january -13 coming-of-age ceremony
雪江は、狭間で漂っていた。
意識はなく、だだふわふわとしている。
その言葉がしっくりとしていた。
時間の概念はなかった。
勇生と会って自分が、この世のものでないということを理解した。
ただ、過去の記憶はなかった。
どうして、死んだのかもわからなかった。
橋の傍のお堂の前で、雪江は手をつかまれた。
視線を落とすと、着物着た小さな女の子が雪江の手をつかんでいた。
"お姉さん、もう少しで全部思い出すよ"
という声が意識の中に流れ込んできた
#思い出したくない#
ととっさに雪江は叫んだ。
何かが、思い出すことは恐ろしいことだと告げていた。
"だめだよ、思い出さないとあの人は、すべてを知ってしまう。そうしたら、きっとあの人は苦しむ"
雪江は女の子の言葉がひどく意識を揺さぶった。
あわてて、女の子の手を放そうとしたが、強く握られた手は振りほどけなかった。
"あの人は、答えにたどり着くはず。いま、送路を辿っている"
#送路、何なの#
女の子は、雪江から手を放して
"逆打ち"
と告げて雪江の前から消えた。
雪江は、女の子の言葉にひどくを怯えた。
それは、呪詛のような響きで雪江の体を縛った。
狭間の世界から、現実の世界へと固定されていた。
意識がしっかりとしてきた。
まだ、記憶は戻らない。
ただ、どうして死んだのかは、思い出した。
雪江の視界の中に、振り袖姿の若い女性の姿が入った。
あでやかな振り袖ときちんとセットされた髪型が若さと不利つり合いを醸し出して
余計に、女性の若さを際立だせた。
そして、そのことが、一番思い出したくない記憶をよみがえらせた。
#助けて#
雪江は叫んだ。
涙が流れた気がして、意識が遠くなった。




