とは比べようもないかも知れないけど、シーゼはその年齢にしてみればなかなかいい動きをしていた。他の傭兵連中もほめてたよ。案外、そっちの方が向いてるのかも知れない」


 空腹じゃない時に、傭兵の人たちと手合わせをしてもらったりもしていた。わたしも、そちらの方が自分には向いていると思う。

 すると、ユイトルは冷ややかに言った。


「料理ひっくり返したり、皿割ったくらいなら死なないけれど、剣でしくじれば死ぬ。わかっててそう言うのか?」


 マスターは困ったように微笑んだ。


「だから、最初はなるべく強いやつと組ませるよ。例えば、お前みたいな」


 その途端、ユイトルはなんとも言えない複雑な表情になった。多分、迷惑だったのだろう。


「俺は、足手まといとは組まない」

「でも、放っておけないだろ? 放っておいたら、死ぬかも知れないし」

「ええ!」


 わたしの命を簡単に言わないでほしい。


「わたし、無理はしないよ。命は大事にする。ユイトルに迷惑もかけないようにする」


 ユイトルは諦めたようだった。ぼそりとつぶやく。


「ほんとに、寝覚めの悪い……」


 放っておいたら死にそうだから?



 確かに、ユイトルは奔放で、一度戦闘になるとわたしのことなんて気にしていないようだった。ただ、彼がいると仕事の成功率は高く、わたしは楽をさせてもらえた。それだけのことだ。格好良く守ってくれたわけではない。もちろん、そんな甘い期待はしていなかったけれど。


 ユイトルは強くて、誰からも一目置かれる有名人だった。

 ただ、その有名な理由が、彼自身とは関係のないことだった。

 父親が、大物なのだそうだ。

 だから、ユイトルが傲慢だろうと尊大だろうと、誰も言い返せないし、びくびくと腫れ物を扱うかのようだった。けれど、ユイトルはどうやらその立派な父親が苦手なようだ。


 そう、わたしとユイトルの共通点は、父親が苦手なこと。

 だから、分かり合えたのだろうか。

 誰が父親でも、関係ない。あなたはあなたで、わたしはわたし。


 そうして、わたしたちはお互いの心をさらけて寄り添う。

 分かり合えたつもりだった。

 けれど、届かなかった声があった。

 そうして、彼は戻らなかった。


 それでも、いつかまた会えると、わたしは信じた。

 その願いは、叶ったけれど、再び寄り添うことはなく――。


「ユイトルは変わった。自信家でやんちゃで、手がかかったけど――(C3/40より)」

 あの場面、手がかかったのはお前の方だ! と、ユイは心で叫んでいたことでしょう(笑)

 ユイ、まるで別人……。

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