第22話:ミルリ、ただのミルリ
後見人制度の計画が進む中、
抑え込まれていた感情もまた、形を求め始める――
「後見人?」
ムーリンが困惑したように首をかしげた。
「新しい人材が必要だ。俺たちの期待に応えられるような人間を――そして、どうせなら自分たちで選んで育てたいだろ?」
アリザル・レンデイラが説明する。
「えーっと……悪くない案だけど、また僕が問題になるんだよね。僕が後見人になれば、その人は身分が上がっちゃう……」
カルロ王子が肩を落とした。
「その点も考えておいた。どうだ? 君がプレフェクトの公式代弁者になればいい。何もしなくていいんだ。聞いたよ、君は占星術師になるって決めたらしいし、それはかなり時間を取られるはずだ」
アリザルは穏やかに答えた。
「うん、それなら悪くないね。じゃあ、もう行っていい?」
カルロ王子は立ち上がりながら言った。
「どうぞ。何か伝えてほしいことがあれば、こちらから連絡する」
アリザルは頷いた。
カルロ王子はそのまま去っていった。ああいうところが、いつも問題を招くのだ――でも、それを王子に言える者なんていない。
「……少し落ち着くべきだ」
ムーン・フォン・リアルドンが、彼が去った直後に静かに口を開いた。
アリザルは黙って紙に目を落とし、それから小さくため息をついた。
「大した計画じゃないよ、ムーン。ただの学園事務だ。君はもう、落ち着いたか?」
彼は彼女を見ながら言った。
ムーンは彼を見返した。表情はまだ沈んでいたが、少しずつ彼女らしさが戻ってきていた。今日は言葉を発した、それだけでもアリザルにとっては前進だった。
「問題は、全部急ぎすぎなんだよ。それが言いたいの」
ムーリンが言って立ち上がり、アリザルの方へ歩いてきた。そして、一枚の紙を取って眺める。
「いい? 賛成だよ、人は必要。でもそれは学園内のことに限って。貴族をどうにかするとか、誰を襲うとか、そういうのは抜き。今は休もうよ、私たち休むべきなんだよ……特にあんたがね」
そう言って紙を丸め、アリザルの頭を軽くポンと叩いた後、部屋の出口へ向かった。
「少し出かけてみたらどう?」
ムーリンはそう言いながらアリザルを見て、続けて視線でミルリを指し示した。彼女はずっと黙って、床を見つめていた。
アリザルはその意図を察し、何も言わずにムーンも立ち上がってムーリンの隣へと並んだ。そして二人は部屋を後にし、アリザルとミルリだけが残された。
「世界は変わっていく……君はいつ変わるの?」
あの女の声がまた響いた。しかしアリザルには、どこから聞こえてくるのか分からなかった。
彼は立ち上がり、ミルリの前にひざまずいた。目線を合わせるようにして、そっと頬に手を伸ばす。彼女はまだ何かに沈んでいるようだった。
触れられて、ようやく彼女は現実に戻った。小さく息をつき、かすかに微笑んだ。
「今の君は、あまり好きじゃないな……」
アリザルは言った。
「前みたいに、何も言わずに抱きついてくる君に戻るには、俺は何をすればいい?」
ミルリの猫耳が垂れ下がった。
「……失敗しちゃった」
長い時間が過ぎても、彼女の悔しさは消えていなかった。
「違う、守れなかったのは俺だ……」
アリザルはその場に座り、彼女の正面で続けた。
「この中で、一番辛い思いをしてるのは君だ。役に立てないと感じることが、どれだけ苦しいかも分かってる。君は道具なんかじゃない、ミルリだ。ただのミルリ……俺のミルリだ」
ミルリの目から涙がこぼれ落ちた。
「全部忘れて、ただの二人としてご飯を食べに行こう。どこがいい?」
アリザルは立ち上がり、彼女の頭を撫でた。
「レストラン……一番高いやつ」
ミルリが答えた。
「それもいいけど、別の案がある。ブティックに行こう、そして君を女王みたいにもてなしてもらうんだ」
アリザルは笑顔で言った。
誰もが奇異の目で見るだろう――高級店に現れたエルミラの少女。だがそれが、彼らの計画だった。金を見せつけ、礼儀を要求する。
ミルリの表情は少しだけ明るくなった。言葉だけでは癒せない心、それでも、少しは届いた。
ミルリはぴょんぴょんと跳ねながら出ていった。アリザルがその後を追う。
ふと、彼は後ろを振り返った。
そこに、淡いピンク色の奇妙な服を着た女の姿があった――はずだった。しかし、視線を戻した時には、何もいなかった。
計画は一度、脇に置いておこう。
今こそ、人として向き合う時だ。
ミルリとアリザル、ささやかなデートへ――




