第18章: 偽りの英雄、本物の戦争 (2)
最後の調整はすでに済んだ。
エデュアルド・フォン・マリエンの命は、もはや数時間の問題である――。
ミルリはアリザル・レンデイラの最も優れた刃の一つであり、彼女の専門は諜報活動だった。
エルミラ族であり、猫型という特性からして、それはまさに彼女のためにあるような仕事だった。
アリイサンとは三つの種族から成る総称であり、エルミラ族は動物人種としても知られている。その理由は見た目からして明らかだ。
征服時代、アレギリアによって彼らの文化は蹂躙され、同時にアレギリアの発展のために利用された。
今のエルミラ族は、かつての姿の残滓ですらない。
猫型エルミラ族はかつて狩人だったと考えられている。
ミルリの足音はまるで音を立てず、彼女の敏捷性はもはや不自然なほどで、反応速度も鋭すぎるほどだ。
そのすべてが過去の経験で磨かれたのか、あるいは彼女が生まれ持った天賦の才なのか。
もしかすると、他のエルミラ族も本来はこうなのかもしれないが、抑圧された生活の中でそれを発揮することができないだけかもしれない。
彼女はエデュアルド・フォン・マリエンの屋敷に難なく侵入し、まるで自分の家のように自然に歩き回った。
そして、標的が書斎にいるのを確認すると、すぐに屋根に上って耳を澄ませた。
今回の任務は暗殺ではなく、あくまで情報収集だったのだ。
「このままじゃ教団に殺されちまう……!」
エデュアルド・フォン・マリエンは頭を抱えながら独り言を呟いていた。
机の上には書類が散らばっており、どうやら何かを精査していたようだ。
「どうして損失が増えてるんだ……このままじゃ年末までに数字が持たないぞ……」
彼は何度も何度も書類を見返しながら、グラフが右肩下がりであることにため息をつくしかなかった。
ミルリは発見される前に、静かにその場を後にした。
* * *
(2週間後、学内の監察室)
「諸君……」
アリザルは机に片肘をつきながら口を開いた。
「今夜、エデュアルド・フォン・マリエンはこの世に別れを告げる」
部屋にいた全員が真剣な表情を浮かべた。
エミル・ヴァラデン、ムーリン、ムーン・フォン・リアルドン、イーディス・ガイレン、ミルリ、そしてリリアン王女もそこにいた。
「計画は単純だ。デイサリンにある薬局を、我々の協力者が爆破する。それが合図だ。
その隙に、我々と仲間たちでエデュアルドの屋敷を襲撃し、敵の脱出路を封鎖する……」
アリザルは屋敷の設計図を広げ、要所を指差しながら説明を続けた。
「ミルリ、お前にはまだ出番がないと言ったが、今がその時だ。以前、お前はあの屋敷に潜入したな……
ならば、栄誉はお前のものだ。エデュアルド・フォン・マリエンを殺せ」
「はい、ご主人様!」
ミルリは命令を受け、嬉しそうに顔を輝かせた。
「よし、終わったら誰かと合流しろ。それが撤退の合図だ。イーディス、お前が馬車を操縦しろ」
アリザルはイーディスに視線を向けて言うと、彼女は少し気まずそうにうなずいた。
「味方はどう動く?」
エミルが尋ねた。
「援護だけじゃなく、略奪と破壊もする。あくまで“私怨による襲撃”と見せかけるためにな」
アリザルが答えた。
「なるほど……でも、そもそもの目的は?」
再びエミルが尋ねる。
「マルコ派の経済的基盤を揺さぶるためだ。最近、奴は連日のように会合に呼ばれている。
何か企んでいるのは明らか。それに、この一件はアンドレイ・フォン・リアルドンへの打撃にもなる。
エデュアルドは、あいつの主要なビジネスパートナーの一人だから」
そう説明したのはリリアンだった。
「準備しておけ。今夜は長くなるぞ」
アリザルは設計図をたたみながらそう告げた。
計画は洗練され、
今こそ――攻撃の時!
このアークの最終章が、いよいよ近づいている!!!




