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Dear My Future  作者: 湯たぽん
第六章 予兆
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その3

「 そうか、モクレンも死んだか・・・残念だ。」

作戦終了後、集められた司令室で、ツゲは別人のように真っ青になった顔でシュロの報告を受けた。

目の下には大きなくまをつくり、涙のあとのようなすじも見てとれた。

初体験となるゴーストとの戦闘指揮で、神経をすり減らしたのだろう。


「 これで全隊員の現状が分かったな。ありがとう、ちょっと全体に話があるから席についてくれないか」

司令室は講義もできるようになっており、隊それぞれの席が設けられている。

しかしシュロは一旦席につくのを拒否し、ツゲの目を覗き込むようにして言った。

「 ちょっと待ってくれ。その前にゴーストについて発見したことがあるんだが。

 今聞いてくれるか?」

ツゲの目に、わずかな迷いが見て取れた。動揺というほどの感情の高ぶりは感じなかったが、やや疲れたようにツゲは返してきた。

「 あとにしてくれないかな。みんな疲れているだろうから。」

言われて、今度は素直に席につくと、ツゲは胸を張り、咳払いをして、(目薬をさして)壇上に立ち話し始めた。



「 諸君、ご苦労だった。

 第1部隊と第5部隊が全滅、また各隊にもかなりの死者が出た。

 これはアインスの研究者のくせにしゃしゃり出てきて自分のせいだと思っている。すまなかった」

ツゲは深々と頭を下げた。淡々とした話し方だがその奥に苦悩と悲しみを感じる事はできた。

あのやつれ具合は慣れぬ軍隊指揮によるものではなく、自分の指揮で人を死なせてしまったという自責の念からだったのだろう。



簡単に話を終わらせたツゲに続いてアインスのお偉いがたが賛辞を述べた。

普段見た事もない、貫禄があるだけの老人の話などツヴァイ隊員がまともに聞けるはずがない。

「 こちとら必死で戦ってきたんだ。休ませろっての・・・」

「 仲間が何人も死んだってのに街を守った事しか言わないのかよこいつら・・・」

「 結局アインス研究室の警備に使われた新兵器って調子どうだったんだよ?」

シュロのいる隊員席からは不平を吐く小さなつぶやきがいくつもあった。

イスカは腕を組み目をつむり、明らかに寝ていた。

シローも、疲れているだろうからと部屋においていこうとしたのを会議には出席すると言い張ったため連れては来たが。やはり寝ていた。



「 それでは、アインス本部の守りで活躍した新開発の兵器の説明を行う。

 全員第1錬成場に移動せよ」

隊の半数以上が寝始めた頃、ようやく老人特有の甘ったるいにおいと、長く同じ内容を何度も繰り返し言ってるようにしか聞こえない話は司令室から出て行った。


長話から解放されたのと、知りたがっていた新兵器を見れるという喜びで司令室内はやや沸きかえった。


「 おいシロー、大丈夫か?寝てるならいいが、俺達は行くぞ。俺の肩の上で寝ていけ」

目を覚ましたイスカも珍しく興奮しているようだ。シローを勝手にかついで行こうとしている。

シュロは周りに気付かれないように、ヒソカの手を引きイスカに近付き、耳打ちした。



「 イスカ、サイ・バスターに実弾を装填しておけ」

驚いて、身体が震えそうになるのを懸命にこらえ、イスカはポーカーフェイスを保った。

まだ装備が解かれていないために背中に背負っている銃がズンと重くなったような気がした。

ようやく大事件が終わったっていうのに・・・この隊長は何を言い出すんだか。

「 何を言ってる。終わったばかりじゃないか」

イスカも声を潜めて、しかし言葉とは裏腹にシローを肩に乗せながら後手で器用に装填を始めた。あくまでも回りに気付かれないように前を向きながら。

ヒソカの不審そうな視線を感じながら、シュロはさらに声を潜めて


「 モクレンが生きているとは言ったが、あいつが消えた目的が分からん。

 あの状況で消えたとなると、原因はセキュリティールームで見たアインス内の”何か”だ。

 それが何かは分からないが・・・」

ちらりと横を見て、シローが再び寝息を立てているのを確認すると、シュロは続けた。

「 あいつの性格からして、アインスを排除しようと考えるかもしれん。

 新兵器をここで公開するのならばモクレンにとってはチャンスだろう。

 あいつを止められるのは俺達だけだ。」


しばし逡巡したのち、イスカはシローをヒソカに手渡し、装填の速度を上げた。

ヒソカはまだ納得がいないらしく、口をとがらせて反論してきた。

「 でも、まだその可能性があるってだけなんでしょ?

 モクレンが敵に回るはずはないわよ。むしろ警戒すべきはアインスなんじゃない?」

その言葉を聞いて、ふとシュロもあごに手を当て考え込んだ。


「 確かに・・・あのゴーストが出たことを考えると・・・そうかもしれないな」

「 あのゴースト?」

装填の手を止め、イスカがまた小声で聞いてきた。


ややざわついているとはいえ、身を寄せ合っていつまでも小声で話していれば目だってしまう。

シュロはこれで打ち切るつもりでささやいた。


「 後で話すが、重大な事だ。だから事態が大きく動くなら今しかない。

 動かすのがアインスかモクレンか分からないが、みんな気を抜くなよ」


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