第5章:影の中の咆哮(1)
この小説の第一編が始まります!!
【王冠の間のささやき】
さらに、本日は一日を通して三話更新予定!!
ヴァンレオは首都郊外に位置する村であり、簡単な計算では約三時間の距離にあった。数週間前、タイプ3のミュータリスがこの村に住みつき、わずかな者しか逃げ延びることができなかった。そのため、迅速に排除命令が出された。理論上は完璧な任務──命が失われ、今も危機にあるという緊急性。アリザルは、そんな風に考えてしまう自分にため息をついた。
彼は空を見上げた。晴れて澄んだ日だった。馬車での移動はゆっくりだったが、安全ではあった。
「あなたのこと、リンって呼ぶね」ミルリの声が草原に響いた。
「リン?」エムリンが困惑して尋ねた。
「読み書きを練習してるんだけど、ムーンとエムリンって、文字がほとんど同じなの。違いが小さすぎて間違えそうだから……リン」
「考えたことなかったけど、いいよ。じゃあ、私もあなたのことルリって呼んでいい?」エムリンは手を差し出した。
「だめ…」ミルリはその手を取った。
「話の途中ですまないが、全員、自分の役割は把握してるか?」アリザルは後方をちらりと見ながら言った。彼は御者であり、エミルが隣に座っていた。
「うん、私が囮になる。ムーンは万が一の時にサポート。ミルリは背後から攻撃して、エミルが支援。で、あんたがその変なやつ使うんでしょ?」エムリンは馬車の座席下に置かれたボウガンを指さした。
「その通りだ。ちゃんと使えるか試したいんだ。みんなと一緒に工房で作ったからな」
「それよりさ、相手が狼なら楽勝じゃん。心配して損した」エミルは笑いながら言った。
「楽勝?三、四メートルはある狼だよ。青い液垂らしてて……しかもハゲてる」エムリンが返した。
「…あー…やる気なくなったわ…」エミルの顔から笑みが消えた。
「でも、皆でやれば簡単だよ。相手が人型ミュータリスじゃなきゃ問題ない」エムリンが続けた。
「リン、やめとけ」エミルは心配そうに彼女を見た。
すると、彼女は『まぁまぁ』と両手を挙げた。
「…あれが村ね」ムーンが前方を見ながら静かに言った。
「うっわ…もう行きたくなくなってきた…」エミルはうんざりした声を上げた。
「悪いな、引き返せないぞ。戦うか、ここに残って料理するかだ」アリザルが言った。
「干し肉とパンだけで料理も何もないだろ。すぐ終わる予定だったんだから」エミルは不満げにアリザルを睨んだ。
「ふーん、それで自分の分食べちゃったんだね」ミルリは二人の間から顔を出して村を見た後、にやけながらエミルを見た。
「それ、お前だろ!俺の分よこせ!」エミルは怒りと苛立ちの混じった顔で言った。
「どれ?もう食べちゃったけど?短い旅だし」ミルリはじわじわと顔を引っ込めた。
「なあ、こいつ何で連れてきたんだっけ?」エミルは小声でアリザルに聞いた。
「隠密が得意なんだ。こいつがあの化け物を仕留めるか、少なくとも大ダメージを与える」
そうして、彼らは村に到着した──
この編ではアリザルの成長、そして物語の本質が明らかになります。
この先に待つ出来事のあと、すべてが変わる——。