第13章:テーブルの下の駆け引き(3)
計画は順調に進んでいる。
駒は噛み合い、次の一手を考える時が来た。
だが――世界は止まらない。
人生は続き、駒たちは常に動き続ける。
ある少女が病気になっていた。
熱、軽い頭痛、喉の炎症の兆候、そして体のだるさ。
明らかに喉の感染症だけだったが、放置すれば悪化する可能性があった。
医学というものは、必ずしも贅沢品ではない。
だが、すべてが一人の人間の裁量に委ねられていると、その人間は自分の行動の結果についてほとんど考えなくなる。
自分の信念や決断が他者にどのような影響を与えるのか、立ち止まって考える人間はごくわずかだ。
医薬品自体は高価ではなかった。
だが、一週間の給料で食料を買う人々にとって、病気になることは許されない贅沢だった。
アリザル・レンデイラはそれを理解していた。
計画に従い、偽名を使って、彼は薬局を開業した。
その目的は、平民に対して汎用薬を提供すること。
安価で、シンプルで、手に入りやすい解決策を――それこそ、アルイーサンですら手が届く価格で。
その薬局は瞬く間に高収益事業として定着した。
これにより、製薬業界の指導者であるエデュアルド・フォン・マリエンは苦境に立たされた。
アリザルは民衆の心を掴み、その事業は成長を続けていた。
彼を攻撃すれば、社会的に自殺するようなものだった。
さらに、フォン・マリエンの市場は平民ではなかったため、攻撃する理由すらなかった。
結果として、彼は手も足も出せず、自分の船が燃える様を見守るしかなかった。
もう一つの問題は、リリアン王女だった。
彼女は密かにアリザルのビジネスパートナーだったが、公にはそうではなかった。
そのため、アリザルの薬局に合法性を与える機会を利用し、
さらには父である国王に信頼を取り付けたことで、アリザルの事業はほぼ不可侵の存在となった。
「では、どうやって奴を潰す…?」
エデュアルド・フォン・マリエンは考えた。
どんな敵にも弱点はある。それを見つけるだけでいい。
アリザルも同じように考えていた。
彼は椅子に深く腰掛け、前方を見つめた。
そこには、全てのプリフェクトたちが集まっていた。
「計画のフェーズBに移るぞ」
アリザルはそう言って、机の上に片足を乗せた。
ムーン・フォン・リアルドンはその足を見て、メッセージを理解した。
アリザルはすぐに足を下ろし、姿勢を正した。
「マジで…今度はどんな面倒事に巻き込まれるんだ?」
エミル・ヴァラデンはすでに諦めたような声を出したが、そこに臆病さはなかった。
「今回は静かなもんさ。エデュアルド・フォン・マリエンの周囲に不和の種を蒔くだけだよ」
アリザルは無邪気に笑った――明らかにエミルをからかっていた。
「ね?平和的で、当面は誰も死なない」
エミルはため息をついた。
「いつか日帰り遠足とかできる日が来るんだろうか…?」
その後、他の議題も話し合われ、会議は終了した。
* * *
午後7時、授業は終わっていた。
イーディス・ガイレンは数時間前に伝書鳩を送っていた。
その返答として、彼女のもとに一台の馬車が現れた。
「何か報告はあるか?」
少し若い声がそう尋ねた。
馬車の中には、20歳前後の青年がイーディスと向かい合って座っていた。
「エデュアルド・フォン・マリエンへの攻撃を計画しているようです」
イーディスは答えた。
「ふむ、面白いな。フォン・マリエンはもう終わりか。最近は使えない奴だったしな。
民衆が良い客になることすら予測できなかったとはな。
そのアイデアを出したやつこそ、本物の天才だ」
青年は肩をすくめて笑った。
「それだけです。申し訳ありません。アリザルは最近、多くを語らなくなっていますが、
私にはまだ疑っていないようです」
イーディス・ガイレンは普段以上に真剣な表情をしていた。
「構わない。今夜、奴には会うつもりだ。場所も分かっている。
ミュリエルの殺し屋には答えてもらわねばならん。
エデュアルドも、最後には使い道があるだろう。
それより…教えてくれ。
――私の妹、ムーンはどうしている?」
最も危険な敵が、ついに姿を現した。
プリフェクトの布陣には、亀裂が生まれ始めている。
転機が、静かに幕を開けた――。