February-11 (邂逅)
気温4度。天候は曇りでどんよりとしている。
グローブを通して、冷気で指先が冷たかった。
ジェットヘルの下から、冷たい空気が頬を流れていく。
勇生は、ただバイクを走らせていた。
こんな天気だ、車も走っていない。
昨日の雨で、路面は濡れている。
バイクのタイヤはまだ温まってたない。
ラジアルではないので、バイアスのタイヤは走り出して
しまえば、グリップは増してくる。
坂道で、ギアダウンして回転数を上げた。
トルクは、回せばでる。
坂を登り終えると、廃校になった小学校が見えてきた。
そこを目印にして、脇道に入っていく。
朽ち果てた、案内板から入ると、そこには朽ち果てたように石で作られた祠があった。
もう、何年も手入れてされておらず、蔦に覆われていた。
蔦を払うと、話さして顔をした仏像が現れた。
何百年もここに鎮座しているのに、その顔は微笑んでいる。
多分名工など言う人が作ったものだはないのに、作った人の心情がうかがえた。
勇生は、手を合わせると、短く真言を唱えた。
色が抜けた、赤い前掛けが長い年月を感じさせた。
鈍色の空から、一筋の光が漏れていた。
エンジェルラダー(天使の梯子)が降り注いでいた。
そういえば、ここは祈りの島でもあったのだ。
勇生は、次の場所へとバイクを走らせた。
車齢30年を超えたバイクは、いまだに健在でエンジンは
動き続けている。
車と違って部品工数が少ないので、年数がたっても動き続けている。
それでもいつかは終わりが来るのだろう。
勇生は、アクセルをひねりながらタコメーターの針を見続けていた。
公衆トイレの横の駐車場にバイクを止めてヘルメットを脱いだ。
首に巻いたライダー用のマフラーを外すとタンクバックにねじ込んだ。
これからは、山道を登っていく行程になる。
入口の鳥居をくぐると、コンクリートの石段があった。
重いブーツで登るには、骨が折れるが、勇生は登っていく。
息が上がるが、黙々と登ってくと公園ような展望所があり
そこから、山道で自然石てせ石段が形成されている。
ここには、伝説があって弘法大師の彫んだ大日像があるという。
実際、弘法太師はこの地に逗留しているから伝説の一つや二つは
あってもおかしくはない。
全国には、弘法太師伝説は千件以上あるのだから。
それでも、この番所は相当な場所にある。
登りきると、目の前に祠があって、牛の像が鎮座していた。
おそらく、農耕ようの牛はこの地域では珍重されており近世(江戸時代)
一時牛の病気が流行し、悪疫退散のため牛神を建立し祈願したといわれているらしい。
勇生は、転がって泥が入ったお供え用の茶碗を持ってきた水で洗って
水を供え、短く真言を唱えた。
汽笛が聞こえた、見上げると Z の軌跡を描きながらフェリーが港に入ってきたいた。
勇生は、手を合わせた。
海風が木々を震わせた。
それは、まるで "もうお帰り"という合図に感じた




