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第10章:ある貴族の死体 (3)

会議は終わった。皆が少しだけ息をつける――だが、盤上の戦いは今まさに始まった。

秘密を守ることは全員で決めた――というより、他に選択肢がなかったのだ。イーディスとエミルは学園に残ることを選んだが、その前にしっかりと事情を聞き出し、会議で無視されたことについて皆を叱りつけた。学園には元々寄宿制の施設があり、寮が完備されていた。オードリスは防衛を強化した。


ムーリンはアリザルと同行し、ムーンの護衛として働くことになったため、屋敷に住むことになった。


中に入ってまず目に入ったのは、その広さだった。「思ったよりでかいな……なんで人って、無駄な広さを好むんだ?」と最初に文句を言った。


「リン!」リビングから叫び声が聞こえ、ミルリがすぐに駆け寄って親友を迎えた。


二人は両手でハイタッチし、拳を合わせ、奇妙なダンスのような動きをした。


「いつからそんなに仲良くなったの?」とアリザルが尋ね、ムーンさえも困惑した様子を見せた。


「ご主人にはわからないよ。あたしたち、生まれつきの狩人だからね」とミルリが説明した。


確かに帰り道、二人はずっと話し込んでいて、まるで久しぶりに再会した友達のようだった。


一方ムーンはすぐに寝てしまった。アリザルは騒音が彼女にどれほど影響するかを改めて理解した。ミュータリスの叫びは特に酷かった。


「まあいいか……」と彼は話を切り替えた。「……好きな部屋を使ってくれ。食事も生活も、全部俺が面倒見る」


「でも給料はほしいな。こっちに来るってことは、収入源を一つ捨てるってことだからね」とムーリンが返す。


「週に二万アイラでどうだ?」


ムーリンは少し考えた。


「私、三万もらってるんだけど」とミルリがわざとムーリンの耳元で囁いた。もちろんアリザルに聞かせるために。彼は気まずそうに笑った。


「わかった! 四万で!」


「メイドよりたった一万多いだけ?」ムーリンは挑発的に笑い、腕を組んだ。


「ミルリはただのメイドじゃないんだぞ……」アリザルは抗議した。


「でも私の力、見たでしょ……じゃあ六万」


「……払えるよ」


再びミルリとムーリンはハイタッチして拳を合わせた。アリザルには、それが単なるノリではなく、わざとやっているように見えた。


それでも彼は自分の執務室へ向かった。


アリザルの執務室は、明らかに彼の仕事場だった。設計図、会計帳、ポーションのアイデア——すべてがここに揃っていた。だが今、彼はただ天井を見つめながら座っていた。彼を不安にさせていたのは、自分の計画が制御不能になりつつあるという事実だった。何かが起こるとは予想していたが、これほど極端だとは思っていなかった。


ムーンが部屋に入ってきて、その物音がアリザルを現実に引き戻した。もう盤上の駒を動かし続けるしかなかった。


ムーンは部屋を見回し、最初にしたのは、いくつかの物を整えることだった。


「……アンドレイを倒すのは難しい」そう言って、彼女は会計帳を手に取り、書き始めた。


「何か策はあるか?」とアリザルが聞いた。


ムーンは答えず、ページをめくりながら書き続けた。彼女の目は眼振で揺れ、時おり首をかしげる。


アリザルも途中から、自分の計画資料に目を通し始めた。


やがてムーンは帳簿を机の上に置いた。


「……エデュアルド・フォン・マリエンは、薬品市場を支配している」


アリザルは思考に沈んだ。


「……力が必要。攻撃の資金も、父親と戦うための力も」ムーンはそう言って部屋を出ていった。


アリザルは帳簿を見直した。あまりに完璧すぎて、むしろ不気味だった。


「エデュアルド・フォン・マリエン……もし奴を盤面から外せば、薬品市場の一部を奪える。資金も手に入るし、“レンデイラ”の姓も取れるかもしれない……彼女が考えたのか、それとも俺の考えすぎか……」そう呟きながら、彼は帳簿を見つめ続けた。



次の標的は定まった。ムーンが次の一手を示した――アリザルは、どう動くのか?


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