orientation ~虐めちゃえ!~
~前回のあらすじ~
爆弾作りのはずが何時の間にか暗黒物質に大変化。何か色々副産物ができてしまいました…。
~予告~
18782+18782=37564
さて、あの爆弾作りの一件から数日がたったある日。えっと、今までの話で僕らの日常と言うなのユージュアルがどんな物か分かってくれたと思うんだ。え?分からない?ドンマイ☆
そして今日も幼馴染の渚が僕の上でおはようおはようと言うので、目を開ける。そこには何時もの制服姿ではなく、体操着を着た渚の姿が。あ、そうか。今日から二泊三日のオリエンテーションだったっけ?また結滞な事を…。
「あーゆーれでぃ?」
「僕まだ朝ごはん食べてないんだ。」
それ以前に三日分の用意もしてない。あまり行く気もしないし。理由はおいおい話そうと思うけど。
「大丈夫、全部私が用意したから。」
ベッドの隣を見てみれば、ボストンバックが置いてあった。僕は渚が部屋の中を徘徊してても気づかなかったのだろうか…。お約束のキックバック付きピョコンを僕に食らわせて、渚は部屋を出て行った。着替えるべき体操着と飛び切りの笑顔(ウィンク付き)を残して。もしかしたら僕は何気に人生で得をしているのだと思う。ベッドから起き上がって体操服に着替え、バックと一緒にリビングに下りていく。一話も同じような展開だったけど気にしない。気にしたら負けと思うのが僕の信条。
さて、夢とも無事(?)に合流して学校に着いたんだけど、お決まりの方々がいるわけで…。
「朱雀さん、今日はお願いが有りまして…」
「女子の制服は着ないよ。今日からオリエンテーションだから。」
「チッ」
今舌打ちしたよね?因みに、そのオリエンは一年生だけだから。
「そうではないですの。もちろん今日からオリエンテーションであることはしっかりと把握しております。だって朱雀さんの事ですから。そして、オリエンテーションでは体操服着用を義務付けられていることも知っております。なので、良かったら私どもの作った体操着を着用していただけないかと…。」
あれ?意外に真面目な内容。まぁ、それ位なら…。いや、待った。今まででこの先輩達がくれた物で全うなものは有っただろうか?断じて言える。ゼロだと。入学して直ぐ、まだ先輩方の本性を知らない頃、僕は手紙を貰った。溜息混じりの渚と、手紙を破きたがっていた夢からなんとか逃げて、それを広げて見た。内容はご想像の通り、一行目から『あなたの人生をハッピーに変える方法が唯一つ。…性転換です!!まずは格好から変わりましょう。』と書かれていた。そんな内容が便箋5枚に書き連ねられており、気が付いたら僕の前にはシュレッダーより細かに千切られた紙吹雪が舞っていた。
即ち、今回もある意味危ないものに違いないのだ。簡単に言えば、先輩に有益、僕に有害な物。
「これですの。」
差し出された物。これって、アレだよね?確かに体操着だけど…。あぁ…、考えていた方向性が間違っていたよ。僕どうせ、“ボクは女の子です”とか書かれたジャージかなって思ってたんだけど。
「三種の神器の一つ、ブルマですわ。」
思考の範疇を軽く超越しました。ヤダヨヤダヨヤダヨ!?この学校の女子の体操着でも無いじゃん!絶対着ないからね。渚、助けて?夢も赤面してないでよ。翔太でも誰でもいいから!!
「トォッ!」
やっと来た。捨て駒翔太。え?腹黒い?この世の中はそうでもしないと生きていけないんだよ。
「先輩方。ご安心ください。この俺、青龍翔太が責任を持ってケイにその天下の銘刀、ブルマを履かせましょう。青龍よ、落ち着け。すぐにケイのブルマ姿が見れるからと興奮するんじゃない。」
ゴキゴキガクングシャビリッ。今のはあまり気にしないで、首の骨を二回折って、首が据わらない状態にしてから千切っただけだから。どうって事無いさ。
「ケイ、恥ずかしいからって、その様な方法で嬉しさを表現することは無いだろう?…ごめんなさい、だからその手に持ってる物下ろしてくれない?」
ちぇ。
「さぁさ、けー君も行こう。早くバスに乗ろうよ。」
何時の間にか渚が荷物を運んでいてくれたらしく、バスの昇降口で手を振っていた。
翔太があのブルマをポケットにねじ込んでいたのを発見したので、バスのタイヤに固定しておいた。…先生に見つかって救出されたけど。
さて、自由席と言われたので、僕達はバスの一番後ろの席に座っていた。だけど鬼曹長先生が来て、『五人席によりもう一人人間を派遣する。』とか言って、男子を一人連れてきた。その男子は翔太に比べたら見劣りはするのだろうけど、特別格好悪と言う奴ではなかった。所謂フツー?だけど図々しいって言うのかな。僕達の座っている所の真ん中に座った。因みに右から僕、渚、男子、夢、翔太と言う感じ。
「やぁ。椎名さんに宇津木さん。俺は玄武大那だ。よろしくっ!」
おやまぁ。格好付けてポーズまで決めてるし。4人とも少し引き気味です。
「…よ、よろしく…。」
「いやぁ。感激だなぁ。まさか椎名さんと宇津木さんの間に座れるなんて。男子からの視線が痛いほどだぜ。」
ウザイ。直感的にそう思った。翔太もウザイ事には変わりないと思うけど、清々しさがある。僕にとってね。例えばグシャッた後とか。だけどコイツの言葉は後味が悪すぎる。馴れ馴れしい?そんな生易しいものじゃないよ。
「お前さ、渚ちゃんたちがうざがってるぜ?」
「あれ?俺に対する嫉妬?いやぁ~。困っちゃうなあ。まさかイケメン青龍君に嫉妬されるなんてさ。」
翔太の額に青筋が浮かんだ。こんな反応初めて見るなぁ。意外に面白いかも。
「ほら、俺ってさ、小学校の時とかモテてたじゃん?」
知らないし。君の小学校時代なんて知りたくも無い。頭が可哀想な人なんだと思う。そんな中、バスは発進した。信号で止まってるときも、高速道路のETCをくぐった時まで玄武はしゃべりまくっていた。寝ようかな…。
「…でさ、朱雀君。」
いきなり名前を呼ばれた。
「君って本当に男子なの?いつもいつも思ってたんだけど、本当は女の子じゃないのかなって。だってさ、何時も椎名さん達と一緒にいるからさ。」
「殴っていい?」
「あは、僕はMじゃあないんだ。」
アホか。その時、すっと俺の前に飴が差し出された。
「はい。どうぞ。」
「あ、サンキュ。」
椎名の手に乗ってる飴を受け取ろうとしたとき、左側からニュッと手が伸ばされて、飴を掴んでいった。
「う~ん。椎名さんの飴って本当においしいね。」
玄武…、いい加減しばくよ?窓からポイするよ。そう思ったら、バスが減速して止まった。
「これより、20分の休憩を取る。総員配置につけ!」
『イエッサー!』
やっと変なのから離れられる。飲み物でも買おうかな。
何故か玄武まで着いてきた。
「同じ席なんだし、いいだろ?ね、渚さんに夢さん。」
何時の間にか渚たちへの呼び方も変わってるし。いい加減にして欲しいね、ホント。…、虐めるか…。ニヤッと翔太にアイコンタクトを送ると、あっちも合点承知とばかりにニヤッとした。流石は翔太。性格と頭以外は冴えてるね。
「渚、夢、何か飲む?僕適当に買ってくるけど。」
「あ、じゃ私も行く。」
「私も。」
「ケイが言うなら俺も行こうじゃないか。」
「待った。渚さんと夢さんは僕が奢りましょう。」
ふふふ…、引っかかったな、玄武。
「じゃ、僕はコーラね。」
「俺缶コーヒー。」
「いや、俺は別に君たちのを買うのではなく、渚さん達の分を…。」
「え?何か言った?時間無いし、早く行ったら?」
「少なくとも金を返してくれよ…」
「ほら夢ちゃん、向こうの景色綺麗じゃん。おい、ケイと渚も行こうぜ。カメラ持ってきてるんだ、記念写真記念写真。」
「それなら俺も写…」
「あれ?玄武君まだいたの?僕達バスで待ってるから乗り遅れないでね。」
「うわ~ん!!」
作戦成功。バスに戻ってきたら、翔太がパシリの称号を与えてくれるよ。僕達四人は初夏の緑が綺麗な山々を背景に写真を撮った。
バスに戻れば、半泣き状態の玄武が4本の缶を持って席に座っていた。パシリの上に500円程の出費は痛かったみたいだね。所持金いくらだろうか?うまく行けば全額上納とか出来そうな気がしてきた。さて、此処で追い討ちを掛けよう。君はこれから弄られキャラとしてこの小説で活躍してもらうんだから…。おっと、口が滑ってしまった。
「あ、玄武君ありがとう。…何時までそこに座るつもり?」
「いや、此処は俺の場し…」
「僕達座れないんだけど。詰めてもらえる?」
「…はい(泣)」
こうして、フォーメーションチェンジが行われて、並びは右から渚、僕、夢、翔太、玄武となった。玄武への拒否反応がより強い渚を一番遠くにするのは名案だと思う。
「俺の…俺の完璧なハーレム計画が…。」
とか言ってる玄武君も乗せてバスは再び出発進行。あぁ、虐め楽しっ!昔取った杵柄って奴かな…。
「よし、王様ゲームをしよう!」
調子の戻りが早い負組がいきなり王様ゲームを発動した。ここはコンパではない。翔太が割り箸で出来たくじを取り上げた。ナイス!
「王様だ~れだ。」
最終的にするの?でも、翔太は玄武が取れないように背中向けてる。なかなか策士だね。ま、玄武がやらないなら参加しますか。一本割り箸を引いた。『1』と書かれている。
「やった、私が王様!!」
渚が王様ね。この場合女王様か…。サブカルチャー的に嫌な雑念が入ってくるのは気のせいかな?
「はい。玄武は余った4な。」
これは明らかなイヂメですね。でもそうならないのがコメディーのいい所。瀕死の重傷も直ぐに治ります♪
「じゃぁ、4番の人、わざと寒い親父ギャグでバス内の人を笑わせてください。」
すごく難しい命令だね。寒いことが前提で人を笑わせるなんて。責めてロッキーの前でファッキューって言う位にしてあげなよ。
「え、えっと…。熊と猫が熱を出しました。くまったニャー…。」
シーン…。耳が痛いほどの静寂。あぁ、世界ってこんなにも静かだったんだ。周囲から寄せられる絶対零度以下の視線。発案者の渚でさえ、『え、今のどこで笑えばいいの?』と言う顔をしている。玄武は顔を真っ赤にして汗タラタラ。次の瞬間には額に白チョークが被弾。玄武君はその命をチョークの粉と共に散らして行きました。
「キャハハハッハ!面白い、面白いよ玄武君っ!」
隣で笑い声が聞こえた。それも盛大な。左を見れば夢がお腹を抱えて文字通り抱腹絶倒。夢、君の笑いのツボが理解できないよ。
「で、でもさ。あれでしょ?ひぃひぃ…。熊と猫が一緒にいるわけ無いじゃん。それが一番の笑い所でしょ?私最初気づかなかったよぉ!!」
どう言う深読みしたらこうなるのさ?理解できないよ。玄武も逆にもっと恥ずかしがってるよ。
「OK。次のターン行こう。みんなくじを戻してくれ。」
勇気ある翔太が場を取り直してくれた。回りも再びガヤガヤとした喧騒に包まれる。僕や渚、今だ笑い続ける夢がくじを戻した。そして玄武君も戻そうとするけど、そうは行かないよ?
「あ~、玄武。お前は戻さなくていいや。どうせ何時も引くの最後だろ?それならずっとその4番持ってた方が効率的だろ?」
「だが、俺が既に4番と知られていては。面白みが…」
「気にするな。俺達がその分楽しんでやるから。」
「俺は…」
「じゃ、改めて王様だ~れだ。」
愚痴り続ける玄武が煩かったので、僕が強制的にゲームを再開した。
「私が王様!」
夢が王様ね…。
「えっと、けー君と私が…」
「待った。指名したら意味無いだろ。」
「そっか。じゃ、玄武君が窓から顔出して、大声で『僕は童○です!』って叫んで。」
「俺が何でそんな事を…。しかも名指しじゃないですか。」
「玄武君は例外だよ♪ね?」
人生そんなものさ、ドンマイ☆
この日。新たな弄られキャラが生まれました。彼は寒い親父ギャグをかまし、窓から顔を出してピーのかかる言葉を叫びました。天国のお父さん、お母さん、僕は元気です。敬具