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引き分け

作者: 町田克己

「あと一泊だけでも付き合え」 この取り付き点にテントを張って1週間、周りの岸壁を攀じ登る毎日だが、どのルートも岩が脆く上部は猛烈なヤブこぎ。爽快な岩登りを期待して来た相棒がもう帰りたいと言い出したのは無理も無いのだが、私は明後日登って来る他の仲間を待たねばならない。相棒はその山岳会の会員ではないので待っている義理は無いが、他のパーティーもいないこんな寂しい所で、私一人二泊も過ごさなければならないのか。


 「やっぱりこれから下るわ」 薄情な相棒に思わず「これから下るって、釜トンネルは夜になるな。バスは終わっているから歩いて通ることになるけど、子供の泣き声が聞こえるぞ。いい根性だ」と負け惜しみを一発。しかし、敵も然る者「お前こそ、ほかに誰もいないこんな所で二泊か。真夜中にテントの換気窓見たら、青白い顔がこっちを覗いていた、なんてことになったらどうする?」


 結局喧嘩別れして一人ぼっち。夕食や明日の準備などやることは直ぐ終わってしまい、夜は長い。それにしても夜の山の中は色々な音が聞こえる。カサカサ小動物が蠢く音は、まだ正体が解っているからよいが、人が歩き回るように聞こえる音もする。こんな夜遅く、この近辺で人が歩き回っているはずが無いのに、と、ともすると目が換気窓に行きそうになる。「あの野郎、余計なことを言いやがって」


 結局、窓を見ないよう固まったまま、まんじリとも出来ず、長い夜が明けた。朝食もそこそこに、食料買出しにかこつけて人のいる上高地へ飛ぶように下りて行った。と、そこに見たことのあるような奴がいるではないか。「おーい阿南。今頃こんな所で何やってるんだ」「町田か。お前の言った釜トンネルの幽霊の話を忘れられなくなり、怖くなって、結局旅館に泊まっちまった」


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