第4話:ミルリ
アリザールの専属メイド、ミルリに焦点を当てたエピソード。
彼女の過去とは——?
(ミルリの視点)
過去のことはあまり覚えていない。思い出そうとしても、何も浮かばない。けれど、道端、ゴミを漁っていたこと、生き延びるために必死だったことは、なぜか忘れられない。
次に覚えているのは、臭い部屋。人々のうめき声。そして私はひとり。遊び感覚で投げられたパンを奪い合っていた。
その後は屋敷にいた。誰かに買われた。そしてまた別の屋敷に移された。「役立たず」と呼ばれていたことだけははっきり覚えている。
誰かに触られそうになった。私は人を殺した。……でも、いつナイフを手にした? 最初から持っていた?
その次の記憶はまた道の上。私は走っていた。でも、なぜ走っていたのかは思い出せない。ただ、また部屋にいた。
「これは特別な子だ」と誰かが言っていた。でも、どうして?
また人を殺した。捕まえられそうになった。なぜ?
頭が痛い……
何日も食べ物をもらえなかった。わざと弱らされていた。貴族の顔が浮かぶ。
そうだ、私は――エネルギーを使える。
アリザール様が言っていた。私の種族では使えないはずだと。でも私はできる。理由は分からない。彼は調べようともしなかった。
それでも、これは重要なことみたいだ。
だから、私はその貴族に「渡された」。私は「特別」だから。
でもその人は、私に食べ物をくれた。そして「ある場所に連れて行く」と言った。
それが――今、私が「家」と呼べる場所だった。
手首には短剣があった。あの貴族の屋敷から盗んできたもの。でも、彼は私に何も悪いことをしなかった。ただ、どこかに連れて行こうとしていただけ。
そしてたどり着いたのは、森の中の屋敷。
アリザール様のもとへ。
最初に彼を見た時、何も感じなかった。若い分、むしろ危険に思えた。だから、「またか」と思った。
でも、何もされなかった。あの貴族はアリザール様の知り合いで、私は「贈り物」として連れてこられただけらしい。
アリザール様はただ一言、「ようこそ」と言った。
「何をすればいい?」と聞いたら、彼は少し考えて、メイド服をくれた。初めての命令は、「必要なものを買ってこい」だった。
「必要なもの」って何? 他のメイドや使用人に聞きまわって、服を買った。私が、だ。何をしていいのか分からなかった。
アリザール様は私に命令をしない。たぶん、私をどう扱えばいいのか分からないのだと思う。それが今でも混乱する。
私はここで何なのか分からない。でも、落ち着く。彼は「専属のメイド」だと言って、あとは「好きにしていい」と言った。でも、何をすればいい?
掃除をして、洗濯をして、料理を覚えた。
いつの間にか、文字を習いたくなって、今は書き方も読み方も練習している。
そして、いつの間にか、部屋に短剣を置いたままにした。
気づいたら、アリザール様に抱きついていた……なぜ?
最近、彼のそばにいるのが心地よい。触れても、匂いを嗅いでも、怒られない。
たまに、私をそっと押しのける。
……それは、嫌われているってこと?
今日、新しい女の子が屋敷に来た。名前はムーン。彼女に屋敷を案内したけど、何も話さなかった。……それは、本当にムカつく。
キャラクターたちはすでに登場済み――次は彼らの活躍を見せる番だ!!
物語の第一章は次の話から本格的に始まる!!!
読んでくれて本当にありがとう!いよいよアクションの時間だ!!