social ~地球儀~
~前回のあらすじ~
封印でおじゃる!
~予告~
宇宙系教師登場
教室の外に玄武君をポイッと捨てた後、次の授業の準備を始めた。次は地理か…。地球儀先生の授業だね。後でその先生の説明はするけど…。
「け~いと。」
「あ、渚。どうかした?」
とまぁ、いつもと変わらず楽しい会話をしている僕ら。途中で翔太や夢も混ざってきた。
「朱雀二等兵、夏休みまで後何日残っている?」
「1ヶ月であります。サー!」
いつもの事だけど、軍人会話が始まってしまう。乗る僕も僕だけどね。因みに役割は部隊長が翔太、二等兵が僕と夢。渚は二頭身兵らしい。最近ゴロちゃんがチート兵として雇われたようだ。うん、チート兵の意味が分からない。
「今日は夏休みの計画を立てようと思う。各自予定はあるか?」
「家族で親戚を尋ねます。サー。」
「お父様のお仕事についていきます。サー。」
「わしは渚と一緒に居るでの。」
「特にありません。サー。」
どうやら、予定がまったく無いのは僕とゴロちゃんのみらしい。渚は親戚の家に行くみたいだし、夢は夢の父さんの仕事についていくのか…。暇だなぁ…、僕。
「ふふっ、それは都合がいいではないか。朱雀二等兵、今夏こそ萌えを心行くまで…」
殴っておいた。何が萌えだって?君は麒麟さんと語り合ってればいい。君たちからは同じにおいがするよ。変態って言うにおいがね。
「授業始めますよ~。」
入ってきたのは女の人。ニックネームの元となった、地球儀を抱えている。一部の噂では、地球儀先生は実は宇宙人で、地球侵略を企んでいるとか。でも本体はすごく小さいので、本体はあの地球儀の中にいて僕らが先生だと思っているのは、人工生命体の類らしい。
「さぁて、今日も頑張ってЮ㎜з仝#≒∀…」
確かに語尾があんな感じだと、噂を信じてしまいそうになる。まぁ、実際は舌ッ足らずと言った所だけどね。教科書とノートを開いて、シャーペンを握った。
「今日の範囲は、地球のウィークポイントを。これは地球侵略の第一歩となる要ですから、よく覚えてください。」
あれ?この人マジで地球侵略狙ってますか?しかも僕らに教えるのって…。はっ!?まさか洗脳教育って奴!?
僕が警戒しながら授業を聞く。とりあえず東京タワーやエッフェル塔は、侵略宣言をするのに都合が良いとか、取り合えず小国を支配して根城を固めるとか何とか…。大学入試には絶対役に立たないものばかりだ。
「せんせ~。」
一人が手を挙げた。何ですか?と聞く先生。
「背中にジッパーがついてます。」
その一言で地球儀先生の動きがフリーズした。
「こ、こ、これは、えっとですね…。そういう服なのです!そう、そうなのです!」
“今日は自習!”と言って教室を出て行った先生。余程慌てていたのか、地球儀を忘れていってしまった。教室がザワザワと騒がしくなる。“やっぱり噂、本当じゃないか?”とか。“先生、本体忘れてったよ”などと言っている。どうやら、噂は相当広がっているらしい。
「さて、ケイ。これはどうした物だろうか?」
翔太が僕の机にポンと物を置いた。青くて、所々緑。端的に言って、先生が忘れていった地球儀。渚も椅子を逆に向けてるし、夢も来た。ゴロちゃんも机の上にいる。
「“どうした物だろうか”じゃないよ、翔太。なんで持って来たのさ?」
「気になるじゃないか。」
「ねぇねぇ、けー君。開けて見ようよ。」
う~ん。迷いどころだね。確かに開けたいって言う好奇心もあるけど、なんだか怖いよ。さてさて…。
「ゴロちゃん、透視とかできないの?」
「うむ。できぬ。」
自信満々に言わないで欲しいな。
「にゃ~」
「駄目だよ、希。」
学校探検にでも行っていたのか、先程まで見えなかったはずの黒猫が僕の席にやって来た。興味があるのか、地球儀をガリガリ引っ掻いている。
「もしだよ、もし、この中に先生の本体が入っていたとしたら、入り口があるよね?」
僕の見解、これが入れ物なら、出入り口があるはず。
「探してみるか。」
翔太の一言で僕達は地球儀を注視する。何も変哲もないただの地球儀だ。ユーラシア大陸や、アメリカ大陸もある。所々先生の書き込みらしく、“ムー大陸”とか“第一占拠国候補”などと書かれている。
「あれ?」
渚が何かを見つけたらしい。指差す所を覗けば、とある国境線に少しだけど溝がある。いや、本当にコレって…
「総員、衝撃に備えよ!」
翔太が何を思ったか、持っていたペンの先でその溝をこじ開けようとする。あけたらヤバイって思う感じと、好奇心の混ざった思いが僕を駆け抜けた。
「いっけないいけない!」
突然教室に飛び込んで来たのは地球儀先生。いや、今は地球儀を持っていないからアイデンティティが消えてるけど。
「あれ~?私の地球儀見なかった?」
キョロキョロと教室の中を見回して、翔太の手の中にあるのを見つけた。しかもそれは今にも開かれそうになってるから、さぁ大変。
「≒∀Йщ!駄目駄目駄目~!」
人間とは思えない速さで、翔太の手から地球儀を奪取。
「あはは、君が持っててくれたんだ。私のほんた…じゃなくて、地球儀。ありがと。んじゃ、自習するんだよ、君たち!」
脱兎の如く教室を駆け出していく地球儀先生。謎は謎のまま、明かされる事はなかった。これで良かったんだよ。うん、良かったんだ…。
・クリスティナの交換日記
あ、私はまだ出てはいけないのでした!