partner ~昔の仲間~
~前回のあらすじ~
いきなりオリエンテーション。バスでウザキャラに遭遇。剣士の二人組み、慶斗と翔太の強烈な突き。魔法使いの渚と夢が毒で魔王玄武を、恥辱にまみれた地獄へと落としたのだった。
~予告~
ノーマルとアブノーマルについて解説。
僕は肩を叩かれて起こされた。あれ?何時の間に寝てたんだろ?あの後は玄武君虐めの王様ゲームをしてて…。いやぁ、運転手のヅラ取らせる命令は面白かったな…。
「慶斗、起きてよ…」
「あ、渚。着いたの?」
「違うの。二箇所目の休憩場所。お昼ごはんも食べるから40分時間が有るって。」
「あ、分かった。」
既に他の人は降りたみたいで、夢と翔太の二人がバスの入り口で待っていた。誰か一人足りなぁなんて思ってたけど、隅っこに灰の塊みたいな燃え尽きた系の人がいただけだった。気にしない気にしない☆
「お弁当バックの中なんだ。運転手さんに頼んで出してもらうね。」
夢たちと場所探してて~。と頼まれたので、景色の良さそうな場所を陣取った。三人で待ってると、渚が来る。その肩にはゴロちゃん。
「まったく、ワシをバックの中に詰めるとは…。」
あ~、だからバスの中にいなかったんだ。てっきり置き去りだと思ってた。
「ちょっと張り切って全員分作ってきたんだ。食べよ。」
重箱を取り出す渚。4段重ねのそれには、色とりどりの食べ物が並んでいた。どれもこれもおいしそう。箸を配り終えて、食べ始める。因みにゴロちゃんも。あ、ゴロちゃん覚えてる?暗黒物質から転生した自称元仙人ね。今は訳有って熊のぬいぐるみになってるけど。
「うむ。渚の料理はうまいな。何時食っても飽きん。」
「そう言えばさ、ゴロちゃんって仙人なんでしょ?何か力を見せてよ。」
「よかろう。だが、どうやらこの姿ではフルに活用できん。せいぜい岩を吹き飛ばす程度じゃ。」
十分強いです。そして、話によれば、まだゴロちゃんが人間体だった頃、身長2m越えの超が付くイケメンで、毎日女の子に飽きなかったらしい。嘘も捏造も程ほどにしましょう。
「あぁ!渚に夢。こんな所にいたの!この男共に変な事をされなかった!?」
失礼だね。
「瑚南ちゃん遅かったね。どうかしたの?はい、一緒に食べよ。」
「おぉ!なんと言う喜び。実を言えばある組織の一年生支部の会合に参加していまして。私が支部長で無ければ直ぐにでもあの玄武とか言う豚野郎を叩きのめしたかったのですが…。すいません。…ふっ、やはり男共は役立たずか。…あぁ、おいしい。」
聞き捨てならない言葉が聞こえたなぁ。僕らは僕らなりにやってたんだよ。虐めが70%だったけど。
突然キキーッと言う音がした。振り向けば、黒と紫に塗装され、ニューヨークのストリートペイントの様な落書きの入ったバスが急停止した所だった。バスの周りには煩いエンジン音を響かせるバイクが。バスの中からゾロゾロ出てくる金髪オールバックと、茶髪ロングの集団。来ちゃったよ…。これが僕のオリエン不参加を望む理由。あ、バスがもう二台…。
一台は眩いばかりの白一色に塗装されて、至る所にバラをくっ付けた趣味の悪いバス。その中から、白いタキシードみたいな制服を着た男子学生たち。もう一台は南陽と同じでいたって普通のバス、降りてきた女子学生たちもいたって普通。
解説するね。僕らが向ってるオリエンテーションは、南陽の一年生だけでなく、付近の他三校も参加するんだ。どれもこれも個性的過ぎて僕には苦手なタイプばっかり。
最初の不良丸出し学生は北川高校の皆さん。あの当時の僕や夢が行くべきだった高校。バラだらけでセンス無しのバスは、東谷高校。別名ナルシストハイスクール。玄武が行くべき学校。最後は女子高の西花高校。一見普通に見えるけど、お嬢様学校だから高慢、そして百合や腐女子の噂が絶えない。瀬波さんが行くべき学校。瀬波さんって意外にお金持ってます。
兎に角無視しよう。他の皆にも目で合図すると、コクンと頷いた。ノーマルな南陽の生徒にとって、周辺の三校は危険極まりない。
だけど、何故か近付いてくるんだよね…。
まずは釘バット持った集団が来た。あ、蛇慰案戸君。君一年生だったの?
「かぼちゃプリンに醤油を掛けるとウニになる。女よこせ」
何時もながら豆知識ありがとう。でも、不良って最初の言葉がワンパターンすぎるんだよ。ここは瀬波さんに対応してもらおう。どうせ頼まなくても自分からやるし。いざと言うときは…、僕と夢の出番だ。
「不良の皆様?渚と夢は数世紀も前から私のものと決まっておりますの。手は出さないでくれます?」
「うっせぇんだよ。黙ってろ、百合が。西花行っとけ。」
うん、すっごく同情する。君は正しいことを行ってると思うよ、不良君。あ、最後のタコさんウィンナーもらった。
「あ、慶斗。久しぶりぃ。」
「遥…。」
そっか、遥は北川高校に行ったんだ。茶髪ロングが目立つ北川高校女子の中で、唯一黒髪の女子。それが白虎遥。当時の僕に一番近い人物かな。
「へぇ。水と油の慶斗と宇津木がねぇ…。まさか南陽に行ったのは宇津木がいるからかい?」
「違うかな。もしかして遥はまだ不良やってるの?」
「あったり前ぇ!これがアタシの生きがいだからさ。一年生のヤマ張ってるのもアタシなんだぁ。」
「そっか。」
「んじゃ、また後でな。」
蛇慰案戸君含めて、不良を片手で引きずり、遥は行ってしまった。
「誰?」
「昔の友達。」
そう言っておいた。唯一その事を知る夢も黙っている。本当言うと、友達所ではなく、相棒と呼んでもいい存在だけどね。昔の僕を快く思ってない渚には話しづらいかな。
「卵焼きもらった!」
「ソレは私のよ!」
全く何も知らないのも、どうかと思うんだけどね。
「やぁ。お嬢さん達。」
白い制服の男子が来た。胸ポケットに赤いバラを刺してる。
「僕はライアン・リノック。お嬢さん達三人を僕らのバスへご招待するよ。短いけど、楽しい旅になるよ。その…、なんというか…、君たちには不釣合いな人たちよりはね。」
あ~、コイツ玄武よりムカつくかも。ちょっと蛇慰安戸君小突いてコイツに仕掛けようかな。って言うか、君日本人だよね?
「お前ウザイんだけど。どっか行ってくれない?」
「ふむ。顔はまぁまぁだろうが、僕には劣るだろうね。なんといっても、世界最高の美貌を誇るこの僕なのだから…。さぁ、お嬢さん方もご用意は出来ましたか?」
「谷に落ちてください。」
「バスが気持ち悪いです。」
「男が私に近付くな。」
三人が本音を言い放つ。ライアン君はそれでも止めない。
「なるほど、と言う事は…、僕を君たちのバスへ招待してくれるのか。まぁ、乗り心地は最低だろうけど、君たちといられるなら最高の旅になるだろう。では、行きましょう。」
「海に沈んでください。」
「来ないでください。」
「男が私に近寄るな。」
瀬波さ~ん、あまり意味が変わってませんよ。
「そうか。では帰りのバスに招待してくれるのだね?そうだね、その方が長い道のりを楽しめる。」
ハハハハと笑って去って行った。よくあそこまで勘違いが出来るものだよ。
「あれ?瑚南?」
「その声は、萌?」
西花高校の人が来た。清純そうな顔立ちと立ち姿は、流石はお嬢様学校の生徒だと思わせる。この人、珍しくマトモな人ではないだろうか?
「紹介するわね。彼女は美月萌って言って、私の中学時代の彼女よ。」
「なんと!!」
反応したのは翔太だった。翔太、この人知っているの?
「名前が“萌”だと!?名前に性格、容姿まで三拍子揃いの萌えの塊ではないか…。もしかしたらケイに勝らずとも劣らず…。」
翔太?胴体とおさらばする準備はいい?あ、此方は気にせず続けてください。
「はじめまして。美月萌と言います。西花高校の者です。瑚南とは相思相愛の関係にありました。」
駄目だ…。半殺し状態の翔太を落としながら思った。この人もマトモじゃなかった。よりによって、瀬波さんの彼女ですか、相思相愛ですか。うぅ、見た目に騙されてはいけません。あれ?でも何故過去形だ?
「因みに分かれた原因は、お互いが違う学校に来た為なの。私が西花に言っても良かったんだけど、私にはお嬢様気質は似合わないしね。遠距離恋愛なんて無理なのよ。」
ぜひ行って欲しかった。それに、南陽と西花はそう遠くありません。電車もバスも使わないから。
「おのれ~!渚さんが俺に作ってくれた弁当を!!」
あ、玄武君復活したんだ。あぁ後、やっと分かったよ、玄武君と東谷高校の生徒の違いが。東谷の生徒は、“ナルシストでウザくてもう死ねって感じ”。玄武君は、“思考と発言が宇宙旅行してる”。
「黙らせましょう。」
「そうしましょう。」
因みに、上から僕、翔太の台詞ね。まずは僕が足の速さを活かして玄武君を吹き飛ばします。次に翔太が無防備になった足を持って、偶然的にも東谷・西花・北川の生徒が一緒にいる地点に投げます。完璧。東西南北が揃いました。
「てめっ、バイクで引きずってやる!」
「あなたこの私に触れるなんて何様のつもり!爺、こちらに来て。この下郎を追い払って頂戴。」
「止めてくれ。俺様の美貌に傷が付いたらどうしてくれるんだ。」
どれがどの高校の生徒の物か分かりますよね。玄武君、ドンマイ☆
「そうだ、私デザート作ってきたの。食べて。」
夢が金属トレーを取り出した。げっ…。この前も言ったけど、夢の料理は壊滅的で、食べられたものでは…。渚を見れば、『止められなかったの…』って言う顔をしている。トレーに入っているのは、薄赤いゼリー。見た目は苺とかのフルーツゼリーに間違いないと思う。だけど、見た目だけ。見た目だけだから。さっきだって見た目に騙されることがどれだけ愚かか実感したじゃないか。
「けー君、はい、あ~ん。」
スプーンですくってゼリーを差し出してくる夢。食べないよ、どれだけせがまれてもこれだけは…。代理を見たけど、ブンブン首振ってる。今回ばかりは犠牲になってくれないの?
「翔太…」
「け、ケイ…。そんなウルウルした目で見ないでくれ。しかも首を傾げるのは反則だと教えたはずだ!や、止めてくれ。俺の中の萌え袋がはち切れる!!」
そんなの知らないよ!チッ、こういう時に役に立たないなんて…。
「ハーハッハ!馬鹿だね君たち!そうやってオロオロしているのが運の尽きさ!良く見ておけ、夢さんのジェリーが俺の口に注がれる様を!!」
回避フラグ成立。新たな代理君が参上しました。スプーンの上のゼリーをチュルンと口に含み、モゴモゴモゴ…、ゴックン。
「あぁ、夢さんの手料理、完璧じゃないか。これでフラグは成立だな!」
その途端、バタリと倒れた。口から泡を吹いている。面白いね、玄武君。自分から“死亡フラグ”成立を予言するなんて。
「夢、一つ聞いていいかな?何を作ったの?」
「この前の調理実習で作ったやつ。先生もピクピクして喜んでたでしょ?だから、アレを再現してゼラチンで固めてみたの。デザート用に砂糖を足してみたんだけどね。一人であれを二つも捕まえるのは大変だったなぁ…。」
どうやら、第二のダークマターが完成したようです。って言うか、あの配管工生きてたんだね。
「さ、そろそろ戻りましょう。」
重箱を片付け始める渚。お腹も一杯になったし、玄武君は伸びちゃったし。…懐かしい相棒にも会えたしね。
感想などお待ちしてます。