次世代への哀愁歌
半島最大の兵力と言われた、
オスマトルの大将軍デギン率いる8万人の大軍隊は、
千手の戦狼シャルークの前に敗れる。
その後 [ 赤獅子ジャバロン]率いる、
軍隊ファイアウォーターが現れる。
醜い大将軍のヒキガエルがあの程度では......
戦狼は今回も軽く捻り潰すつもりだった。
しかし......
だが、その後に現れた
若き将軍「赤獅子ジャバロン」
聞けばまだ20歳ぐらいの若造......
かなり強いと言う前評判も、
オスマトルの閃光の冠を付けた軍隊と、
それを率いて来た、
大将軍と言われたヒキガエルがあの程度では......
戦狼は今回もあっさり潰すつもりだった。
「 ぬ!?これは?......」
しかしコイツらは明らかに違う.....
初めて「手応え」。
風に乗ってくるのは、
若く熱い血の匂い……
剣を握る手に、自然と力が入る。
「 ほほうw......」
戦いは苛烈を極めたが、
シャルークは次第にジャバロンの才覚に目を細める。
それは箱入りに育ててしまった娘が事もあろうに、
敵の赤頭と遭遇してしまった上に、
魅了されて帰って来たからでは断じて無い!
あの時の娘の頰は赤く、
目が潤み輝いて、
手に触れれば熱い……
あの赤頭の匂いが、かすかに残っている気がして、
頭に来ちゃったのを思い出す。
「 ぶっちゃけ、やっぱ捻り潰したろか?
あの赤頭は!www」
「 いや!待てワシ!」
ある意味、我が愛娘ミリアはたった一人で、
オスマトルの猛将と言われる赤頭の部隊を撃退し、
我々の不意を突く挟撃から救った。
まるで神話に出てくる伝説の戦乙女フレイ様ではないか?
年を重ねる毎に周囲の変化や感情に疎くなっている自身に、
若き頃の心の猛りが蘇ってくる。
「 負けてしまえば、それはただの負けだ......
しかしこの戦は勝っても負け筋だな......」
自分の理屈で動けないなら、
それは最初から負けているのと同じだ。
「 よし!やるなら、とことん演じて、
叩き込んでやろうぞ!
ガキンちょ共が!www 」
老王の瞳が希望に満ちた少年のような、
輝きを放つ。
それは、老いた胸に、若き日の風が吹き抜けるような感覚。
走馬灯のように遠くから聞こえる盟友たちの笑い声が、
彼の乾きつつあった魂に、
再び熱い火を付けるのであった。
「 どれ?だれが用兵しているのか?......
生意気な......
久しぶりにワクワクするのう www
とことん遊んでやろうぞ!
どれ?次の手は..... 」
こうしてジャバロン軍は戦狼のイタズラ心もあり、真の強さを手に入れる。
ジャバロン達がそれを実感し始めた頃、
彼等はシャルークを打ち破った。
しかも、剣を交えた末に生まれたのは、
憎しみではなく、深い友情。
老王は官軍の使者として現れた2人の男に
「目に入れても痛くない」双子の娘の姉妹を嫁がせ、
オスマトルの属国となる道を選んだ。
アブーと相方が誕生して3歳の時に戦狼と言われた祖父でもあるその男は亡くなり、
戦略上ジャバロン軍はサロスからアハルの拠点移動となる。
シャルークの真の目論見。
戦狼は、ただジャバロンを敵として見たわけではない。
彼は手合わせしてから、
この若き将を「育て」、
西の無敗の帝王バディーや大国ラハビアから半島諸国を守る盾にしようとしていた。
愛する娘が敵大将と会ってしまい、
心を奪われて帰ってくると言う、
ハプニングもあったが、
度重なる引き分けと連戦は、
シャルークがジャバロンに半島の未来を託すためのもの。
打ち破られた末に生まれた友情と婚姻は、
すべて老王の目論見通り。
双子の姉妹を嫁がせ、
ジャバロンを僻地へ左遷させようとする、
オスマトル将校たちの画策を察知し、
それを利用しサロスの地に引き込んだのは、
あの不測だった事件も原因の一つ。
しかし更なる中央の陰謀から遠ざけ、
ゆっくりと力を蓄えさせるため。
シャルークの死後、
ジャバロンはアハルで港を甦らせ、
経済の力で国を守る道を選んだ。
——これが、シャルークの世界観で次世代に遺した「最後の盾」。
アブーの血に流れる戦狼は、
祖父の目論見を、知らずに継いでいるのかもしれない。




