第25話:情報戦、始動
アリザルとリリアンは、学園内で敵同士であることを運命づけられている。そこに、第三の存在が割り込み、厄介な邪魔者として登場する。
ニュースは当然、すぐに広まった。生徒会とプレフェクト委員会が対立する――それは学園にとって、もはやエンタメだった。誰もがその話題に夢中だった。
…アリザル・レンデイラは、すでに疲れ果てていた。
この争いは、どちらの陣営のリーダーによっても計画されたものではなかったが、学園中の噂の的になっていた。そして当然のように、別の部署もこの騒動に加わっていた。対立の当事者ではなく、報道のために――学園新聞部である。
「この件について、どう感じてるの? アリザルさん」
記者の女子生徒が訊ねる。アリザルは彼女の名前すら覚えようとしなかった。
「疲れた。……一日中、同じ話題で絡まれてみろよ。うんざりする」
彼は遠慮なく、その苛立ちをあらわにした。
「でも、あなた、どの質問にも答えてくれてないじゃないですか。新聞部としては、読者に出す記事が必要なんです。だから、何かしら答えてください」
記者は諦める気配すらなかった。
「弁護士にでもなったらどうだ?」
アリザルは、やれやれといった表情で彼女を見た。
「まあまあ、そう言わずに。じゃあ質問を変えましょう。あなたが勝ったら、どういう理想を掲げて動くつもりですか?」
皮肉を無視して、質問をぶつけてきた。
「……新聞部を解体するか、浄化するかだな」
アリザルの本音とも冗談ともつかない回答に、記者は不快そうな顔をした。
「リリアン様のほうが、ずっと話しやすいわね……」
彼女はわざとらしく聞こえるように呟いた。
「だったら彼女の回答を聞けば、俺のもわかるだろ」
その言葉に、記者はにやりと笑った。どうやら火がついたらしい。ようやくアリザルは静かに息を吐いた。
ただ一つだけ、彼の中で確信していることがあった。
リリアンは、必ず戦ってくる。
……彼女が掲げる「理想」とは、何だろうか?
プレフェクト委員会の第一規則――「個人の判断を他人の判断より優先させないこと」
その理念を尊重する以上、自分の行動にも反映させなければならない。
リリアンは止まらない。そして、自分も止まるつもりはない。
問題は、それだけだった。
アリザルは、リリアンを“対等”だと認めている。そしてリリアンも、アリザルを“対等”だと認めていた。
つまり、簡単には勝てない。
だからこそ、持てるすべてを使うしかない――
アリザルは笑った。ようやく自分のフィールドで戦える。相手は、自分と同じ高さに立つ存在。
それが、全力を出す理由としては十分だった。
◇◇◇
「アリザルを相手にして、どう思ってる?」
今度は、記者はリリアンの執務室にいた。
彼女――リリアンは、本当は外に出たかった。
「……彼に頼まれたの?」
その問いには、記者は何も返さなかった。
「はぁ、どうしてあの二人は、どっちも無愛想なのよ……!」
記者は苛立ちを隠さなかった。
「情報が漏れたら困るの。まだ、最初のキャンペーンすら始まってないのよ。気づいてない?」
リリアンは淡々と答えた。
「……あっ、たしかに」
記者はまるで悟りを得たかのような表情を浮かべた。
その日から、誰かが――アリザルとリリアンを監視し始めた。
学園新聞部がついに登場。
この学園では、噂話は彼らを通じて広まっていく――。




